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ベトナムの外資直接投資の動向

発行日 2006年6月23日

上席主任研究員 金 堅敏


新たな投資先として台頭するベトナム

  • ベトナムへの外国直接投資は、1997年をピークに、第一次ブームが収束し減少を続けた。2002年は97年の半分以下の12億ドル(実行ベース)にまで落ち込んだ。その後は回復を見せ、2005年は105%増の33億ドルとなっている。国民一人当たりの投資額は、230ドル(2003年末ストック)で中国の390ドルには及ばないが、フローベースでの40ドル/1人当り(2005年)は、中国の46ドルとほぼ同じレベルになってきている。ベトナムはすでに東アジアにおける有力な投資先として台頭してきている
  • 持続的な経済成長、政治・社会の安定性、勤勉・低廉な労働力、中国とアセアンの架け橋という地理的な優位性などが、外国直接投資、特に東アジアからの投資を引き付けている。日系企業にとって、一党独裁ではあるが反日感情のないベトナムは、インドと同じように心理的な抵抗が少ないといおう優位性も有する。

外国投資の地域別構造と業種構造

  • 中国における欧米企業のプレゼンスが高い状況とは異なり、ベトナムへの外国直接投資は東アジア主導の構造になっている。1988年~2005年までの新規投資認可のストックベースの投資額トップ10は、(1)台湾(構成比15.2%)、(2)シンガポール(同15.0%)、(3)日本(同12.3%)、(4)韓国(同10.5%)、(5)香港(同7.3%)、(6)フランス(同4.3%)、(7)オランダ(同3.9%)、(8)マレーシア(同3.1%)、(9)米国(同2.9%)、(10)タイ(同2.9%)となっている。トップ10の投資額は全体の80%弱を占めている。
  • 近年、製造業に優位性のある日本や韓国のプレゼンスが年々高まってきている。例えば、2005年の新規認可ベース投資額順は、(1)韓国(構成比13.9%)、(2)日本(同10.2%)、(3)香港(同9.6%)、(4)台湾8.6%となっている。
  • 全体として、欧米企業はインフラ・資源開発やサービス産業等の内需型産業に投資する傾向にあるが、東アジア諸国・地域の投資は、アパレル、刃物、電機などの輸出型に偏っている。
  • 1988年~2005年累計の新規認可業種別投資では、(1)製造業(構成比43.1%)、(2)サービス業(同26.9%)、(3)農林水産業(同11.1%)の順である。中国の直接投資においては、製造業が64%、農林水産業が2%であるのに対し、対ベトナム外国直接投資では、逆に製造業は少ないが、農林水産への投資比率は高い。
  • 製造業への対外投資の多い日本、韓国、台湾企業による対ベトナム投資の加速により、近年製造業のウェイトは55%前後にまで高まってきている。
  • これまでの大型投資案件は以下のとおりで、サービス業から製造業へシフトする傾向が見られる。
(1)南タンロン都市開発 投資額 21.1億ドル シンガポール企業 1988年
(2)ギソン・セメント 投資額 6.2億ドル 日本企業 1995年
(3)ナム・コン・コンガスPL 投資額 5.8億ドル 英国企業 2000年
(4)ハチソン・CDMAモバイルサービス 投資額 6.5億ドル 香港企業 2005年
(5)クアン・ジン・ステンレス 投資額 7.0億ドル 台湾企業 2005年
(6)インテル・IC後工程 投資額 6.0億ドル 米系企業 2006年
(7)鉄鋼工場 投資額 10.0億ドル 台湾系企業 2006年

日系企業の動向

  • 2002年までは、日系企業による対ベトナム投資の目的は主に輸入代替・国内市場開拓のものが多く、かつ合弁企業が多かった。例えば、トヨタ、スズキなどの自動車メーカー、ホンダ・ヤマハ・スズキなどのオートバイメーカー、太平洋セメント・三菱マテリア、日本ガラス、共英製鋼などの素材メーカー、味の素等の食品メーカーの生産拠点となってきた。
  • 購買力や市場規模の限界(例えば、2005年ベトナムの自動車市場は6万台前後しかなかった)から、2002年以降は輸出志向の投資が増えており、かつ100%資本の独資企業が多い。また、日系企業にはチャイナリスクの回避を目指して、ベトナムを輸出拠点として利用する考え方もある。キャノン(プリンター)、富士通(プリント基板など)、デンソー、マブチモーター、テルモ、TOAなどが上げられる。特に、キャノンは2006年2月にベトナムに新工場を建設し、ベトナムを家庭用プリンターのグローバル生産拠点にする戦略を見せている。
  • 最近では、ベトナムをソフトのオフショア開発拠点として期待する日系企業も増えてきている。富士通などの先行組に続き、2006年上期には日本ユニシス、TIS、NECソフト、アルゴ21、ネクストウエアなどが相次いで現地開発拠点を立ち上げた。
  • ただし、日系企業の大量進出は元々存在している人材(中間管理職や技術者)不足問題がさらに深刻化することになりかねない。日系企業は、インフラ不十分、原材料・部品調達難、人材不足、日本出向社員のコスト高などの「ベトナムリスク」も十分に吟味し、立地選択を行うべきである。