富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. 中国通 >
  4. トピックス >
  5. 2008年 >
  6. 中国の内需拡大策とその効果(1)

中国の内需拡大策とその効果(1)

発行日 2008年12月15日

主席研究員 朱 炎


成長が減速する中国経済の現状

  • 中国経済は5年間の二桁成長を経て、2008年に入って成長が減速し始め、第3四半期の成長率は9%と低下した。10月に入ってから経済情勢がさらに悪化した。
  • 中国経済の現在の問題はおもに5つの面で表れている。
    1. 成長を支えてきた輸出は11月に前年同月比2.2%減となっており、労働集約型と低付加価値の輸出産業は苦境に陥り、主要輸出市場の米国での需要減退も悪影響をもたらした。
    2. 年初からの引き締めや成長減速の影響により、多くの企業は資金難と収益減などの経営困難に見舞われ、中小企業と輸出企業の倒産が増えている。
    3. 工業生産が停滞している。鉱工業付加価値の伸び率は上半期に16.3%もあったが、その後低下し、10月には8.2%まで下がり、主要素材の生産量と発電量は軒並みマイナスに転落した。
    4. 近年急騰してきた不動産価格は下落し、取引量も大幅に減少した。不動産市場の低迷は川上の鉄鋼、建材、建設、川下の内装、家具、家電などの産業に悪い影響を波及している。
    5. 株式市場は07年10月にピークに達した後続落し、米国での金融危機が発生した08年9月以降、株価がさらに急落した。
  • 一方、中国経済には経済成長を支えるプラス要因も依然として存在している。
    1. 投資は依然として高水準にあり、08年1~10月は前年同期比27.2%も伸びた。
    2. 消費も堅調に伸びている。08年に入って、小売総額は2割以上の成長が続き、近年においては最高水準である。
    3. 従来発展が遅れた内陸地域は沿海地域を上回る成長が続いている。
    4. 引き締めの原因の1つであった物価は安定化し、11月の消費者物価指数は2.4%に低下した。
  • 金融危機による中国経済への影響として、金融機関の損失など直接的な影響は少ないが、輸出の減速、株式市場の急落、不確実性による投資・消費のマインドの冷え込みなどの間接的な影響が大きい。

景気対策の本格化:内需拡大策の実施

  • 経済成長を維持し、また世界的同時不況の悪影響を避けるため、中国政府は早くも7月から従来の引き締め政策を緩和し始めた。米国の金融危機が発生後の9月以降、利下げ、中小企業への融資枠の拡大、税還付比率の引き上げなどの輸出促進策、株式市場と不動産市場への安定化措置などの経済刺激策を実施したが、大きな効果は表れなかった。
  • 10月の経済情勢の更なる悪化を受けて、雇用の維持、社会の安定を重視する中国政府は11月から景気対策を本格化した。マクロ経済政策を積極的財政政策、適度緩和の金融政策に大きく転換し、2010年までの投資額が4兆元(約57兆円)にのぼる内需拡大のための10項目を実施すると11月9日に発表した。
  • この史上最大規模の景気対策には、以下の内容が含まれる。
    1. 低所得者向け住宅建設(11月27日発表した投資額は2,800億元、以下同)
    2. バイオメタンガス、上下水道、道路、電力、灌漑などの農村インフラ建設(3,700億元)
    3. 鉄道、道路、空港、発電所など大型インフラ建設(18,000億元)
    4. 医療、文化、教育事業を発展させるための関連建設(400億元)
    5. 都市下水処理、ごみ処理、水資汚染処理、森林資源の保護、省エネを内容とした生態環境事業の整備(3,500億元)
    6. 技術開発とイノベーションを中心とした産業構造の調整(1,600億元)
    7. 地震被災地の再建(10,000億元)
    8. 低所得者と農民の所得向上を重点とし、都市と農村の所得向上への支援
    9. 増値税(付加価値税)の改革による企業減税(1,200億元の減税)
    10. 金融緩和措置として、融資の総量規制を撤廃し、重点プロジェクト、中小企業、技術革新、農村に対する融資の拡大