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華南地域における日系製造企業の経営活動の実態(1)

発行日 2006年11月17日

上席主任研究員 金 堅敏


華南地域における日系製造企業の経営実態を調査するため、2006年11月6日に中国深セン市に活動しているA社(深セン)とB社(深セン)工業を訪問した。図表が示すようにその概要を纏める。

深セン市にある日系製造企業の経営活動の概況

A社(深セン) B社(深セン)
設立時期 2001年3月 1992年4月
資本関係 100%資本 100%資本
輸出/内販(%) 輸出85/内販15 100輸出
従業員数(人)
うち日本籍
4,700(大卒1.7%)
40名(現地採用16名)
9,606(大専を含む大卒15%)
26名(現地採用3名)
製品 リレー、センサー等の電子部品 鏡枠ユニット、光学ユニット等
現地調達率(%) 90%以上 40%
高卒初任給
大卒初任給
マネジャー
給与上昇率(%)
95ドル(特区外最低賃金+α)
250ドル
1,250ドル(30歳前後)
5%(スタッフ)
100ドル(特区内最低賃金+α)
318ドル
875~1,000ドル
3~4%(スタッフ)
離職率(%) ・4(技術者・管理職)
・50前後(ワーカー、年率)
・14(スタッフ)
・36前後(ワーカー、年率)
技術流出 ・特になし ・特になし
・懸念あり
反日感情 ・特になし
・マクロ的に懸念あり
・特になし
課題 ・人材採りにくい
・週一回停電あり
・税務・税関手続きの不安定性

ケーススタディ:A社(深セン)

  • A社(深セン)は、本社により2001年3月に設立された100%独資の電子部品(リレー、スイッチ、センサー、コネクター等)の生産拠点である。深セン経済特区の外に独自の「A社工業団地」に立地している。製品の85%が輸出向け(保税扱い、税関とはEDIでオンライン処理)で内販は15%に留まっている。販売は、香港や上海にある販売会社が行う。
  • 新製品の導入や既存製品の生産能力の不足のためフェーズIIIの拡張工事が行われている。
    素材・中間財・部品の現地調達率は90%以上に達しており、サプライヤーの大部分は現地にある日系、台湾系素材・部品メーカーである。
  • 会社の中に研究開発部が設置されており、約20名のスタッフが製品の現地化や部品開発、測定などの活動を行っている。
  • 2006年10月末現在、従業員数は4,700名で日本人は派遣者24名と現地採用者16名の40名いる。スタッフは800人いるが、大卒は10%前後である。ローカル出身の部長二人いるが、その他の幹部役員は日本人である。ただし、現地化の方針はある。
  • 高卒の初任給は、法定最低賃金(現在、特区内810元、特区外700元)+αである760元である。今年の最低賃金上昇率は20%に達している。4年制大卒の初任給は2,000以上で、マネジャーレベルの給与水準は1万元前後である。これら技術者やスタッフの賃金上昇率は約5%である。現地採用の日本人スタッフの大卒初任給は、1~1.5万元である。
  • ワーカーの離職率は月ベースで4.5%~5%で、毎月200名前後が入れ替わる。技術者・スタッフは年間約4%である。ワーカーは、現地労働局を通じて湖南省、湖北省、江蘇省等から継続的に採用している。スタッフは、深セン市の人材市場や新聞広告などを通じて独自に採用する。深セン市内から50キロ以上も離れているので、原則全員宿舎生活である。何人かの現地採用の駐在員も入っているという。
  • ワーカーの入れ替えが激しいとは言え、品質問題は目立たない。歩留まりは99.3%で日本国内工場の99.5%~99.7%には及ばないが、海外拠点では最高レベルである。
  • 知財について、違法流出問題は確認されていない。知財保護の仕組みとしては、1)技術者・スタッフとは個別的な秘密保持契約を締結することとワーカーでは労働契約に秘密保持条項を入れること、2)技術流出しないように保証人制度(保証人の動産・不動産等の証明が必要を導入していること、などが導入されている。
  • 課題としては、週一日の計画停電がある。その代わりに自家発電で賄う。また、人材が集まりにくい。企業の立地問題もあるが、製造業離れや内陸部・中部開発で出稼ぎのインセンティブが弱くなっていることも影響している。
  • 日常経営の過程で反日感情は感じていない。マクロ的には潜在リスクと認識している。
  • ベトナムなどへの生産拠点シフトは、純粋な組み立て企業は可能であるが、当社のような部品産業は5年先のことであろう。