中国のBPO産業育成戦略と西安市の取組み
発行日 2006年8月18日
上席主任研究員 金 堅敏
動き出した中国のBPO産業育成戦略
- 中国は、「世界の工場」に満足せず、産業構造と輸出構造の多様化と高度化を図り「世界のオフィス」を目指している。そのために、サービスアウトソーシング(ITOとBPOを含む)産業の発展に大いに期待している。
- 2004年初に中国は、ソフトの「世界工場」を目指し、北京、上海、大連、深せん、西安、天津の6ヵ所に「国家ソフト輸出基地」を設置し、ITO産業の育成に取り組んでいる。
また、2003年から中国政府主催の「中国国際ソフトと情報サービス交易会」(ITOフォーラム)を大連で毎年開催し、ITO事業の拡大を狙っている。 - BPO産業育成政策は数年遅れたが、今年に入ってから力を入れ始めている。2006年6月に中国商務省高官は、「サービス貿易の発展に力を入れ、外国企業から業務アウトソーシングを積極的受注する方針を決め、「1110プロジェクト」を立ち上げるBPO産業育成政策を表明した。その内容は、今後3~5年以内に商務省は毎年1億元以上の資金を支出し、5つの都市をモデル都市に指定し、10の業務受託基地を建設し、「フォーチュン500」企業100社から業務のアウトソーシングを受注し、そのため国内に1,000社の大型国際業務受託企業を育成する計画である。
- 今年6月に入ってから商務省はすでに、5つのBPOモデル都市の選定やBPO産業育成政策の制定作業に入った。沿岸部に位置する大連はすでに選ばれているが、内陸部の成都市と西安市から一つのモデル都市を指定する予定であるが、熾烈な誘致競争が繰り広げられている中で、西安市の優位性が伝えられている。
西安市の取組み
- 実際、西安市は、人材集中の優位性を活かして北京、上海、大連とともに「国家級ソフト産業基地」と「国家級ソフト輸出基地」という二つの基地を同時に兼ねた4つの都市のひとつである。2001年ごろから対日本アウトソーシング受託を中心にITO事業に取り組んできている。現在、日系独資企業15社を含めむ対日ITO受託を展開している企業は25社に達している。
- また、西安は米国のIntel、SPSS、Sybase、Reynolds & Reynolds、Application Materials、Thought Works、Inter Video、ドイツのInfineon、カナダのNortel、スペインのCaro Technologyなどの欧米系ソフト会社や台湾系の力新国際、台湾経茂、研華科技、凌安電脳、無敵科技及び華為、ZTE、用友などの国内有力ソフトベンダーを誘致することに成功している。
- 2004年ごろから西安市は、人的資源の素質、コスト、安定性などの優位性を活かすべく、BPO受託産業の育成に取り組み始めた。手始めに中国政府商務省を巻き込んで2004年から「中国西安国際BPOフォーラム」を年一回開催し、西安をBPOの受託拠点として売り込んでいる。また、商務省によるBPO受託モデル都市の指定を受けるために働きかけを強めている。
- 2005年には米系のGE、IBM、インド系のStyam、欧州系のBPO受託大手Copgeminiなどの国際有力企業が西安でのBPO拠点設置の準備段階に入ったと伝えられている。
しかし、現地でBPO業務を展開するには、BPO業務に関する中国政府の政策の曖昧さ、知的財産権保護の問題、地場企業のBPOに関するノウハウの欠如、語学の能力などの課題が多国籍企業から指摘されている。
BPO受託事業のケース
- 現在、西安市には、すでに約30社の企業がなんらかの形でBPO受託業務を展開していると言われている。中でも、CompuPacific(西安)は、中国における代表的なBPO受託ベンダーであり、自称“The Premier BPO Provider in China”である。確かに、英誌EconomistもインドのBPO産業にとって脅威であると賞賛している。
- CompuPacific(西安)は、ビジネスの95%は米国、5%はオーストラリアから受注している。その内容は、自動車ローン申請書の入力や生命保険会社のデータ入力などである。米国等の営業は米系ユダヤ人が行っているが、米系中国人が西安のBPO拠点の運営管理を担当している。コストは米国の1/10と安い。
- スタッフ約500人のうち、博士3名と修士16名が在籍しており、12名は海外留学経験者(米6名、オーストラリア1名、欧州5名)がいる。56%前後のスタッフは大学や短大出身(月給1,200元)で、40%前後は高校出身者(月給800~900元)である。現地採用のスタッフは、短期の語学研修やBPO関連の研修だけで仕事に就かせている。
- 現在、CompuPacific(西安)の業務は、データ入力や整理などの労働集約的な作業しか行っておらず、データの分析や提案型のBPOはまだ展開されていない。
