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広東省の輸出産業の経営困難と高度化への構造転換(1)

発行日 2008年10月6日

主席研究員 朱 炎


輸出産業の苦境

  • 今年に入ってから、中国の輸出は減速傾向が顕在し、広東省の輸出産業はさまざまな経営困難に直面している。これは、賃金などのコスト増加、経営環境の変化、優遇政策の見直し、海外市場の変化などの面で現れている。
  • コスト面では、まず、賃金コストが大幅に上昇した。例えば、上半期広東省の平均月給は12.6%上昇し、深セン経済特区の最低賃金は7月から17.6%引き上げられ、初めて月額1000元に達した。今年から実施した新しい労働契約法の規定をクリアする場合、企業は1~2割の人件費増加を強いられる。また、世界的な資源・エネルギー価格の高騰の影響で、原材料価格や、部品調達のコストも大幅に上昇した。
  • 経営環境については、金融引締めの影響で多くの企業は資金繰りが悪化し、金利負担も増えた。また、電力不足により多くの企業の稼働率が低下し、自家発電で補うと、コストが高くなる。加速する元高は、輸出コストを上昇させ、輸出企業が対応に追われている。
  • 優遇政策の見直しは輸出コストを増加させ、大きなマイナス影響をもたらした。低付加価値、資源多消費型の輸出製品に対して、税還付比率が引き下げられた。輸入した原材料・部品を用いて加工した製品を輸出する経営形態、加工貿易(委託加工ともいう)に対して、制限・禁止の範囲を拡大した。制限業種の場合、従来の原材料・部品の輸入保税措置が廃止され、巨額の保証金(敷金)を税関に納めることは新たな負担となる。
  • さらに、海外市場の低迷も輸出に影を落とす。サブプライムローンの影響で、米国の景気が後退し、需要が増えず、コスト上昇による輸出価格の引き上げ、すなわち価格の転嫁も困難となった。
  • こうした影響の結果として、アパレル、靴、家具、玩具、雑貨など、労働集約・低付加価値の輸出産業は深刻な経営困難に見舞われている。輸出企業のなか、競争力の弱い中小企業が受けたダメージがとくに大きい。中小企業は分業関係のなか、単一生産工程に特化し、バリューチェーンが短いため、コスト削減の余力が小さく、出荷価格の引き上げに関する交渉力も弱い。また、加工貿易(委託加工)という経営形態を取る企業のなか、とくに規制の対象となる産業は、輸入の保税に多額の保証金を強いられている。経営困難の輸出企業は、中国企業のみならず、香港企業、台湾企業などの外資系企業も同様である。

企業の対応

  • このような経営の危機的状況に対して、輸出企業の対応はさまざまである。
  • 一部の企業は我慢、忍耐しか対応できない。赤字でも、顧客維持と固定費回収のため、受注・生産・輸出を継続せざるを得ず、人員削減、生産規模縮小、設備売却をしながら、政策の緩和・支援、米国の景気好転、中小企業の倒産により競争秩序の改善などを期待し、困難な時期を乗り越えようとしている。赤字経営が続くなか、体力の弱い中小企業が耐えられず、倒産、転廃業、移転する企業が増えている。
  • また、一部の企業は経営努力で経営危機を乗り越えようとしている。コスト削減のため、さまざまな措置をとっているなか、賃金上昇の対策の一環として、機械導入で省力化を図ることが注目されている。また、製品の高付加価値化を図り、輸入先との価格交渉にも力を入れる。さらに、輸出の不振を補うため、国内市場の開拓を強化し、販売網を構築し、ブランドを創設する動きもある。ただし、このような産業高度化を図る経営努力は大企業に限られている。
  • さらに、一部の企業は、賃金コストが高く、土地取得が困難な珠江デルタ地域から、コストの安い周辺や内陸地域、もしくはベトナムに移転する動きもある。