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中国との一体化が進む香港経済

発行日 2008年7月10日

主席研究員 朱 炎


中国との経済的連携で好景気を維持

  • 香港は中国に返還されてからすでに11年になった。返還後、アジア通貨危機の影響で長い不況を経験したが、2003年から回復し、好景気が現在なお続いている。2007年の実質GDP成長率は6.4%、2008年第1四半期は7.1%である。2007年には、香港の1人当たりGDPは初めて3万ドルの大台に乗った。
  • 景気回復と高成長の維持は、おもに中国との経済連携のもとで達成された。
  • 観光業に関しては、2007年中国からの観光客は述べ1,549万人、全体の55%を占める。中国人観光の香港での消費額は観光客全体の58%を占めている。
  • 香港に対する外国投資のうち、中国からの投資は2006年のストックで54%を占めている。また、香港の株式市場においては、中国企業は上場銘柄数の約2割しか占めていないが、時価総額、取引額、調達額などにいずれも半分以上を占めている。

中国との一体化を推進

  • 中国との経済的結びつきは、香港の経済成長の原動力となっているため、香港は中国との経済一体化をさらに重視するようになっている。
  • 香港政府は隣接する深セン市、広東省との一体化を加速する3つの大型プロジェクトを推進している。1つは、香港-珠海・マカオを結ぶ大橋であり、3カ所の距離が大幅に短縮できる。もう1つは香港-広州の高速鉄道であり、所要時間を現在の半分の48分まで短縮できる。しかも、中国の高速鉄道網に接続できる。さらに1つは、香港空港と深セン空港を20分で結ぶ鉄道である。この3つの大型プロジェクトは、いずれも中央政府、広東省政府と協議中であり、1~2年内の着工、2015年前後の完成を目指している。ほかにも、香港と深セン間の新しい通関ゲート、地下鉄の接続などの事業もすでに進行中にある。
  • この3つの大型プロジェクトに代表されるインフラ面の相互協力は、香港と深セン市、広東省との経済的融合の進展を象徴する事業である。完成すれば、香港と珠江デルタのすべての地域が1つの通勤圏となり、物流も大幅に改善できる。しかも、香港政府は、このような経済的融合を積極的に推進するように変化している。
  • 経済的な融合により、香港経済の優位性を失い、消費の購買力、港、空港の需要も隣接する深センに流失してしまうという懸念に対して、香港の政府関係者は「市場の選択に委ねる」と自信を示した。

中国における香港系企業の構造調整と移転

  • 香港企業は80年代から中国に投資し始めた。製造業のほとんどは、生産工場を中国、特に隣接する珠江デルタ地域に移転した。珠江デルタ地域には、約8万社の香港系製造業企業が運営されている。香港の物流、金融機能が、こうした在中国香港企業の需要によって支えられた面が大きい。しかし、中国での賃金上昇、優遇策の見直し、人民元高、環境基準の強化などより、珠江デルタ地域において香港系企業の経営が困難となり、とくに労働集約型、加工貿易の形態をとる香港系企業は転業、廃業、もしくは他の地域に移転することに直面している。この数はなんと1万社にのぼる。珠江デルタ地域にある香港企業の転廃業と移転は、香港の物流、金融などのビジネス機能にも大きな影響を与える。
  • 香港企業の多くは加工貿易の企業の移転先に関して、ベトナムは候補地として相応しくないという認識を示した。裾野産業の欠如で部品調達の困難、中間管理職の募集難が主な理由として挙げられる。そのため、広東省周辺の内陸地域が主要移転先になるだろう。
  • また、香港政府は珠江デルタにある香港系企業の環境対策、中国の環境基準をクリアするため、初めて助成金を設けた。香港企業の環境対策のコンサルと設備の導入に香港政府が助成金を支払う。レッセフェールを標榜する香港では、政府が企業、しかも中国にある香港系企業に助成金を支払うことは画期的なことである。また、環境対策の設備導入は、日本企業にもさまざまなビジネスチャンスがある。

景気過熱への懸念

  • 香港経済の問題点の1つは、景気過熱である。4年連続の6~8%の高成長により、物価、賃金、不動産価格はいずれも上昇している。消費者物価は今年に入って5%台で推移している。不動産の場合、今年1~2月、住宅の平均販売価格は前年同期比28.6%、オフィスの平均賃貸料は16.1%上昇した。
  • 香港のエコノミストの多くは、香港経済の行方に楽観的である。賃金、不動産価格の急騰は確かに香港の競争力にマイナスであるが、高過ぎると市場が自動的に調整し、香港の人々も賃金と不動産の下落を経験し、慣れている。また、香港は米国のサブプライムローンによるマイナス影響が少ない。金融機関の損失が少なく、しかも十分に引き立て金を積んでいる。一方、株式市場は、昨年後半以降、調整がすでに行われた。したがって、香港経済は大きな問題を発生する可能性が小さい。