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中国の経営環境悪化に直面する日系企業の活動状況

発行日 2008年8月8日

主席研究員 金 堅敏


日系企業に対する現地調査の概要

  • 近年、中国では、金融引締め政策の実施、人民元相場の継続的な切上げ、輸出還付税率の引下げ、労働コストの上昇、原材料・エネルギー価格の上昇、環境コスト内部化など政策の変更や経営環境が急速に変わってきており、内外資企業に大きな影響を与えている。7月20日~23日に上海、蘇州で活動している日系製造業4社にその影響についてヒアリングを行った。これら4社の事業分野は、内需企業(自動車関連)、輸出組立企業・輸出部品企業(電機関連)、オフショア受託開発企業(ソフト開発関連)である。以下の図表は、現地調査の結果概要を示すものである。

図表 中国の政策環境変化と日系企業への影響の概要

A社 B社 C社 D社
製品内容 自動車部品製販 電気モジュール製販 電子部品製販 オフショア開発
従業員数(人) 4,100 1,500(派遣40%) 1,649(派遣20%) 250
輸出/内販 25/75 90/10 100/0 80/20
元高影響
輸出決済通貨 ドル、ユーロ ドル ドル
労働コスト
上昇
原材料等高騰
輸出還付率
引下
所得税制統一 普通 小(赤字)
環境コスト増 プラス 普通 普通 なし
その他 大(供給能力過剰)
環境変化への
対策
・輸出販売価格改定
・決済通貨の変更
・内需への転換
・生産性向上、効率化
・内需市場開拓
・市場の多角化
・地方都市への移転
・効率化
・コスト削減
・高付加価値化
・開発強化
・市場の多様化
・外注拡大・地方都市へのシフト
・稼働率向上

出所:FRIヒアリング

調査の結果

(1)最大の影響要素は人民元高である

  • 中国の政策変更について一番影響を受けているのは、人民元の急上昇である。その次が労働コスト上昇である。原材料上昇や税制の影響、環境コストの影響は限定的である。
  • 為替先物予約によるリスクヘッジの話はD社しか聞かれていないが、A社とB社は、決済通貨をドルや円から人民元に切り替えるよう(調達の場合は逆)努力している。

(2)内需企業と輸出企業に異なる影響

  • 中国の政策環境変化が内需企業A社に与える影響は限定的であるが、輸出企業への影響は大きい。A社の場合、中国の内需市場が尚旺盛で生産が追いつかない状態にあり、販売価格の引上げや決済通貨の切替などで交渉力も強い。
  • 輸出企業3社では、決済通貨がドルか円であり人民元高の影響は大きい。例えば、日系電機企業の利益率は5%前後と言われているが、08年上期だけで人民元の上昇率は6.4%になったので、赤字に転落する可能性がある。実際、B社はすでに赤字の状態にあり、C社は水面以下に落ちる可能性があるという。
  • したがって、A社、B社は輸出から内需へのシフトを図っている。また、C社は日本市場或いは中国国内市場の開拓など市場の多様化をしようとしている。ただし、B社もC社も生産に特化している性質から販売スタッフや市場サポートのための設計部隊が欠けているので市場シフトは容易ではない。

(3)労働コストの上昇は立地場所によってその影響が異なる

  • 生産拠点が上海にあるB社とD社は労働コスト上昇の影響が大きい。生産拠点が周辺地方にあるA社とC社ではその影響が限定的である。因みに、B社とD社の労働コスト(賃金+社会保障)上昇率は10%前後である。蘇州にあるC社は平均で2、3%である。
  • 因みに、上海から車で2、3時間かかる地方都市(例えば江蘇省の塩城市、南通市など)の労働コストは上海の2/3であり、ベトナムのハノイ、ホーチミン市並である。因みに、D社は2年前に南通市に開発拠点を設置済みで、B社は塩城市に組立拠点を設置する可能性もある。

(4)コスト削減・効率化、高度化への努力

  • いずれの企業もこれまで重視されてこなかった生産プロセスの合理化や省力化などについて外部コンサル会社を入れてコスト削減や効率化に取組んでいる。
  • また、A社とC社は生産商品の高付加価値化やオリジナル技術・製品の開発・設計に取り掛かり、R&D拠点或いは技術部門の強化に取り掛かっている。

(5)日系企業の競争力強化につながる環境コストの内部化など

  • 労働条件の整備や環境コストの内部化などの政策変更は日系企業に有利に働く可能性もある。例えば、A社は、中国国内の高性能・高品質・高環境製品や労働条件整備の要求は競争相手(地場企業や韓国企業など)のコストアップにつながり、相対的に自社に有利であると判断している。この見方は中国にある欧米商工会議所で確認された判断でもある。