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金融危機・政権交代で変貌する米中経済関係(1)

発行日 2009年3月2日

主席研究員 朱 炎


米中経済関係の問題点

  • 米国は世界最大、中国は世界3位の経済大国である。米中間の経済関係において、中国が米国向けに大量に輸出し、米国から稼いだ巨額の貿易黒字は米国債などの形で米国に還流させることが基本的なパターンである。そのなかで、中国は輸出を通じて経済発展と雇用を維持できる一方、米国にとっても安い中国製品でインフレを抑え、中国からの資金還流によって財政と経常収支の「双子の赤字」をある程度補填するメリットを享受できる。すなわち、米中間にも経済の相互依存関係が構築されている。
  • しかし、米中間の最大の経済問題は貿易不均衡である。そのため、米国は中国に対して人民元の切り上げ圧力をかけ、中国は米国からの人民元切り上げの要請に抵抗して応酬する。
  • このような米中間の経済関係の構図は、金融危機を起因とする米中の経済力の変化、そして米国の政権交代によって大きく変化した。このような変化は、金融危機の打撃で不況に喘ぐ世界経済の安定維持と今後の景気回復、そして新しい世界経済秩序の形成に大きな影響を与えうるため、注目を集めている。

米国の人民元切り上げ圧力

  • 米国の対中貿易赤字は年々膨らんでいる。2007年は2,563億ドルであったが、08年には2,663億ドルに達し、いずれも過去最高水準である。
  • 中国との巨額の貿易赤字という問題を解決するため、米国は人民元の切り上げを中国に強く求めてきた。為替操作を理由に、貿易制裁を武器に、中国に迫ってきている。しかし実際、対中貿易赤字の原因は米国の製造業の衰退にあり、例え人民元を大幅に切り上げても、米国の製造業を救えず、貿易赤字を減らすこともできない。米国政府はこれが分かっても、国内の製造業及び労働組合の圧力が強いため、中国に圧力をかけざるを得ない状況にある。
  • ブッシュ政権は、中国に人民元高の調整をさまざまな方法で求めてきた。06年12月から始まって、半年に一回開催する米中経済戦略対話では、貿易不均衡の是正、人民元の切り上げはいつも最重要テーマであった。ただし、07年後半以降の元高の加速を受けて、米国も元高を迫る圧力をある程度緩和した。また、大統領任期切れ前の09年1月に、貿易不均衡の原因の1つであり、中国が求めてきたハイテク製品の対中輸出の規制緩和を決定した。
  • ブッシュ政権の中国との経済関係に関する政策は、貿易と人民元問題に限らず、2006年に「ステーク・ホルダー(利害共有者)」という政策を打ち出した。経済面で中国との協調を通じて、中国が国際社会で責任ある「ステーク・ホルダー」になり、世界経済により多くの責任を果たすことを目指していた。米中経済戦略対話はそれを実現させる重要な手段である。
  • しかし、オバマ政権への米国の政権交代に伴って、状況が変化した。選挙中、オバマ氏は中国との貿易不均衡の是正、人民元問題をより厳しい姿勢で臨むと強調した。新政権発足直後の1月22日、ガイトナー財務長官が議会の指名公聴会で「オバマ大統領は中国が為替操作を行っていると信じている」と発言した。その後、ホワイト・ハウスはこれが選挙中の意見と釈明した。2月14日に、ガイトナー財務長官本人も「米政権として、中国が為替操作国かどうかの最終的な判断を下していない」と発言した。米国政府は釈明したにもかかわらず、このような一連の発言からは、オバマ政権が人民元高の問題で中国により強い圧力をかけるではないかと、中国の懸念を打ち消せず、警戒感を募った。
  • オバマ政権はブッシュ政権に比べ、政治・外交面で中国とより緊密な関係を結ぶが、経済面では労働組合の意見を聞き入れ、貿易保護主義に傾く傾向が懸念される。加えて、オバマ政権は米国経済の再生、景気回復に取り組んでいる中、米国産業を保護するために、人民元の切り上げにより厳しい要請を中国に迫ることも選択肢の一つである。すなわち、オバマ政権は人民元への切り上げ要請を景気対策の一環として進める可能性が高い。