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外資企業による内陸市場開拓の拠点となる重慶市

発行日 2009年10月16日

主席研究員 金 堅敏


産業基盤・安価な経営資源を活かした進出から市場開拓向けの進出へ

  • 08年末までに重慶市への外国直接投資は累積で、企業数は4,554社、投資額は実行ベースで87億ドルとなった。業種別では、サービス産業が48.5%(内、不動産39.0%)で工業が33.3%である。国・地域別では、香港(36億ドル、41%)、日本(5.0億ドル、5.8%)、米(3.3億ドル、3.8%)、台湾(2.7億ドル、3.1%)、シンガポール(1.7億ドル、2.0%)の順となる。香港資本による不動産投資が突出しているほかに、日系企業による製造業投資も大きなウェートを占めている。08年末現在、「フォーチュン500」企業のうち、51社が86の現地拠点を設立し、ほかの51社は重慶に支社、事務所、代表所を設立している。
  • 08年に中国全国の対外貿易依存度(輸出入総額/GDP)が59.2%、外資依存度(対内直接投資総額/GDP)が2.1%であるのに対して、重慶市はそれぞれ13.0%と3.7%となっている。重慶経済にとって輸出よりも外資による対内直接投資のプレゼンスが相対的に高くなっている。実際、重慶への外国直接投資は、06年の7億ドルから07年の11億ドル、08年の27.3億ドルと急増している。2012年の目標は50億ドルとされている。
  • 米中対立や中ソ対立の1950年代から60年代にかけて中国は産業安全上の理由から国内の重要産業を内陸部に移転させたが、それにより重慶市では車両産業、プラント・装備産業、石油化学産業、素材産業の基盤が確立された。その後産業政策上、育成すべき重要産業として、電子情報産業を加え、重慶市の「五大基幹産業」と言われた。また、最近では、農村地域開発や雇用拡大の視点から食品産業と紡績産業の振興も図られている。
  • これまで外資系企業は概ね上述した重慶市の産業基盤を活かすため重慶進出を行ってきた。例えば、二輪車と四輪車製造の分野では、日系のスズキ、いすゞ、ヤマハ、米系のフォード、イタリアのフィアット及び関連する部品メーカー、装備分野のABB、GE、横河電機、石油化学分野のBP社、ドイツBSF社、材料の分野のフランスのLafarge社などが上げられる。
  • 97年の直轄市への昇格や西部大開発戦略の実施に伴い、西部地域の経済成長が加速され、重慶市の経済成長は全国平均を上回り、6年連続で二桁成長を遂げた。09年上期では、重慶市のGDP成長率、都市住民可処分所得伸び率、農村住民純収入伸び率、小売総額伸び率、固定資産投資伸び率はそれぞれ12.5%、9.9%、10.8%、18.1%、35.2%で全国平均の7.1%、9.8%、8.1%、15.0%、33.5%を上回っている。
  • 上述した経済環境の変化を受け、多国籍企業は、産業基盤や安価な経営資源の活用から香港などの華人資本を中心とする不動産、ホテル・レストラン、欧米資本を中心とする金融(例:HSBC、オランダ銀行、Liberty Insuranceなど)、小売・流通サービス(カルフール、ウォールマート、メトロ、B&Qなど)、法人サービス、上下水道サービス(スエズ・ウォーター)などのサービス投資が急増した。また、最近ではIT企業(HP、IBM、マイクロソフト、台湾系の富士康、茂徳、日月光など)の進出も目立つようになってきている。さらに、インフラ整備の進展や農村地域開発の加速に伴い、農産物や食品関連の投資(米Seagram、デンマーク系Carlsberg、タイCPグループなど)も加速されそうである。製造業分野と違ってサービス分野では日系企業の影は薄かった。
  • 実際、重慶市を含む中国の内陸部の経済成長率は沿岸部より高くなっており、これから内陸部市場開拓は外資企業の重要な課題となるので内陸部の中心となる重慶市への進出加速は内陸部市場をにらんだ戦略と言えよう。

注目される投資プロジェクト

  • 中国本部(HQ)の設置:07年に米系保険会社Liberty Insurance(100%外資の財産保険会社)、09年に世界第5位のビールメーカーでデンマークのCarlsberg(重慶ビール株式会社の第2株主)は中国事業統括会社を重慶市に置いた。中国の内需主導経済への転換政策の進展に伴い、重慶市を中国内需市場開拓の司令部にする外資企業が増えるだろう。
  • 研究開発拠点の設置:07年に米系Honeywell社は、重慶にAutomation and Control Solutions部傘下の「グローバルエンジニアリングサービスセンター」を設立し、重慶の技術人材を生かして中国およびグローバル市場にエンジニアリングや開発サービスを提供することを目指している。また、重慶に送電設備(変圧器)の拠点を設置しているスイス系ABBは、事業経営が順調で09年には2,000万ドルを投じて高付加価値変圧器の研究開発拠点の設置を決め、高付加価値市場への参入に先駆けてR&D戦略を取った。
  • グローバル拠点の設置:07年にHPは重慶市に中国さらにはアジア・パシフィック地域を対象とするBPO拠点を設置したのにつづき、09年に6,000万ドルを投じてグローバル市場向けのPC輸出拠点として「グローバル調達(IPO)及び決算センター」を設立した。HPの投資に伴い、特に台湾系のサプライチェーン企業が数多く同時に重慶進出を決めた。
  • 環境影響が懸念された大規模化学関連プロジェクトの進展:投資額が40億ドル(重慶最大の外国投資)にものぼるドイツ系BASF社(年間生産能力が40万トンのMDI)プロジェクトが正式に環境保護部の許可を得た。賛否が分かれた大規模プロジェクトであるが、実行されれば、呼び水としてさらなる外資の進出が見込まれる。