中国における日系製造企業の経営活動の実態(1)
発行日 2006年11月2日
上席主任研究員 金 堅敏
2006年10月13日~18日に中国の北京、成都、アモイで活動している日系製造企業4社を訪問し、その経営活動状況を調査した。その概要を纏める。
現地拠点の能力拡大
- 今回訪問した輸出型3社{A社(北京、IC製品)、B社(成都、半導体リード線等)、C社(アモイ、電源・ハイブリッドIC・ステッピングモーター等)}と内販型1社{D社(成都、アミノ酸等)}の中国での経営活動状況は図表が示しているとおりである。輸出型・内販型を問わず、いずれも拡張投資による生産能力の拡大を行っている。A社(北京)は、2003年~05年にかけて生産能力を倍の月産5,000万個まで引上げ、実際の生産個数は、2003年の2,000万個前後から04年8月の2,700万個まで拡大し、2006年8月は4,000万個に達した。2007年は月産5,000万個まで引上げる。日本国内生産の一部を北京拠点に集中させている。
- B社(成都)では、2006年に200万ドルの再投資を行い中国国内のIC後工程産業の成長に合わせて生産ラインの増設を行っている。D社(成都)では、資本金を3,539万米ドルから5,625万米ドルまで増資し、年間の生産能力を、1,500万トンから3,000万トンまで引上げる増産計画を実施している。C社(アモイ)では、液晶用のインバータの生産を日本からアモイに移す増産工事を行っている最中である。
経営の制度環境・インフラ環境
- 輸出型3社はともにEPE(輸出加工保税企業)として取り扱いされ、税関との間でEDIシステムが稼動している。ただし、いずれも税関手続きに課題があると回答している。北京では、規定・ルールの厳格な適用で融通が利かないこと、成都では手続きが煩雑さであること、アモイでは手続きが不透明であることが指摘された。
- 沿岸部に位置するA社(北京)とC社(アモイ)は、物流に問題はないが、内陸部に立地するB社(成都)では、部品・素材と製品はともに道路輸送に頼るため破損率が高く定時性にも問題がある。内陸の物流サービスレベルは沿岸部(例えば、蘇州)より悪いという。D社(成都)では、原材料の現地(四川省)調達が困難で中国の西北地方や東北地方から調達しているため高コストになるという問題がある。
- 各開発区に立地しているA社(北京)、B社(成都)、C社(アモイ)は停電による生産ストップ等の問題はなかった。しかし、開発区ではない地域に立地しているD社(成都)は、電力供給の問題に直面した。
日系製造企業4社の中国拠点の経営活動の現状
| 輸出型 | 内需型 | |||
| A社(北京) | B社(成都) | C社(アモイ) | D社(成都) | |
| 設立時期 | 1996年3月 | 1999年 | 1994年3月 | 1994年10月 |
| 資本関係 | JV⇒99%(日系) | 100% | 100% | JV(70日/30現地) |
| 従業員数(人) うち日本人 |
2,050(大卒1.3%) 12 |
270(大卒30%) 0(華人3名) |
2,236(大卒6.7%) 12 |
172+150(臨時工) (大卒3%) 4 |
| 製品 | IC製造(後工程) | 半導体リード線 | 電源、モーター等 | アミノ酸 |
| 現地調達率(%) | 7 | 10~15 | 30 | 100 |
| 高卒初任給 大卒初任給 マネジャー 給与上昇率(%) |
125ドル 200~375ドル 1,000ドル(35歳前後) 8 |
94ドル 190ドル 1,125ドル 10 |
90ドル 200~213ドル 288~378ドル 8~10 |
125ドル 190ドル 312ドル 7 |
| 離職率(%) | 10(技術者・管理職) 30(ワーカー) |
13 | 12(スタッフ) 30(ワーカー) |
0に近い |
| 技術流出 | ・特になし | 特になし | 特になし | 特になし 技術開示なし |
| 反日感情 | ・社内は特になし ・立地選択は経済合理性によるべき |
・特になし ・グローバル企業文化の推進 |
・特になし |
・特になし |
| 課題 | ・通関手続き等 | ・税関手続き ・物流問題 |
・税関手続き ・法律の不透明性 |
・資本関係の問題 ・原料調達の問題 ・停電等の問題 ・人材リクルート |
資本関係の見直し
- 中国では、技術流出や経営の主導権争いでJVの経営に支障をきたすケースが多かった。投資リスクヘッジの観点から合弁事業で始まったA社(北京)は、2006年半ばに合弁相手(民営企業)から出資分を買い取り、日本側99%の独資に近い資本関係にする資本戦略を実施した。新たな技術移転や新製品の投入等、経営の機動性が高まっている。
- 内販企業のD社(成都)は、独資化への戦略を実施していない。D社側が70%のマジョリティーを有しているとは言え、実施の経営活動を味の素側が握っていない。技術流出の懸念から中国側への技術開示をしていない。また、現地経営者は、新技術・新製品の導入を提案しているが、本社サイトは、慎重であるという。ほかの日系企業のようにJV解消は時間の問題であろう。
