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米中首脳会談を読む:二国間関係の新たな位置づけ

発行日 2009年4月17日

主席研究員 金 堅敏


新たな米中関係の位置づけ

  • 2009年4月1日にオバマ米大統領と胡錦濤中国国家主席はロンドンで初の首脳会談を行った。会談後に両国政府が発表した内容によると、両首脳は会談で21世紀に向けて「積極的、協力的、全面的な米中関係」(Positive,Cooperative,and comprehensive U.S.-China relationship)を構築していくことに合意した。この位置づけは、2期目のクリントン元政権ほどではないが、ブッシュ前政権よりは緊密性が高められたと言える。
  • これまでの米中関係の主導権は米国にあり、米政権の対中認識によって位置づけられてきたと言える。1993年1月に始まったクリントン政権の1期目では「天安門事件」の後遺症で米中関係は低温状態にあった。交流の深化によりクリントン政権の2期目では、米中関係を「戦略的パートナーシップ」と位置づけ、「蜜月」な米中関係を演じた。
  • ところが、2001年1月に始まったブッシュ政権は、中国を「戦略的競争相手」と定義し直した。スタート時点からギクシャクした状態が続いたが、「9.11事件」を契機に米政権の最優先課題は対テロ作戦に移され、米中関係も次第に改善された。ブッシュ政権の2期目は中国経済が急拡大された時期と重なり、「中国脅威論」が盛んに議論された時期でもあったが、対テロ作戦、北朝鮮問題などの中国の協力を必要とするブッシュ政権は中国を「利害関係者」と定義し、「責任ある利害関係者」になるよう中国への関与政策を取ってきた。ここでいう「責任」や「利益」は米国の価値観や国益によって「認定」されていた。

「対等の立場」の米中関係になった背景

  • 中国が「責任ある利害関係者」になったとは見ていないオバマ政権がスタート時点から「対等の立場」で対中重視の姿勢を示したのは、1)経済相互依存関係の深化と2)深刻な金融危機にあった。この数年間で米中両国の相互依存関係は飛躍的に緊密になってきた。例えば、貿易総額は2001年の1,215億ドルから08年の4,093億ドルへ3倍以上となった。うち、米国の対中貿易赤字は2001年の830億ドルから08年の2,663億ドルに拡大してしまった。中国は米国にとっての第2の貿易相手国となり、米国は中国最大の貿易黒字国(中国の貿易黒字の90%を占める)だった。他方、中国は、米国の最大の債権国となり米財務省債券購入額は2001年1月の615億ドルから09年1月の7,396億ドルと12倍も拡大した。米国市場なしでは中国経済は頓挫してしまい、中国の資金なしには米ドルの信用維持ができなくなってしまっている。「最大の途上国と最大の先進国」というよりも、「最大の貯蓄国と最大の消費国」のほうが適切で米中両国を「中米国」(Chimerica)と揶揄する経済学者もいるほどである。
  • 昨年秋ごろに始まった金融危機は、米国に聞く耳を持たせるようになった。中国のメディアでは、金融危機は「9.11事件」と同じように不幸な出来事は中米に更なる協力をしなければならない基礎を提供してくれたと判断している。ただし、世界を株式会社と例えると、米国は絶対的な株主でなくてもマジョリティーを有する立場にあるとも見ている。方や、世界的な指導力を放棄しないが、他国の言い分も謙虚に聞いてやるというのがオバマ政権のスタンスであると米国官製メディアVOAはアナウンスメントしている。米国は尚世界GDPの1/4を有する超大国であるが、かつてのような一方主義的なやり方は通用しえなくなっているのが一般的な見方である。
  • オバマ政権の出方を不安視していた中国は、米新政権スタートの初期段階に積極的な二国関係の位置付けが決まったことに一応安どしていた。もちろん、対米関係の劣勢を改めようとする中国の取り組みも米中関係の進展に影響を与えている。例えば、経済の分野で一方では、IMFなどの国際機関への資金提供、関係国との資金スワップ協定の締結、貧困国への債務免除、輸入促進のための海外調達チームの派遣とともに、内需主導への経済政策の転換やリスクを承知しながら米国債の買い増しを進めるなどを通じて国際社会の責任あるメンバーをアピールして国際社会にモラル的優位性(Moral advantage)を獲得した。他方では、中国が保有する資産(1兆ドル以上)の安全を求めたり、米ドルに代わるSDR(IMFの特別引き出し権)を「超主権準備通貨」に発展させるよう提案したりして米国にも攻めのアプローチを取りはじめたことが米中を「対等の立場」にもたらした一因であった。

G2の時代はくるか

  • 昨今、米中からなるG2の議論が持ち上がってきている。近い将来に中国が日本を超えて世界第2の経済大国になることはこのような議論を加熱させている面もあるが、米国の消費バブルと中国の生産バブルの解消なしには世界経済の構造的不均衡が是正されない背景もあろう。
  • しかし、海外では中国の政治文化における魅力や資質の欠如や代替しがたい米国の優位性がG2の時代を否定している議論も多く見られる。特に当の中国自身がG2になる能力や意志を持っていないのは明らかである。G2の時代は非現実的な話題にすぎない。