中国における日系製造企業の経営活動の実態(2)
発行日 2006年11月2日
上席主任研究員 金 堅敏
品質・現地調達率
- 今回、訪問した4社はともに現地生産の品質問題はなかった。沿岸部では、30%と高い離職率を有するにもかかわらず、A社(北京)、C社(アモイ)では、品質問題は聞かれなかった。品質検査活動や新入社員に対する教育活動の強化でうまく対応している。
- 製品によって、各社の現地調達率はバラバラである。一番高いのは、100%内販のD社(成都)社の100%である。そのほかは、C社(アモイ)の30%、B社(成都)の10%~15%、A社(北京)の7%である。D社の原料はとうもろこし等の原料なので、すべて現地調達は可能であるが、自然環境のよい地域から調達しているので、輸送費がかかるという。そのほかの輸出企業3社の現地調達品は、非生産財や非重要生産材である。生産に必要な電子部品・素材は、現地調達が難しく海外からの調達しかない。また、現地調達を高める計画は3社とも計画はない。
- 部品・素材の調達は、A社(北京)とC社(アモイ)では日本から、B社(成都)は、グローバル市場から行っている。近年、部品・素材メーカーの対中進出(例えば、撒き線機メーカー)が見られるので、現地調達に切り替える可能性がでている。
人事・労務・反日感情など
- 従業員に占める大卒の割合は高くない。B社(成都)の30%がもっとも高い。その他は、C社(アモイ)の6.7%、D社(成都)の3%、A社(北京)の1.3%の順である。この比率は、ベトナムにある大手日系企業よりも低い水準にある。実際、各社とも短大や専門学校卒の人材を活用している。ワーカーはほとんど高卒である。
- A社(北京)、C社(アモイ)、D社(成都)の3社は進出して10年以上も経た。日本からの派遣者も次第に減らしている。中国で活動している欧米企業と比べれば、派遣者が多い。また、日本にいる華人系留学経験者があまり活用されていない。3社に対して、B社(成都)は、シンガポールにあるB社APからの投資形態をとっており、日本からは1人も派遣されておらず、華人系のシンガポール人2人とマレーシア人1人に経営を任せている。
- 従業員の給与水準では、各社の人事戦略などの事情で若干の差が見られる。全体的にC社(アモイ)の給与水準は低く設定されているように思われる。高卒(ワーカー)の初任給は90ドル~125ドルの間にあるが、ベトナムよりは50%~100%高くなっている。沿岸部にあるC社(アモイ)の水準は低いのに対して、内陸部にあるD社(成都)は高い。大卒では、190ドル~375ドルと幅が見られる。これは、専門分野の違いや地域の差によるものと考えられる。内陸部は沿岸部より低い傾向がはっきりしている。また、マネジャーでは、A社(北京)とB社(成都)は、1,000ドル以上でコア人材の確保に努めているように見られる。これに対して、C社(アモイ)とD社(成都)は、低めに設定されているので、コア人材の確保に苦労しているという。また、年7~10%の給与上昇率がある。
- 離職率は両極端である。沿岸部にあるA社(北京)、C社(アモイ)のワーカーの離職率は、30%と極めて高い。逆に内陸部にあるD社(成都)は0に近く極めて安定している。ワーカーレベルでは、専門知識への要求が低く、給与のレベルも低いので、離職の給与弾力性が高いと思われる。例えば、同じ工業団地にある欧米製造業(例:ABB社)は、C社(アモイ)より高いので、熟練工の欧米企業への流出が見られる。他方、大卒などのスタッフの離職率は、内陸部・沿岸部を問わず10%前後である。基本的に、各社の人材戦略は、コア人材の確保に力を入れていると感じる。
- 各社とも、経営活動の中で反日感情は感じていないという。また、各社とも日本企業よりもグローバル企業としてのイメージ向上に努めている。現地で従業員とのコミュニケーションが課題であるという話は聞かれない。メディアの報道と現場のギャップはベトナムとは正反対である。
技術流出の問題
- 各社は、知財問題や技術流出問題が起こっているかどうかを把握しきれていないかもしれないが、訪問した企業で技術の違法流出問題は聞かれない。
- 各社とも技術流出防止のための手段や体制が整備されている。例えば、技術や生産担当の責任者は日本人で固めること、技術情報へのアクセスを制限すること、合弁相手への技術開示をしないこと、本社からの技術移転を慎重に行うなどである。ただし、訪問した企業で、競業禁止規定を労働契約に盛り込でいる事例はあまり聞かれない。
販売
- A社(北京)、B社(成都)、C社(アモイ)の輸出企業は、基本的に生産に特化しており、中国市場を含む販売活動は販売会社によって行われている。ただし、FDK(アモイ)では、現地の日系企業向けに少量ではあるが、代行生産活動を展開し始めている。
- 内販型のD社(成都)では、ラージアカウント向けの直販と代理販売の2種類がある。ラージアカウントには売り掛けはあるが、その他は基本的に現金商売である。したがって、これまで、代金回収の問題はほとんどない。
