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金融危機・政権交代で変貌する米中経済関係(2)

発行日 2009年3月2日

主席研究員 朱 炎


人民元切り上げ要請に対する中国の対応

  • 中国は、長い間、輸出振興を図るため、人民元レートを低く抑えてきた。しかし、経済の高成長や国際収支の黒字、主要輸出先との貿易摩擦、国内に生じた過剰流動性などにより、元高圧力が高まった。なかでも、巨額な対中貿易赤字を抱える米国からの切り上げ圧力はとくに強い。中国にとって、米国は最大の輸出市場であるため、その元高要請を無視できない。
  • 2005年7月、金融当局は対米ドルレートの2%の切り上げを実施し、その後も元高が進み、徐々に加速してきた。08年7月には対ドルレートが6.81元台の高値をつけ、年初比6.7%上昇した。ただし、7月半ば以降、対ドルレートはほぼ横ばいで推移している。元高の調整はまだ十分ではないが、現在の対ドルレートは切り上げ前の水準に比べると、17.4%の元高となった。
  • 中国の為替制度は管理フロートである。米ドルと事実上ペッグするが、他の通貨も考慮する通貨バスケット制の方法も導入している。対米ドルレートは05年以降上昇する一途であるが、主要貿易相手国の通貨をウェートつけて計算する実効レート、物価の影響を除いた実質実効レートは、05年以降、いずれも緩やかに上昇し、08年央以降は急激に上昇した。つまり、人民元の対ドルレートが横ばいであるが、他の通貨に対しては実質上切り上げている。

景気対策としての元レート維持

  • 08年7月半ば以降、人民元の対ドルレートが上昇から横ばいに転じた背景には、輸出を確保する中国の政策的意向がある。
  • 05年から始まり、加速する元高は、中国の輸出にマイナス影響をもたらした。輸出が急増する時期には、毎年6%前後の元高による影響は、企業によって吸収されやすかった。しかし、08年には状況が一変した。米国発のサブプライムローン問題が金融危機に発展し、中国の輸出は世界的需要不足に直面している。08年に入ってから、輸出とその主要構成部分はいずれも減速し始め、経済成長の減速を招いた。9月に米国で金融危機が発生した後、中国の輸出もさらに悪化し、11月以降は減少に転じた。中国にとって、人民元レートの安定維持を、輸出の減少を食い止める景気対策の一環として推進している。
  • さらに、ドル高による中国の輸出へのマイナス影響を軽減するため、09年1月に、米ドルの代わりに、人民元建て貿易決済を香港、東南アジアとの間で実施すると決定した。

さらなる元安もありうる

  • 金融危機後、世界各国は景気刺激のため、さまざまな手段をとり、自国の利益を優先する傾向がある。中国は、人民元レートの安定維持を景気対策の一環として推進する以上、米国の切り上げ要請に応じる余裕がない。
  • 人民元の対ドルレートは08年7月半ばから2月中旬現在、1ドル=6.83元台で推移している。最近、中国国家発展改革委員会の副主任は、元レートは7元台まで下がる可能性を示唆した。政府系シンクタンクも元相場の切り下げを提案した。すなわち、景気の減速、輸出の減少が進めば、中国は元相場を元安の方向に誘導する可能性もあろう。