外資税制の見直しの背景と中身
発行日 2008年2月1日
上席主任研究員 柯 隆
中国経済は30年間の「改革・開放」政策によって大きく変貌した。これまで、中国経済にとって外資系企業は経済成長の起爆剤の役割を果たしてきた。極端に外貨不足の80年代において外資系企業の対中直接投資は外貨の資金源だった。当時、中国政府は外資系企業に対して設備などの資本財輸入と製品輸出に係る外貨バランスを求めていた。
外資誘致の優遇税制
- 中国にとって貴重な外貨収入源だった外資系企業を呼び込むために、種々の優遇政策が講じられた。その一番の目玉は企業所得税(法人税)の2年免税・3年減税措置であった。本来ならば、法人税率は33%のはずだが、外資系企業の場合、利益が発生してからの最初の2年間は税率ゼロになる。それからの3年間は、税率は半分になる(16.5%)。
- しかし、法人税33%のうち、30%は国税で、残りの3%は地方税である。地方自治体は外資系企業を誘致するために、最初から地方税の3%を完全に免除することが多い。結局、外資系企業が納める法人税は15%だった。
- それに対して、地場企業についてはこのような優遇政策が適用されず、一律33%の法人税が課税される。予てから国内では外資系企業と地場企業の競争は不公平である、との不満が多い。そのなかで国有企業の場合、行政からの補助金や利益の配当が内部留保できる。それに対して、地場の民営企業の場合、33%の法人税が厳格に課税されるため、かなり厳しい経営環境を強いられている。
WTO加盟と外資政策の見直し
- とくに、2001年12月、世界貿易機関(WTO)加盟をきっかけに、中国市場は完全に開放されている。それまで、外資系企業が参入規制により思う通りに中国市場に参入できなかったケースは少なくなかった。01年以降、外資の参入が原則自由化され、税制面の優遇もあり、それによって地場企業の不満は高まる一方である。
- それに対応する産業政策として、国家発展改革委員会は数回に亘り、市場参入行政指導の指針を定めた。50以上の産業分類のなかで、奨励類、制限類、禁止類などに明確に分けられた。しかし、問題の解決には至らなかった。03年、江沢民政権の任期満了と胡錦濤政権の誕生をきっかけに、それまでの外資優遇政策が再検討されるようになった。フェアな市場環境を構築するために、内外企業を差別化する従来の法人税制を見直し、税率の一本化が検討された。
- その際、商務部を中心に、外資系企業に適用される優遇税制が廃止になれば、外資系企業が中国を離れるのではないかとの心配があった。このような心配を解消するために、優遇税制の廃止は一定の過渡期を儲けて実施するうえ、更なる市場開放との引き換えも外資系企業を中国に止めることができるとの判断がなされた。
- 最終的に、全人代で採用された内外企業法人税一本化法案の中身をみると、2012年に25%になるように調整されている。具体的に、地場企業の法人税率は現行の33%から5年間をかけて8ポイントを下げる。それに対して、外資系企業の場合、07年15%、08年18%、09年20%、10年22%、11年24%、12年25%と順次引き上げられる予定である。
- 内外企業の法人税一本化の背景に、中国の潤沢な流動性と技術力の向上がある。とくに、優遇税制に頼る低付加価値の産業やエネルギー多消費型の産業などは徐々に退出させられる。これは中国経済発展の必然な結果といえる。恐らく日本企業が今後の税率向上に対応するために、一部の収益性の低い製造業をベトナムやラオスなどにシフトする必要があり、中国国内では研究開発を強化し、中国市場を獲得する新たな戦略の考案が迫られている。

