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外資移転の受け入れ基地になる広西自治区

発行日 2008年7月10日

主席研究員 朱 炎


加工貿易の移転は発展のチャンス

  • 中国の広西チワン族自治区は、中国の沿海部にありながら、経済発展が遅れている。しかし現在、広西自治区は広東省などの東部沿海地域からの加工貿易の移転を受け入れるという新たな発展のチャンスに恵まれている。
  • 中国の輸出のなか、加工貿易の形の輸出は全体の約半分を占めている。加工貿易(委託加工とも称される)は、輸入した原材料を使用し、加工した製品を全量輸出する外資に認める経営方式である。外資にとって、加工貿易の経営方式は、コストパフォーマンスがとくに大きなメリットである。加工貿易に従事している外資系企業は、おもに交通と輸出が便利な東部沿海地域に立地し、香港に隣接する広東省の珠江デルタ地域にはとくに集中している。
  • 近年、賃金コストの上昇、人民元高、環境基準の強化、加工貿易に与えた優遇策の見直しなどにより、広東省における生産と輸出が困難となり、加工貿易に従事している外資系企業は、転業と廃業、もしくはよりコストの安い地域に移転することに迫られている。加工貿易のみならず、労働集約的産業、低付加価値産業も同じような問題に直面している。例えば、珠江デルタ地域で操業している香港系企業は合計8万社のうち、約1万社は移転を考えている。
  • 一方、中国政府は地域的均衡発展や、加工貿易の高度化を促進するため、沿海部にある加工貿易企業の一部を内陸部に誘導する政策をとり始めた。商務部は15の省・市・自治区の31都市を「加工貿易の移転の受け入れ地域」と指定し、融資などの優遇政策を与えた。そのなかには、広西自治区の南寧市と欽州市も含まれている。また、内陸地域に移転された加工貿易企業は、部品の輸入関税の保税が適用され、沿海地域での巨額の保証金が免除され、メリットが大きい。

広西自治区の優位性

  • 加工貿易の外資系企業の移転に関しては、広西自治区は有望な移転先として浮上している。広西自治区は以下の優位性を持っている。
  • 第1に、地理、交通の便である。広西自治区は他の中西部地域と違って、海(北部湾、トンキン湾)に面している。欽州、防城、北海の3つの港があり、香港との距離も近いため、製品を輸出する加工貿易にとってはメリットが大きい。広東省にある加工貿易の移転先候補として、広西自治区は地理、交通の条件に恵まれている。
  • 第2に、広西自治区は経済発展がやや遅れていたため、企業経営のコストは広東省の珠江デルタ地域に比べて大幅に安い。例えば、深圳経済特区では最低賃金はすでに月額1,000元に達したが、南寧市は580元、欽州市は500元と安い。ほかにも、土地取得の費用、電気、水道料金も比較的安い。
  • 第3に、広西自治区には、アルミなどの鉱物資源、砂糖、松脂、漢方薬などの植物資源、水力発電などのエネルギー資源も豊富である。また、加工貿易に不可欠の裾野産業もある程度存在している。さらに、近年、中央政府の支援により、広西で大型プロジェクトが相次いで建設されており、関連産業を誘致している。例えば、欽州での年処理量1,000万トンの石油化学、大型製紙工場(年産60万トン紙と30万トンのパルプ)、防城港での年産1,000万トンの鉄鋼が建設中にある。広西の西部にあるアルミ生産の大型プロジェクトは拡張投資を行っている。
  • 第4に、中国における広西自治区の独特な地位により、中央政府は広西の経済の発展のため、さまざまな優遇政策を与え、広西に投資する外資もさまざまなメリットを享受できる。広西は沿海にありながら西部にあり、しかも少数民族の地域であるため、沿海、西部内陸、民族の3種類の優遇政策が同時に適用できる。今年1月、南寧市や、欽州、防城、北海の3つの港湾都市で構成される「北部湾経済区」の設立を中央政府が認可し、経済特区並の優遇政策を与えた。また、ベトナムと隣接するため、広西は中国のASEANとの経済協力の基地にもなり、中国・ASEANフォーラムが南寧で毎年開催される。

移転受け入れの対策

  • 広西自治区は東部から加工貿易の移転を経済発展の大きなチャンスとして捕らえ、移転を受け入れるため、さまざまな面で準備を進めている。
  • 第1に、加工貿易の移転を受け入れるため、広西自治区は、中央政府が与えた優遇政策のほかに、自らの奨励策も検討している。南寧市は既存の2つの国家レベルの工業団地を拡張し、日本企業専門の団地も新たに建設している。欽州市は港湾に隣接する地域に、面積50平方キロと70平方キロの2つの工業団地を建設している。
  • 第2に、港湾の整備が加速している。従来、それぞれの市に管轄されていた欽州、防城、北海の3つの港は、今年から経営が統合された。大型港湾の建設に適する欽州港は、埠頭の建設を急ピッチで進めている。
  • ただし、広西自治区は、加工貿易の移転の受け入れに当たって、問題点も抱えている。その1つは、裾野産業は広東省などに比べると弱い。もう1つは、加工貿易に不可欠な物流、通関などの条件とサービスも優れていない。例えば、広西に良港があるにもかかわらず、背後地に産業が少なく、海運需要が少ないため、香港へのコンテナ定期便も少ない。南寧にある企業からの輸出は、陸路で広東省の港まで運ぶことが多い。保税区は建設中にあり、まだ機能していない。
  • 広西自治区は、加工貿易にとってさまざまな優位性を持っているため、広東省の珠江デルタ地域にある加工貿易の外資系企業から熱い視線を浴びている。一部の香港企業と日本企業はすでに加工貿易の新規工場を広西で建設し始めている。今後、広西は、加工貿易移転を受け入れる環境整備を進めれば、中国のもう1つの加工貿易の基地になろう。