金融危機・政権交代で変貌する米中経済関係(3)
発行日 2009年3月2日
主席研究員 朱 炎
元レートと米国債:米中間の新しい駆け引き
- 従来、米国からの元高要請に対して、中国は抵抗しながらも、米国との交換条件を見つけて、よいタイミングを選んで応じてきた。金融危機発生後、米中の経済の実力は大きく変化し、人民元に関する攻防も新しい段階に入った。
- 金融危機によって、米国経済は大きな打撃を受けて、深刻な経済危機に陥っている。対照的に、中国も金融危機の影響を受けたが、被害が比較的軽く、景気回復は世界の主要国の中で最も早く、世界経済を支えると期待されている。
- いままで、中国は米国の市場に依存してきたが、現在、米国は中国の資金に依存するようになっている。双子の赤字を抱えている米国経済は赤字の補填に外国の資金に依存している。いままでこの役割を担ってきたのは日本であったが、現在は中国である。中国が保有する米国債(財務省債券、Treasury Security)は、08年9月に日本を上回り、初めて米国の最大の債権国となった。11月末現在、中国の米国債保有額は6,819億ドルまで増加し、外国保有額の22.1%を占めるに至っている。日本のシェアは18.7%と低下した。
- 米国は景気対策を実施するため、国債をさらに増発せざるを得ない。米国は、最大の債権国である中国に国債をさらに買ってもらいたい。実際、中国は金融危機後も米国債を買い増し、11月末の保有額は8月末に比べて約1,405億ドルも増えた。中国が保有する米国債は外貨準備の36.2%に相当し、さらに買い増しの余力もある。逆に元レートの攻防の中で保有分を減らすこともできる。
- 資金面の対中依存が増した米国は、中国に元高を強く求めることができなくなった。実際、12月に開かれた第5回米中経済戦略対話では、米国が元高要請を切り出せず、逆に中国に在米資産の安全確保という要請を突き付けられた。
- こうした事情のもとで、米国は中国に元高を要請するが、圧力を強くすることができない。一方、中国は国内の景気回復を最重要視するため、米国債の引き続きの保有との引き換えで、米国の元高要求に抵抗するであろう。したがって、中国は景気回復まで、人民元レートの調整と為替政策を独自で実施し、大幅な元高は考えられないであろう。
米中協調で世界経済を救う?
- 米国は金融危機から世界経済を救うため、金融危機の処理と景気回復に、中国により大きな責任を負わせようと企んでいる。米国内では昨年から、現在のG8にとって代わり、今後、米中間の協議(G2)により世界経済を運営する論調が現れ始めた。09年1月、カーター政権の大統領補佐官であった、オバマの選挙時の外交ブレーンを務めたブレジンスキー氏は、「米国と中国がこの先の世界秩序を担う」「世界経済を救出する」と発言し、キシンジャー元国務長官とともに「G2構想」を推進している。2月にガイトナー財務長官も「中国は世界経済安定に向けた重要な勢力になっている」と発言し、米国政府の認識を示した。
- こうした米国からの期待に対して、中国は米国ほどの経済力を持っていないと認識し、褒め言葉に迷わず、冷静に対応している。「中国経済の成長を維持することは世界への貢献」という立場から、国内の景気回復に没頭し、世界経済に救済するための出資、企業買収に慎重である。
- また、米国債の保有と買い増しに関しては、国内では反対意見もあるが、米国債以外にドル資産の有利な投資先がないため、貿易黒字が増加する限り、今後も引き続き米国債に投資せざるを得ない。すなわち、中国にとって、米国経済の危機を回避し、ドルの暴落を防ぐことは中国の利益につながる。
