富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. サイバービジネスの法則集 >
  4. コラム >
  5. 1999年 >
  6. ポータル&ポスト・ポータル:キーワードとビジネスモデルの行方

ポータル&ポスト・ポータル:キーワードとビジネスモデルの行方

98年のインターネット・ビジネス界最大のキーワードは、なんといっても「ポータル」だった。しかし、この手の言葉は、メディアで使われだして1年近くもたつと、手垢がつき新鮮味が薄れてしまう。年が改まれば、その内容・意義にかかわらず過去の存在となり、次に来るキーワード探しに話題が移るのもいたしかたないことだ。年頭にあたって今回は、キーワードとビジネスモデルの面から、ポータルとポスト・ポータルを考えてみることにする。(富士通総研 倉持 真理 1999年1月13日)

流行キーワードから定着した用語へ

「ポータル」という用語自体の適不適については、すでに昨年半ばの時点で物議をかもしていた。たとえば、ライコスは自社のサービスはポータルではなく「ハブ(拠点)」だと主張し、ヤフーやエキサイトも決して自ら進んでポータルとは名乗らない。ポータルは入り口という意味だが、検索以外に多彩なコンテンツや機能を備えたこれらWWWサイトが、ユーザーを内部に滞在させる力を持つ以上、単なる入り口(=通過点)というより目的地(デスティネイション)といえる、というのがその根拠である。

これとは対照的に、AOLやマイクロソフト、ネットスケープは、ポータルという用語をとくに抵抗なく使っている。接続サービスとブラウザーをベースとしたアイデンティティを持つこれらの企業は、入り口という概念に違和感を持っていない。

また、大手のなかでも追随勢力や後発参入のサービスほど、ポータルの立場を強調する傾向がある。年末にベータ版公開にこぎつけたインフォシーク/ディズニーの「ゴー・ネットワーク(http://www.go.com) 」がこの典型だ。

さらに、虎の衣を借るようにポータルを名乗ることで、自らをアピールする有象無象も出現している。最近では、億万長者向けを謳った「ミリオネア・コム(http://www.millionare.com) 」や、PCメンテナンス・サービスを中核とする「マカフィー・オンライン(http://www.mcafee.com) 」などが新手のポータルを自称し、ターゲットやテーマを絞ったこれらのサイトを”バーティカル・ポータル”と呼ぶ向きもある。しかし、それをいうなら金融・財テクに特化したE*トレードや、ショップ検索サービスを備えたアマゾン・コムのほうがはるかにバーティカル・ポータルと呼ぶにはふさわしい。

ほかにも、個人ホームページやインスタント・メッセージで人気のジオシティーズやICQは、”コミュニティ・ポータル”といえるし、企業のイントラネット用ホームページが”エンタープライズ・ポータル”と呼ばれたりもする。

もとはトップランクの一握りを指して使われはじめたポータルという言葉の意味や用法が、普及の過程で拡散し、当初のインパクトを失いながら、定着していく経過をたどったわけである。この時点で流行キーワードとしてのポータルは、すでにその役割を終えたといえる。

ビジネスモデルの意義は不動

流行キーワードの役割を終えたといっても、ポータルという言葉が使われなくなることはない。ポータルはビジネスモデルを表す言葉でもあるからだ。インターネット・ビジネス界のピラミッドの頂点に位置し、ユーザー集めを一手に引き受け、下の階層に位置するWWWサイトにユーザーを誘導してトラフィックと経済活動を発生させるビジネスモデルの象徴がポータルなのだ。

94年以降、手さぐりを続けてきたインターネット・ビジネスは、ポータルの成立により、やっと一つの整った構造を持つにいたった。98年にコンシューマECが本格的に開花したのも、ポータルからリンクしたユーザーの売上げをシェアするEC提携の功をよるところが大きい。どんな名前で呼ばれようと、ピラミッドのビジネスモデルと、その頂点に立つ存在の意義自体は、この先も変わることはない。

99年ポスト・ポータルは?

ピラミッドの狭い頂点に立てる企業の数は限られる。98年のポータルの動向を振り返ると、頂点を争うプレイヤーは巨大な加入者ベースを擁するAOLと、マイクロソフト、ヤフーの3強に絞られることがほぼ確実になった。そして、そこにいたる過程で、横並びからの脱却と淘汰という二つの大きな流れの発端が観測された。実際に各社の取る戦略は、別記のように多様化しはじめている。

6月に発生したディズニーのインフォシークへの介入は、マスメディア勢力の本格的インターネット進出という意味のほかに、淘汰の先触れの役割を果たした。結果として、インフォシークはポータル競争の最前線から脱落し検索専門サービスの位置づけに移行、新ポータル「ゴー」に道を譲った。しかし、ディズニーの強力なバックアップをもってしても、アクセス環境の変化などの大きなきっかけがないかぎり、後れてきたゴーが3強に追いつくのは難しい。年末近くに発表されたAOLのネットスケープ買収も、淘汰が中程からの追い上げというより、トップの後続引き離しのかたちで進むことを予想させるものだった。

99年には、前年に端を発する流れがさらに具体的な現象として表れると考えられる。3強による大型買収や、3大ネットワークのなかで唯一ポータルと資本関係を持たないCBSの3強への接近も十分に起こりうる。また、横並びからの脱却と見なされた動きは、年が明ければ、個性化による生き残り策へとその解釈を変える。

3強以外のプレイヤーが、検索、ディレクトリ、フリーメール、ニュース、パーソナライズというありがちな機能とインターフェースを持つブランド勝負の「総合ポータル」として生き残れる可能性は低い。そのポジションにこだわれば、いずれ3強に吸収されるか、有力な「専門ポータル(バーティカル・ポータル)」にも脅かされるようになるのは避けられない。

没個性の総合ポータルにかわっては、ジオシティーズ、E*トレード、アマゾン・コムなど、特定カテゴリーのリーダーがさらに専門機能を高めて進化し、カテゴリーにおけるピラミッドの頂点に立って、広告やスポンサーシップ、EC提携などを有利に進めていくだろう。

ビジネス面では、ポータルの成立により開花したコンシューマECが早くも99年、広告とともに車軸の両輪として、総合ポータルや専門ポータルを支える大きな存在になると予想される。

[ポータル各社の戦略と98年の主な出来事]
AOL
  巨大な加入者ベースによる影響力の維持 →加入者数1500万人突破(12月)
  マルチポータル戦略 →ICQ買収(6月)
→ネットスケープ買収計画(11月)
  マスメディアを通じたブランド浸透
ヤフー
  自社ブランドの機能/コンテンツ開発強化
  ブランド重視で総合ポータル狙い
マイクロソフト
  自社開発のWWWサイトのネットワーク化 →MSN.comのポータル・デザイン完了(10月)
  ブラウザーと連動した総合ポータル狙い
  マスメディアを通じたブランド浸透
ライコス
  有名サイトの買収によるネットワーク化 →トライポッド買収(2月)
→フーフェア買収(8月)
→ワイヤード・デジタル買収(10月)
  新たな収入源確保の工夫 →小売バックヤード・サービス開始(12月)
→トラフィック・ビルディング・サービス開始(12月)
エキサイト
  ライバルとのアライアンス →ネットスケープと戦略提携(5月)
  自社ブランドの機能開発強化
インフォシーク/ディズニー
  マスメディア後援体制 →インフォシーク/ディズニー提携(6月)
  ブランド重視で総合ポータル狙い →新ポータル「ゴー」のベータ版公開(12月)
  マスメディアを通じたブランド浸透 →ABCによるテレビ・キャンペーン

ネットビジネスの最新動向は、「サイバービジネスの法則集お知らせメール(登録無料)」でお届けしています。受託調査、コンサルティング、講演も行っていますのでお問い合わせください。