富士通総研

「ポータル」とは

ポータル(Portal):もとは玄関、入り口という単語。転じてサイバービジネスの世界では、ユーザーがインターネットを利用する際の入り口、または拠点として必ず利用する場所(ウェブ)をさします。

ポータル・サイトには、ユーザー個人用のメールボックスや検索機能、チャットなどのコミュニケーション・スペースをはじめ、ニュースや株価、天気予報といった日常的な情報など、インターネットを利用する上で利用頻度の高いユーティリティ的な機能やコンテンツが一個所に集まっています。

ユーザーは、ここで自分あてのEメールが届いてないかを確認したり、自分が興味のある分野のニュースや好きなチームの試合結果、今日の運勢などをチェックし、それから無数のWWWサイトに散らばっていく、という流れが発生します。

このように、ポータル・サイトは「ユーザーの必ず通る入り口」となり、様々なサービスを提供することでユーザーの囲い込みを行うのです。

ポータルとは



ポータル・サイトが、ユーザーを囲い込むための機能やコンテンツには、図2のようなものがあります。いずれもインターネット利用ユーザーにとって利用頻度の高い、または人気のあるコンテンツです。また、個々のユーザーが、自分の興味分野やプロフィールを登録することでポータル・サイトを自分専用のスタートページとしてカスタマイズして利用する形態が増えています。

ポータル戦略では、これらの機能をより多く集め、より質の高いサービスを提供できたサイトこそ多くのユーザーを集めることができる、と考えられています。しかし、実際の競争においてはサイトのブランド力こそ大きな決め手となると思われます。今、米国のインターネットにおいてポータル・ポジションの獲得に名乗りを挙げているのは、
(1)接続部分をおさえ、優位なデフォルト・スタートページからポータルを狙う、
・アメリカオンライン(ISP:プロバイダ)
・マイクロソフト、ネットスケープ(ブラウザー提供)
・CNET系のスナップ!オンライン、プラネット・ダイレクト
(ISP向けにスタートページ用コンテンツを提供する業者)
(2)認知度を高め、必ず通る拠点としてブックマークしてもらう戦略をとる、
・ヤフー!、エキサイト、インフォシーク、ライコス(サーチエンジン)


などです。これらは、インターネットビジネスにおいて最も影響力を持つ可能性を秘めた存在として、目下、大きな注目を集めています。

図2:ユーザ囲い込みの機能&コンテンツ

ユーザ囲い込みの機能&コンテンツ



なぜ、ポータルに注目が集まるのか?

インターネットビジネスの世界でポータルが最も力を持つといわれるゆえんは、ポータル・サイトが囲い込む膨大な量のユーザー・アクセスに他なりません。

つまり、ポータル・ポジションを獲得した企業は、非常に高い視聴率を稼ぐメディアとして巨額のインターネット広告収入を手中に収めることができます。

そしてさらに、ポータルは大量のユーザーアクセスをもつようになったことで、新たにEC提携(リンク提携ともいう)によるコミッションという大きな収入源を確保できるようになってきました。つまり、ポータルサイトは、特定のショッピング・サイトと独占契約(例えば、ポータルのサイト内での独占出店権、独占リンク権など)を結ぶことによって、そのサイトへ優先的に大量のユーザーを流し、いわば顧客紹介料(売上の一定比率を手数料としてシェアする形態が一般的)を徴収できるようになったのです。

ショッピングサイトにしてみれば、ポータルのユーザーを独占的に自社サイトに呼び込む大口の集客ルートを作ることで、ライバルを引き離すことができるという訳です(図3参照)。従って、ECの各市場(書籍販売、音楽、旅行、金融など・・)内では、主要サイトが競ってポータルに高い契約金を支払い、集客ルートを独占しようという動きが活発化しています。

図3:ショッピングサイトとのEC提携

ショッピングサイトとのEC提携



ここで、EC提携の例として、約1,200万人(98年4月現在)規模の加入ユーザーを もち、WWW視聴率でトップを誇るアメリカオンライン(AOL)の例を紹介しましょう。

[表1:AOLの主なEC提携内容]
提携先 提携内容 AOが受け取る契約金
Tel-Save
(長距離電話リセラー)
AOL内での独占広告権
(AOLは同分野で他社の広告は出さない)
加入者獲得数に応じたコミッション1億ドル相当
CUC International
(ショッピング)
AOL内ショッピングチャンネル出店 売上に対するコミッション5,000万ドル相当(3年契約)
Amazon.com
(書籍販売)
AOL内検索ページからの独占リンク権 広告料1,900万ドル(3年契約)
+売上に応じたコミッション
1-800 Flowers
(花宅配)
AOL内生花販売の独占権 契約金2,500万ドル(4年契約)
+売上に応じたコミッション

このようにEC提携によって、ポータルが莫大な収入を得るということはAOLの事例でも実証済みといえるでしょう。ちなみに、サーチエンジンのヤフー!は、同様のEC提携や広告収入の増加により、98年第2四半期(6月末締め)の売上額は前年比192%増の4,120万ドルに達しています。

上記のように、ポータル・ポジションをとれば、インターネットビジネス市場の主要な収入源を牛耳り、莫大な収益が得られるという訳なのです。まさに、ポータルがインターネット経済の要となる、といっても過言ではないと思われます。

インターネットの主要プレイヤーといわれる企業が競ってポータル・ポジションの確保に奔走しているというのは当然のことだといえるでしょう。

ポータル・ポジションを巡る競争

ポータル・ポジションを巡る企業競争は、すでに昨年来より様々な形で現れています。プロバイダやサーチエンジン、ブラウザー等は、ユーザーを囲い込む機能やコンテンツの確保のため、無料電子メールサービスやコミュニティ・サイト、そのほか有益コンテンツの買収や提携を盛んに行ってきました。現時点において、それぞれのサイトの機能面(無料Eメール装備など)では各社ほぼ横並びで差別化しにくい状況にまで行き着きましたが、これからは人気の高いコンテンツをどれだけ取り込むことができたかで差が出てくるのではないかと思われます。そして、こういったコンテンツ確保のための買収や提携につぎ込む資金力があるサイトこそ、生き残っていくでしょう。

98年6月、NBCがCNET系のスナップ!オンラインを買収、ディズニーがインフォシークに出資といった出来事が次々発覚しました。ポータルを巡る競争は今やインターネット企業だけの競争にとどまらず、旧来メディア企業の介入という新たな局面を迎えています。テレビなどの旧来メディアにとって、日に日に強まるインターネットのメディア・パワーは脅威であるとともに、現段階の市場規模にも十分な魅力を感じている、ということなのでしょう。

旧来メディアは資金力を武器に、ポータルさえ押さえればインターネットを手中に収められるということで、いよいよポータル戦争に参入したという訳です。

ポータル・ポジションを巡る競争
ポータルを巡る各社の主な動き(1998年6月末現在)
98年6月 ディズニー、Infoseek株43%を買収
AT&T、AOLに買収オファー、結果は未遂(提示額190億ドル)。
米3大ネットワークのNBC、CNETのSNAP!を買収
98年5 AT&T、Infoseekとインターネット接続サービスで提携
AT&T、Exciteとインターネット接続サービスで提携(98年6月スタート)
AT&T、Lycosとインターネット接続サービス「Lycos Online」で提携
98年4月 Infoseek、人気チャットサイトのWBS買収
98年3 Yahoo!、MCIと提携し、インターネット接続サービス「Yahoo! Online」開始
Netscape、サイト「Net Center」のポータル化計画を発表。
98年2月 Lycos、人気チャットサイトのTripod買収
97年12月 Microsoft、無料電子メールサービスのHotMail買収
97年10月 Yahoo!、無料電子メールサービスのFour11買収

ポータル競争のゆくえ

ポータルを巡る競争は今なお、ものすごいスピードで進行していますが、吸収・合併による淘汰、ポータル同士の持久戦という局面を迎え、最終的にインターネットの入り口を支配するポータル・サイトは、大手2−3社に集約されると予想されます。なぜなら、ポータルとしてユーザーを繋ぎ止めておくためには、より人気のあるコンテンツを自社ポータルに取り込む(または支配下におく)資金力が必要で、この体力勝負に勝ったポータルだけが生き残ることができるからです。

従って、勝ち残ったポータルは、EC提携や吸収・合併などによってますます各分野の有力サイトと強いつながりをもち、しだいに系列化されていくと思われます。一方、各分野の有力サイトはポータルにつながることで、その分野における系列ポータル(Affinty Portals)というポジションを確保することになるのです。

言い換えると、ポータル化の進行によって、インターネットビジネスの世界で大手ブランドによる支配と系列化いう構図が徐々に完成しつつあるといえます。

図5:ポータルによるWWW系列化

ポータルによるWWW系列化

ネットビジネスの最新動向やアンケート調査結果は、「サイバービジネスの法則集お知らせメール(登録無料)」でお届けしています。受託調査、コンサルティング、講演も行っていますのでお問い合わせください。