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強力な対策で好転しつつある中国の環境問題

発行日 2009年1月20日

主席研究員 金 堅敏


改善されつつある環境レベル

  • 中国環境保護省の発表によると、02年に住民の生活環境レベルを満たさない大気汚染3級(平均濃度:SO2 0.25mg/m3、NOx 0.15mg/m3)及びそれ以上悪い都市の割合は65.9%に達し、都市人口の73.7%は汚染された環境の中での生活を余儀なくされていた。その後、04年と07年の大気を汚染された都市の割合は61.4%、そして39.5%と年を追って大幅に低下してきた。
  • 同じように、02年の生活用水レベルを満たさない水質汚染(BOD6mg/l、COD30mg/l以上)及びそれ以上悪い7大水系及び淡水湖の割合は、53.7%と66.0%に達した。04年と07年の同割合はそれぞれ、58.2%と72.0%、そして50.1%と71.5%となり、02年より悪化してしまった。ただし、04年ごろにおける地表水汚染の最悪期は脱しつつあるように見られる。
  • 以上の環境レベルの改善は、環境汚染重点地域への対策により改善されたもので、図表が示すように、2005年までに全国全体の主要汚染物質(SO2とCOD)は増加し続けてきた。

主要汚染物質排出量の推移

指標 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年上
SO2排出(万トン) 1,927 2,159 2,255 2,549 2,589 2,468 1,213
COD排出(万トン) 1,367 1,343 1,399 1,414 1,428 1,382 674
  • 深刻な環境悪化に直面した中国当局は、「十一・五」社会経済発展計画(06年~10年の五ヵ年計画)において10年までに主要汚染物質(SO2/COD)排出量を05年比で10%削減する公約を掲げた。年平均で2%の削減が求められるが、皮肉にも一年目の06年は削減するどころか、逆に1.57%(SO2)と0.99%(COD)増の結果となってしまった。
  • 07年に危機感を強めた中国政府は、公約目標を地方政府や主要企業に配分して削減の目標を実現させようとして工場閉鎖などの強制措置を含め強力な政策を取り始めた。07年にこれら政策の効果は徐々に現れ、SO2とCODの排出量はそれぞれ4.66%と3.14%の大幅減となった。08年上期はさらに3.96%と2.48%の削減ができた。特に、現在のペースで進むとSO2の削減目標は前倒しで実現されると見込まれる。

功を奏した環境対策

  • 短期間で以上のような成果を収めたのは、強力な環境対策が取られたためである。まず、財政による環境対策資金の増額である。省エネ・環境対策に投入される中央政府の通常財政予算は06年の84.4億元から07年の238億元、そして08年の418億元(約6,000億円)と急増している。また、08年11月~12月に緊急経済対策で追加支出された1,000億元の中から120億元(シェア12%)を都市部の汚水処理・ごみ処理施設の整備、重点流域の水汚染対策及び生態保護に割当てている。中央政府の財政支出を呼び水に地方政府や企業からの環境対策への投資は数倍に膨らむと見込まれる。
  • 「工程排出削減」(技術・設備による削減)、「構造排出削減」(産業構造調整や高度化による削減)、「管理排出削減」(制度やマネジメント改善による削減)の三つの手法が取られている。例えば、「工程排出削減」では、産業SO2排出量の50%以上を占めている火力発電所の脱硫装置設置率は、00年の2%から06年の30%、そして07年末の48%に達した。政策的な売電料金の大幅引上げや脱硫装置の国産化によるコストの大幅削減で経済インセンティブが大きく働いたという。「構造排出削減」では、小規模発電所の閉鎖や小規模製鉄工場、小規模コークス製造炉、小規模製紙工場の淘汰などが進められた。例えば、小規模火力発電所の閉鎖を06年の314万kWから07年の1,438万kW、そして08年の1-10月で1,458万kWへと加速させた。
  • 「管理排出削減」では、環境基準の引揚げ、環境監査の強化、環境汚染産業の加工貿易の禁止、「グリーン貸出」(環境基準遵守を貸出審査の基準にすること)と「グリーン証券」(環境基準遵守を上場や資金調達の認可の基準にすること)の政策などで「両高一資」(エネルギー多消費、汚染物質多排出、資源多使用の産業)産業を制限するなど環境政策が多様化された。また、10年までにSO2排出課徴金を2倍にすること、差別的な価格政策や燃料税の導入、排出取引制度の創設などの経済手法も導入された。

循環経済実現へ環境政策の高度化を

  • 上述した強力な対策によって環境排出物の排出量は減少し、環境レベルは改善されつつあるが、その成果はある意味で現政権が自らの公約を実現するために環境汚染という「外部化」の経済問題を政治運動によって強権的に実現させようとしている側面も否めない。
  • もっとも、中国は、03年に施行された『清潔生産促進法』、06年に実施された『再生可能エネルギー利用促進法』、08年4月に施工された『改正省エネルギー法』、そして09年1月に施工された『循環経済促進法』などの制度整備によって中長期的には循環型経済を確立しようとしている。そうだとすれば、環境対策も行政強制型から法規制強化と経済手法の充実への移行を急ぐべきだろう。