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問われる中国の省エネ・排出削減政策の持続性

発行日 2009年1月15日

主席研究員 金 堅敏


不調に終わった在来の省エネ政策・環境対策

  • 30年にわたる中国の高度経済成長は、資源の枯渇や深刻な環境汚染問題をもたらした。もっとも、中国では、89年に「環境保護法」が、97年には「省エネ法」がそれぞれ制定され、省エネや環境対策に乗り出したが、長年機能してこなかった。経済成長が優先され、省エネルギー政策や環境対策はいずれも不調で終わった。
  • 03年に22省で電力不足が生じ、原油輸入量は30%増に達し、エネルギー消費の弾性値(エネルギー消費伸び率/GDP成長率)は03年と04年の2年連続で1.5を超え、エネルギー逼迫状況は頂点に達した。同じ03年上期にはSARS流行の苦い経験もした。中国では、この時期から資源・エネルギー不足、深刻な環境問題への危機感が一気に広がった。
  • 中国当局は、「科学的発展観」を提起し、循環型経済、資源節約型社会、環境友好型社会を目指して、社会経済発展「十一・五」計画(06年~10年)に5年間でGDP当たりのエネルギー消費量の20%削減、主要汚染物( SO2、COD)の排出量の10%削減という政府の責任が問われる省エネルギー・汚染物質排出削減目標(これまでのような努力目標ではなく拘束力のあるコミットメント)を打ち出して取組みはじめた。
  • 以上の目標を達成するためには単純計算すると年平均で単位GDPエネルギー消費4%と主要汚染物質排出量2%の削減が必要となるが、「十一・五」計画の初年度である2006年の実績では、単位GDPエネルギー消費の削減率は1.2%に止まり、主要汚染物( SO2、COD)の排出量は逆にそれぞれ1.8%と1.2%増となってしまった。このような状況が続くと、07年の省エネ・排出削減の目標達成ができなくなり、「十一・五」の目標の実現も危うくなると中国政府の危機感も頂点に達した。

「ムチ」を備えた政策の新展開度

  • これまでの政策失敗の繰り返しになってしまうと危機感を抱いた中国政府は、2007年6月、「節能減排(省エネ・排出削減)総合業務実施計画」を出し、「アメ」と「ムチ」の政策を総動員して省エネ・排出削減への決戦を仕掛けた。作戦を徹底するため温家宝首相をヘッドとする「節能減排業務指導者グループ」も組織された。主要な「ムチ」の政策としては、
  1. 省エネ・排出削減のコミットメントを各省(各省からさらに各市、各県)と重要な企業に分配し、各級政府の長や重点企業のトップは応分のコミットに責任を負わなければならない。また、成績評価の際に、ほかの成績がどんなに良く総合点が高くとも「節能減排」の目標が達成できていなければその長や経営トップへの評価は不合格になるという「一票否決」制度を導入した。
  2. 許認可条件「6項目の必要条件」(産業政策、用地審査、環境影響評価、省エネ評価審査など)の引上げによる産業選別を行う。他方、13分野は明確な数字目標による生産設備の淘汰・閉鎖(例えば、小規模火力発電所5,000万KWの能力削減、小規模製鉄所1億トン能力の淘汰など)を行う。計画とおりに閉鎖しなければ、営業許可の停止、電力供給の停止などの措置を取る。
  3. 環境コストの内部化政策強化。SO2排出課徴金は10年までに2倍へ。全国の都市汚水処理費最低基準単価実施。省エネ・排出削減に有利な差別電気料金価格の実施。燃料税の導入と環境税導入の研究。
  4. エネルギー多消費製品や環境汚染物質多排出製品や産業の規制強化、「節能減排」監査体制やオンラインモニタリング体制の整備、罰則の引上げおよび違反情報公開による社会的制裁。
  • その後、「節能減排総合業務実施計画」で取入れた重要な政策は、08年4月1日に施行される『改正省エネ法』や09年1月に施行される『循環経済促進法』で法制化された。
  • 「節能減排」計画に投入される中央政府の予算は、06年の84.4億元から07年の238億元、そして08年の418億元(予算)と急増している。閉鎖された小規模火力発電所は、06年の314万KW から2007年の1,438万KW、そして08年上期の836KWとなった。

経済政策の転換で問われる「節能減排」政策の持続性

  • 政策の効果は目に見える結果を伴った。07年の単位GDPエネルギー消費、SO2、CODの排出量はそれぞれ3.27%減、4.66%減と3.14%減となった。SO2、CODの排出量が低下したのははじめてであった。しかし、06年と07年の二年間で単位GDPエネルギー消費削減、SO2、CODの排出量削減の実績は「十一・五」計画の26.9%、32.0%、22.0%しか実現できなかった。いずれも平均値40%には届かなかった。08年上期の暫定値では、2.78%(省エネ)、3.96%(SO2)、2.48%(COD)の削減となったが、省エネの実績は目標としての5%に大きく及ばなかった。
  • 世界大不況に遭遇した中国経済はスローダウンのペースを速めているが、「節能減排」目標の達成に思わぬ追い風となった。しかし、中国の政策重点は経済失速の回避に傾き、「二高一資」産業復活の動きも見られており、「節能減排」政策の持続性が問われ始めている。