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タイにおける日系企業の経営活動の実態(2)

発行日 2006年12月22日

上席主任研究員 金 堅敏


B社(チョンブリ県)

  • B社は、1991年6月に本社100%資本により設立されたエアコン(完成品、組み立てセット)製造会社である。2005年の完成品エアコンは179万台を生産し、売上高は168億THB(約540億円)。B社は、欧米・中近東向けの生産拠点である。
  • 設立当初は100%海外輸出(保税扱い)であったが、タイ市場成長(05年市場規模約54万台)や関税の引下げを見て内販も図っている。海外輸出は本社国際営業部門が、タイ国内販売は別途バンコクで設立されている販売会社が担当する。製販分離の形態を取っている。
  • 部品の現地調達率は60%に達しており、残りは日本、マレーシア、台湾、ベトナム等(の日系企業)から調達している。現地調達のうち、6割は現地日系企業である。
  • 2006年3月末現在、従業員は約2,500名で、うち、1,081名は正規社員で、残り約1,500名は派遣社員である。正規従業員のうち、ワーカー約70%で、また大卒が3割弱である。日本からの派遣駐在員は21名である。
  • 当該地域の最低賃金は166THB/日なので、高卒の初任給は約4,900THB/月(約135ドル)である。最低賃金の上昇率は6%前後である。大卒のスタッフの初任給は9,000THB(約243ドル)、技術者は13,000THB(約350ドル)である。給与上昇率は8%前後である。
  • ワーカーの離職率は9%前後で設立当初は高かったが、次第に低下してきた。技術者の離職率はワーカーより高い。日系企業の進出が加速しているので、即戦力(エンジニアやマネジャー)を求めて人材争奪戦が繰り広げられている。
  • 従業員の募集・採用は、インターネット掲載や募集ポスターなどによる。一部は人材仲介会社経由もある。北部の地方から出稼ぎに来ている従業員にも寮を提供せず、自己責任で民間の下宿を利用している。
  • 技術・会社情報の違法流出問題は確認されていないが、人材流動性が高いので、技術・情報の流出の懸念はある。
  • 課題としては、部品の現地調達は進んでいるが、「ヒト」の現地化を図っているところである。現地従業員の本社研修を1年から5年までに延ばして本社の文化、意思決定プロセスを理解してもらい、現地拠点のマネジメントを任せられるように期待している。
  • また、近年、タイでは労働運動が次第に高まってきているので、労働組合対策問題が浮上してきている。一昨年にストライキがあり、その後労働組合が組織された。最近も給与や労働条件などに関する23項目の要求が組合からだされた。地元の労働局と密接に連携しながら対応している。

C社(チョンブリ県)

  • C社は、2001年6月に本社と地場企業との共同出資(出資比率は74.9:25.1)で設立された自動車部品の製造・販売会社(製販一体企業)である。
  • 現在、製品の85%は内販で、15%は輸出である。ただ、C社売上高の10%は日本からの輸入販売である。ユーザーは主にいすゞ、トヨタなどの日系自動車メーカーである。
  • 素材の現地調達率は、5%~6%とまだ低い。例えば、日本、インド、中国しか生産できない軸受鋼や鋼材鋼は、日本から輸入している。ただし、素材自体が現地調達できなくても、加工工程(熱加工、鍛造)の順次現地化によってコストメリットを図っている。
  • 従業員は540名で、うちワーカーが約350名である。大卒約100名、高専卒100名、残りは高卒である。日本人派遣駐在員は18名である。
  • 従業員の採用は、インターネット掲載や募集ポスター掲載により行う。極少数は人材仲介会社経由で行う。従業員に寮は提供していない。ただ、食事は無料提供している。幸い、C社は工業団地に立地しており、同じ団地に入居している企業は、400社、10万人は入っていると言われ、募集しやすい環境にある。
  • 従業員の離職率は1.8%前後で低くなっている。スタッフよりもオペレーターの離職が多い。ちなみに、C社の高卒の初任給は162ドル(当地域の最低賃金は180THB/ 日)、大卒初任給は270ドル、マネジャー級は811ドル~1,081ドル前後である。給与上昇率は6%前後である。
  • 部長ポストはほとんど現地スタッフに任せているが、アドバイザーに日本人がいる。
  • 合弁企業なので、従業員の採用や労務問題(組合は形成されていうないが)は解決してくれるメリットのある反面、会社の利益配分などに口をだすなど経営判断の機動性が阻害されるデメリットもある。また、JV企業なので、パートナーへの技術流出問題も懸念していない。タイのパートナーは配当に熱中し、技術に対する関心はあまりないという。
  • タイの組合運動は健全な方向に向いていないような気がする。個の利益ばかり追求している組織のように見られる。
  • その他:社内にはアジア・パシフィック技術センター(APTC)が設置されており、技術サポートや製品開発を図っている。