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中国におけるEU企業の最新投資/経営動向

発行日 2008年7月18日

主席研究員 金 堅敏


日米企業より遅れたEU企業の対中投資

  • 中国商務省の統計によると、EU企業(EU15ヵ国)の対中投資は年を追って拡大し、06年の実行金額は54.4億ドルに達し過去最高になった。07年の実行金額は38.4億ドルで29.4%減とはじめて減少に転じたが、08年1-5月には35.2%と急増に転じた。ただし、中国への直接投資総額におけるEUのシェアは、99年における最高の11.11%から現在の5%前後に大きく低下した。因みに、米国企業の対中投資は03年から5年連続で減少し、同シェアは02年における最高の10.3%から07年の3.5%まで低下した。日本企業の対中投資も06年と07年の2年連続の2桁減少で同シェアは05年の9.0%から07年の4.8%まで低下した。EU企業は先行した日米企業のような投資調整期には入らなかった。
  • 他方、近年盛んになってきたEU域内中小企業の対中投資に取って代わり、08年には一巡した資本集約的な大型投資が再び行われるようになってきた。プロジェクト当たりの投資金額は、06年の208万ドル/件から07年に160万ドル/件に低下したが、08年1-5月は287.5万ドル/件に大きく拡大してきた。中国EU商工会議所によると、EU企業による資本集約的・技術集約的プロジェクトの大型増資や新規投資が増えてきている。実際、日米企業による対中投資も大型化傾向が見られる。
  • KPMGの最新調査報告“Global Corporate Capital Flows,2008/9 to 2013/14”によると、欧米や新興国の15ヵ国の大型多国籍企業300社に対しアンケート調査を行った結果、この一年間の投資先として中国を選んだ回答率は17%で米国の27%に次ぐポジションにあるが、今後5年間の投資見込みでは中国の24%が米国の23%を越えた。特に、投資国の国別投資計画においてドイツ、スペイン、オランダ、英国などのEU諸国の大手企業は、足元ないしこれからの5年間のいずれも中国が最重要投資地域として位置づけている。
  • すでに中国で活動しているEU企業に対する調査“Business Confidence Survey 2007”によると、59%の企業は、中国の新たな地方で投資を行うと予定している。約5%の企業は他のアジア地域への投資シフトを考えている。ただし、中国EU商工会議所に対するヒアリングでは、日系企業のような中国での既存企業のアジア諸国への移転ケースは確認できなかった。
  • 通常、外資企業の対中投資は主に中国の安い労働力や安い製品を利用することにあると理解されがちだが、中国EU商工会議所の前述調査によると、調査対象EU企業の61%(06年は49%)は中国内需市場開拓を最重要戦略に位置づけており、その次はユーザーからのプレシャー(回答率は24%)である。安いコスト利用が主要考慮要因だと回答した企業数は7%(06年は8%)しかなかった。

経営活動の実態

  • 中国で活動している90%前後のEU企業は中国に統括会社を設立している。統括会社の設立地域は、上海(回答率40%)、北京(同27%)、成都(10社)などの順となる。内陸部の成都に統括会社が置かれているのは意外に感じる。分野によって内陸部の魅力も増していると思われる。
  • また、半数近くの被調査EU企業は中国でR&D拠点をすでに有しているか開設の予定をしている。特に従業員100人を超えた企業の31%はすでにR&D拠点を開設している。ただし、R&D活動の中心は開発であり、革新的な研究活動は少ない。
  • 収益では、61%が黒字、11%が均衡、28%が赤字となっている。ただし、赤字企業のうち82%は3年以内に黒字転換できると予測している。また、企業規模が大きく、経営期間の長いほど収益状況もよくなる傾向がある。例えば、小規模企業は50%前後しか黒字になっていないが、大規模企業は80%になっているという。ジェトロの調査(07年度)によると、日系企業の収益状況は同程度(黒字62%前後、赤字20%前後)である。ただし、中国米国商工会議所の調査(07年)では、米系企業の黒字企業は74%に達し、赤字企業は5%前後しかない。日米企業の収益状況も企業規模、経営期間に関して同じ傾向にある。

経営課題(障害)

  • 中国におけるEU企業の経営課題(障害)は、中国の政策透明性、知的財産権問題、煩雑な行政手続き、内外企業への差別待遇などである。特に、基幹産業における外資出資比率規制、技術移転の強制、外資によるM&Aに対する規制などの保護主義的な政策動向に神経を尖らせている。
  • 他方、コスト上昇に伴う経営環境悪化の問題は日米企業ほど意識されていない。ドルや円に対する人民元高になっているが、ユーロに対しては人民元安の状況が続いていることや内需型投資が中心なので輸出税還付率の切下げ政策も影響が少ないからであろう。
  • また、日系企業が中国のビジネス環境悪化の内容としてよく挙げた新労働契約法の施行や厳格な環境政策、内外資企業税率の統一、土地政策の実施などの影響についてもマイナスの受け止め方は少ない。これらの政策変更は公平な競争条件の整備や透明な行政の達成で外資企業にとってはプラス効果がマイナス効果よりも大きいと中国EU商工会議所は評価している。