日本CTOフォーラム中国訪問の概要(2)
発行日 2006年11月17日
上席主任研究員 金 堅敏
日系企業の事例1:上海味の素食品研究開発中心
- 上海味の素食品研究開発センターは、1)中国市場向け製品開発と2)日本及びグローバルの食品開発支援の目的で2003年2月に設立された100%資本の日系独立法人である。基礎的な技術研究は行っていない。現在は、日本及びグローバルの食品開発支援が業務の8割を占め、昨年始まった中国市場向け製品開発業務が2割に止まっている。本社からの委託費は全社食品R&D研究開発費の5%前後であり、中国市場向けの開発費は味の素(中国)から委託されている。2005年から黒字経営ができた。
- 具体的な業務内容は、1)商品開発(中国市場向け、日本市場向け)、2)分析(残留農薬、微生物、理化学分析)、3)中国食品情報収集と提案(シェフネットワーク、大学などの外部ネットワーク活用)、4)原料探求・原料開発(一次加工)である。1)の商品開発では、日本の技術を取り入れ中国をベースにすると、開発スピードは通常の3倍でできた。2)の分析については、日本で行う項目を全部行っている。分析スピードが速く(約日本の3倍)、コストが安い(約日本の1/3)ので、日本及びグローバルのグループ企業から分析の依頼を受けている。味の素(タイ)のスタッフを対象に微生物分析の研修を行っているので、設立当初想定していなかったグローバルな研究拠点となっている。
- 3)については、40名からなるシェフネットワークを構築している。シェフ指導料は、日本の1/5で済む。また、五つの大学と産学連携を行っており、情報収集に取り組んでいる。大学への委託費は、日本と比べても安くない。4)については、BP(ベンチプラント)で30~50キロのスケールの試作データを取っている。
- 現在、総経理、副総経理、部長はほとんど日本人派遣者で占める。ローカル出身の企画部長を経営幹部の候補として育成している。
- 140名の従業員中、学卒が30%、短大卒が20%、残りは食品専門の高専卒である。マスターレベルは4名いる。主幹クラスは大卒で、主任クラスは学歴よりも能力主義で評価している。離職率は極めて低い。
- 知財やノウハウの管理は厳しくしている。例えば、PCは主任以上しか使えないとか、アクセス権限管理、USB使用管理を厳しくしている。また、セコムのIP管理システムを導入している。ただし、人体認証は導入していない。これまで、技術の流出問題は確認されていない。
- 開発フェーズについては成功しているが、リサーチフェーズの展開も可能である。問題は、本社にリサーチフェーズで中国への展開が合意できるかどうかである。
日系企業の事例2:東風日産乗用車技術中心
- 日産は、中国の三大自動車メーカーの一つである東風自動車との合弁企業「東風汽車有限公司」(中50%:日50%)の乗用車開発部門として2003年6月に東風日産乗用車技術センターを設立した。それとは別に、日産の中国事業統括会社である日産(中国)投資有限公司の中にもR&D部門(技術センター)が設立されている。両方とも広州花都の同じ施設に入居しているが、合弁企業の技術センターである東風日産乗用車技術センター(DNTC)は、中国市場向けの現地化が業務(設計、実験、技術管理)の中心であるのに対して、100%独資企業である日産(中国)の中の技術センター(NCTC)は、輸出用部品の開発、市場調査などの日産のグローバル戦略への支援である。また、二つの技術センターは、人事的にも予算的にも異なる法人が管轄している。
- DNTCスタート初期の業務は、日本技術の複製による現地化(Localization by Copy)であったが、現在は、開発型(Localization by Development)の活動に入っている。将来的には、開発初期より参画型(ACVE fuction)を目標にしている。ただし、現在の開発は、部品や内装アクセサリー等の開発に止まっており、構造変更などには行われていない。
- 広州にあるR&Dセンターの敷地面積は、北米にある日産R&Dセンターと同じくらいである。DNTCの中には、材料試験室、半消音試験室、底盤・排ガス実験室、エンジン実験室、電子・電装実験室、完成車テストラボなどが設置されている。
- 現在、東風日産乗用車技術センターと日産(中国)技術センターのスタッフはそれぞれ、204名と32名で近いうちに400名と50名までに増員する予定である。日産からの派遣者は、DNTCセンター長を含む17名である。全部課長以上のポストにある。東風自動車からの出向者は、副センター長を含む15名である。
- スタッフの流動性は4%で高くないが、新卒ほどやめていく。花都は広州市内から離れているので、優秀な人材が入りにくい悩みもある。また、スタッフの経験が浅く日本へ派遣できる人員もいない。OJTで人を育てている。
- 技術の流出について懸念はある。特に離職によるノウハウの流出はありうる。特に、上海GMの技術センター(独立法人で、GM70%出資)と違って、DNTCは50%ずつのJVであるので、日産の主導権にも限界がある。
- DNTCにリサーチRの内容はまだ考えていない。