2009「Fortune Global 500」から見たグローバル経済の地殻変動
発行日 2009年7月17日
主席研究員 金 堅敏
後退する米英企業
- 2009年7月8日に公表された2009年「Fortune Global 500」ランキングは、金融危機の影響を色濃く反映している。地域別では、北米、欧州、アジア、その他の地域でそれぞれ155社、179社、136社と30社がランクインした。全体として北米企業は大きく後退し、アジア企業は著しく台頭した。
- 国別では、米国、日本、フランス、ドイツ、中国、英国が上位にランクインしたが、金融危機の影響が大きい米国と英国がそれぞれ13社と8社も減り140社と26社となった。アングロサクソン型の金融経済の衰退が目立った。他方、中国、日本、ロシア、ドイツはそれぞれ8社、4社、3社、2社増え、37社、68社、8社、39社となった。製造業を中心とする日本、ドイツや国有経済のウェイトの高い中国やロシアが逆に前進した。ただし、当該ランキング評価はドルベースで行われたので円高や元高など為替の影響も見逃せない要因となった。
直近5年間 Fortune Global 500における主要国企業数の変化
| 米国 | 日本 | ドイツ | 中国 | インド | ロシア | ブラジル | 韓国 | |
| 2008年 | 140 | 68 | 39 | 37 | 7 | 8 | 6 | 14 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2007年 | 153 | 64 | 37 | 29 | 7 | 5 | 5 | 15 |
| 2006年 | 162 | 67 | 37 | 24 | 6 | 4 | 5 | 14 |
| 2005年 | 170 | 70 | 35 | 20 | 6 | 5 | 4 | 12 |
| 2004年 | 176 | 81 | 37 | 16 | 5 | 3 | 3 | 11 |
出所:CNNMoney.com
- また、フランス(+1社)、スイス(+1社)、カナダ、韓国(-1社)、スペイン(+1社)、イタリア、オーストラリア(+1社)、インド、スウェーデン、ブラジル(+1社)、台湾はそれぞれ40社、15社、14社、14社、12社、10社、9社、7社、6社、6社がランクインし、「Fortune Global 500」でのプレゼンスは安定している。ただし、BRICsの中でインドは唯一ランクイン企業数が期待されたほど増加しなかった国であった。さらに、イスラエル、ハンガリー、ベネズエラは初めて1社ずつランクインした。
健闘する日本企業
- 日本企業では、ランキングインした68社のうち、29社の順位は後退した。中でも輸出や海外事業の多い自動車、電機、機械や金融危機で大きな損失を被った銀行は大きく後退した。ちなみに日本企業トップであったトヨタは5位から10位に後退し、かろうじてトップ10の座を維持した。順位を上げた39社は、商社、エネルギー、鉄鋼、保険、一部の小売などに属し、グローバルな価格上昇の恩恵を受けた業界や内需関連がほとんどであった。
- 農林中金、三洋電機、豊田自動織機、いすゞ自動車の四社はランキングから脱落したが、日本郵政、昭和シェル石油、マルハン、鹿島、アルフレッサ、清水建設、ヤマダ電機、キリンは新しく或いは再びランクインした。民営化された日本郵政はトヨタ自動車に次ぐ11位にランクインし、日本を代表する大企業となった。また、マルハンのようなアミューズメント関連の企業、医療用品卸販売のアルフレッサ、家電量販店のヤマダ電機などの新規プレーヤーが成長してきたのも「Fortune Global 500」における日本企業のプレゼンス低下を食い止めるのに大きな役割を果たした。自動車や電機関連ではなく、これらの異色ともいうべき日本企業の成長が注目されよう。
引き続き大きく前進した中国企業
- 8社も増えた中国企業は、かつてよりも大きく躍進した。1998年に香港を含む中国企業は6社しかランクインしておらず、「Fortune Global 500」に占める売上高の割合は約1%であった。37社(香港企業3社を含む)がランクインした09年ではその割合が約7%にまで高まった。同期間中、米国企業は185社から140社までに減らし、売上高の割合は37%から30%まで低下した。
- ランクインした中国企業のうち、中国アルミだけは順位が後退したが、残りの36社は軒並み大きく上がった。因みに中国企業で一位の中国石油化工(SINOPEC)は、昨年の16位から9位に上がり中国企業としては、初めて「Fortune Global 500」トップ10にランクインした。世界の同時不況を受けたPCメーカーのレノボは唯一脱落した中国企業であった。
- また、国有資産管理監督委員会が管轄する大型国有企業(いわゆる「中央企業」)は5社増え、24社となった。残りは、国有銀行・総合企業などの中央金融機関が7社、地方政府が管轄する国有企業(いわゆる「地方国有企業」)が2社、100%私有企業が1社であった。新しくランクインした中国企業は、中国中鋼、河北鉄鋼(私有企業)、中国中信、中国網通、中国華能、中国航空工業(国防関連企業)、中国南方工業、江蘇沙鋼、交通銀行であった。今後、拡大する「中央企業」とともに地方政府管轄の企業や私有企業の台頭が注目されよう。
