富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. 中国通 >
  4. トピックス >
  5. 2009年 >
  6. 市場化に向かう中国の省エネルギー政策展開

市場化に向かう中国の省エネルギー政策展開

発行日 2009年1月15日

主席研究員 金 堅敏


進まない経済のサービス化・ハイテク化

  • 省エネルギー政策を推進する中国は、「十一・五」計画(06年~10年)で単位GDPエネルギー消費量の20%削減を国民に向けてコミットし、この拘束力のある公約を守らなければ政権の命取りと認識し、ありとあらゆる手段を使って目標達成に必死となっている。
  • 中国では、GDPにおけるサービス産業のシェアが1%アップすれば、単位GDPのエネルギー消費量は1%さがる。また、製造業の中でハイテク産業のシェアが1%アップすれば、単位GDPエネルギー消費量は1.3%下がるという産業構造になっている。したがって、中国政府は、「十一・五」計画で10年までにサービス産業対GDP比で3%増(年平均0.6%増)、研究開発(R&D)支出対GDP比で0.7%増(年平均0.14%増)の目標を掲げた。
  • しかし、06年~07年の実績では、サービス産業対GDPウェートは増加することはなかった。また、R&D支出対GDP比は合計0.15%しか増加しかなかった。GDP成長のけん引役は相変わらず鉱工業であった。

強制的「入口政策」、「出口政策」、省エネ責任考課制度

  • 順調に進まない省エネ構造調整に直面した中国当局はついに強制的な手段に出た。「入口政策」としては、新規プロジェクト投資認可の事前条件に「環境影響評価」制度と同等な効果を持つ「省エネ評価審査」制度を導入した。省エネ基準を満たさないプロジェクトは許認可せず、実施してはならないとしている。また、省エネ基準を満たさない建築物は建設を開始してはならず、建設終了であっても販売してはならない。
  • 「出口政策」としては、遅れる生産能力の強制淘汰制度を導入した。図表が示すように、13分野のエネルギー多消費産業分野の遅れた生産能力が強制的に淘汰される。生産能力淘汰計画は地域ごと、年度ごとに割当てられ、計画通りに実施しない企業に対しては、法規に基づき強制的に閉鎖させる。計画通りに実施できない地域に対しては、当該地域での投資許認可を制限するといった強制措置を取る。

図表 「十一・五」期間中淘汰される生産能力(計画)の一覧

電力
(万kW)
製鉄
(万t)
製鋼
(万t)
電解アルミ
(万t)
鉄合金
(万t)
炭化カルシウム
(万t)
コークス
(万t)
5,000 10,000 5,500 65 400 200 8,000
セメント
(万t)
ガラス
(万重量箱)
製紙
(万t)
アルコール
(万t)
味の素
(万t)
レモン酸
(万t)
-
25,000 3,000 650 160 20 8
  • 省エネ責任考課制度を導入して、公約を各地方、重点企業(国レベルでは年間18万t標準炭以上を消費する1,000社を対象に)に分解して、強制的に実施させる。割当てられた目標が達成できなければ、各地方の長と重点企業のトップはクビになる可能性もありうる。
  • 以上で見てきた淘汰されるべき生産能力の配分や省エネ公約の分解割当に当たっては、行政機関によって恣意的に行われる可能性が高い。また、地域経済・産業格差や技術分野の相違なども存在し公平で科学的に分解することも不可能に近い。また、行政命令的な高圧手段に訴える省エネ政策は、地方政府や企業のインセンティブを損なう可能性が高いと、現行政策を批判する声が日増しに高まっている。

市場化、産業化に向けた省エネ政策の推進

  • 中央政府は、手を拱いてただ地方政府や重点企業に省エネ目標を割当てて実施させるわけではない。工業ボイラー改造、地域コージェネレーション事業、余熱・余圧利用、グリーン照明などの十大省エネ重点プロジェクトの実施や遅れた生産能力淘汰に直接予算を投資してモデル事業を実施したり、奨励金を出したりして推進している。例えば、「十一・五」期間中に1.5億個の省エネ電球(1個1元)を補助金づけて普及したり、開発の遅れる地方の生産能力淘汰に財政補助をしたり、省エネ量に応じて奨励金支給(東部地域200元/標準炭トン、補助金制度から奨励金制度への変更)を行っている。
  • 小規模発電所淘汰を加速するために発電価格の引下げ、使用料に基づく暖房価格制度の開始、燃料税の導入、省エネラべリング制度の導入・強化、省エネ製品やサービスの強制的な政府調政策の実施など、経済手法を取り入れた省エネ政策も強化されている。
  • 市場化に向けた省エネ政策の中では、「合同エネルギー管理」(Energy Performance Contracting)モデル―日本でいうESCO(Energy Service Company)事業―が大いに注目されている。
  • 96年に世界銀行等によって導入されたESCO事業は急拡大し、07年末までにESCO事業の推進母体である中国省エネ協会省エネサービス産業委員会(EMCA)に加入する会員数は、308社(うち、ESCO事業者229社。日本のESCO事業推進協議会のESCO事業者は69社しかない)、実施したプロジェクトは1,723件に達した。財政負担なく省エネサービス会社と対象企業との間のWin/Win関係で省エネ成果が得られるので、一部の地方政府は補助金を出してESCOビジネス、すなわち省エネサービス産業を推進している。
  • ABB、Seimens、Schneider、Honeywellなどの外資大手も中国の3億元(約5兆円)に上ると見込まれる省エネ市場を目指してESCO事業への取組を加速している。日系企業では、省エネ設備を提供する日立や現地ESCO事業者をサポートする九州電力などの事例はあったが、単独事業は見られなかったので、その取組みが急がれるべきである。