タイにおける日系企業の経営活動の実態(1)
発行日 2006年12月22日
上席主任研究員 金 堅敏
2006年11月22日~25日にタイ・バンコク及びその周辺で活動している日系企業5社(販売企業1社、電気・機械製造関連2社、化学素材製造関連2社)を訪問し、その経営活動状況を調査した。ここでその調査の内容を纏める。その概要は以下のとおりである。
日系製造企業5社のタイ拠点の経営活動の現状

A社(バンコク)
- A社は、1995年9月にシンガポールにあるAP地域本部により設立された100%日系資本のタイ市場向け販売会社である。その機能は、1)製品販売、2)エンジニアリング、3)メンテナンス・技術サポート、4)開発・設計、5)顧客研修(有料)などである。製品販売からソリューション提供へのチェンジを図っている。
- 販売製品の95%は本社の国内および海外拠点(主に東南アジア拠点)で生産された製品である。残りの5%は、タイ等で調達した他社製品である。販売製品の調達は、シンガポールにあるHQ(本社機能)に依頼する。
- 顧客では、60%がタイで活動している日系企業向け、残りは、ローカル企業や現地で活動している外資企業である。60%~70%は自動車産業向けである。
- 2005年の業績は売上高で10%の伸びを収めたが、今年は6~7%に低下する。将来は、タイ経済の成長鈍化が懸念される。
- 従業員は106名で、日本からの派遣駐在員は社長を含む4名である。従業員はほぼ100%大卒で、中途採用が多くリクルートは人材仲介会社を通して行う。営業本部長や8人中6人の部長職は現地スタッフである。技術サポートが20名前後で、設計・開発が2~3名配置されている。
- A社の大学初任給は、16,000THB(432ドル)、マネジャー級は、6~8万THB(約1,892ドル)である。給与の年平均上昇率が約8%となっている。人材確保のため、給与は比較的高目に設定されている。
- A社従業員の離職率は3%前後と低く押さえられている。比較的高目の給料体系、現地化への取組みと明るい作業環境が人材を引き付けている要因となる。
- 技術や社内情報の違法流出問題は確認されていない。製造拠点でないので労働契約に守秘義務は入れていないが、最近本社監査室から内部統制の強化が要求されているし、タイでは労使紛争も増えているので、契約内容の改正や社内制度強化が進られている。
- 代理店販売の方法を取っているが、販売代金回収問題は生じていない。前金か銀行保証の売掛であるので、たまに延滞はあっても回収不能なケースはなかった。
- タイでは、中国のような反日感情は存在していないが、内心の考え方がわかりにくく、いつか爆発して労使問題に発展していく可能性は高まってきていると日系企業の間で認識されつつある。
