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ベトナムにおける日系企業の経営活動の実態(2)

発行日 2006年10月6日

上席主任研究員 金 堅敏


人事・労務

  • 四社とも従業員のうち、大卒が10~15%(スタッフ)を占め、残りは高卒(ワーカー)であるB社、C社、D社の三社は進出して10年以上経ったので、日本人派遣者は十数名しかいないが、A社の派遣者は73名にも上った。実際、A社ではローカルマネジャーは昨年~今年にかけて3名しか昇進させておらず、「ヒト」の現地化が遅れているように思われる。その理由について、A社社長は「物作りの現場で任せられるローカルマネジャーは育てにくい」というベトナムの人材不足の現状を明かした。
  • 従業員の給与水準では、C社は他の三社より明らかに高い水準にある。特に高卒(ワーカー)の初任給は150米ドルで他社の60ドル前後の倍以上となっている。大卒では他社の200ドル前後と比べ、C社は、300ドルである。マネジャー(30歳前後)は、4社とも600ドル前後となる。また、年7~8%の給与上昇率がある。
    中国の名目給与水準(例えば、広東省の平均給与水準)と比べ、ワーカーレベルでは、20%~50%前後安い。ただし、マネジャーレベルでは、中国と同水準か中国より高い水準にある。
  • B社では、ワーカーからスタッフへの昇進は不可能であるが、A社やD社では、能力次第であり、ワーカーからスタッフへの昇進の道は開かれている。このように、人事制度に各社の差も見られる。
  • 生産現場では、一般的に従業員に昼ご飯を無料で提供している。ただし、D社は、従業員に食堂運営への注意を喚起するために食事代の半額は負担してもらっている。また、ベトナムでは、中国のように従業員に宿舎を提供する必要はないし、交通手段への配慮も必要はない。ただし、ホーチミンやハノイの市内に在住するスタッフに対しては、シャトルバスを提供する企業がほとんどである。
  • 離職率はまちまちであるが、B社のワーカーの離職率は15%前後と極めて高い。A社もかなり高いという結果である。外資企業、特に日系企業による対越進出が拡大するにつれ、ワーカーや技術者の奪い合いがすでに始まっている。特に、工業団地等日系企業が集中している地域では、従業員の高い離職率は経営に障害をもたらし始めている。にもかかわらず、現地では、人事・労務制度に人材を引き付けるインセンティブメカニズムがあまり取入れられていない。
  • また、ベトナムでは、退職金制度はないが、中国と違って3年以上の契約社員雇用はできなく、3年過ぎたら、永久雇用(正社員)にしなければならない法規制がある。
  • 「本音と建前が大きい」、「外国人はわかりづらい」とかベトナム人の持つ控え目のパーソナリティがどの企業でも聞かれる。現地従業員とのコミュニケーション問題は日系企業にとって大きな経営課題となろう。

販売

  • ベトナムでは、外資系企業は製品輸入販売の権限がないので現地生産の製品販売に限定される。家電分野では、欧米企業の進出がないのでC社の競争相手は、韓国系サムソン電子とLG電子である。中国製品からの競争圧力はまだそれほど深刻ではない。
  • 二輪車では、中国系の追い上げが大きなプレシャーとなっている。四輪では、欧米を含め外資12社が参入しており、生産能力は15万台あり、4万台市場をめぐって熾烈な競争を展開している。
  • ベトナムの流通業が遅れているので、内販型であるC社とD社とも自社製品専売店網を全国に巡らせている。
  • ベトナムでは、現金商売が基本なので、代金回収の問題は深刻となっていない。

技術流出問題

  • 地場企業による模造品生産能力が中国ほどではないが、シンガポール系の企業や米系ベトナム人が経営する企業はB社からグループごとに人材をスカウトし、「ミニB社」とも言えるB社同様の製品を生産しているという。また、D社では、四輪車生産ライン建設中に写真が取られ、インタネットで流された出来事があった。
  • しかし、訪問した企業で技術流出防止のための手段や体制の整備はあまり聞かれなかった。例えば、競業禁止規定を労働契約に盛り込でいる事例はあまり聞かれない。
  • かつて、ベトナムでは中国からの模造品流入が深刻な問題となったが、中国とベトナムの両政府の取締強化により沈静化したという。