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日系企業の対中投資戦略—現地法人社長の条件

発行日 2006年6月9日

上席主任研究員 柯 隆


日本企業の対中直接投資は、80年代の望郷投資、90年代の輸出拠点確保の後、2001年の中国のWTO加盟以降、中国市場を狙う本格的な投資となってきている。これまで、中国での投資の成功と失敗を巡り、投資環境に関する検証が多かったが、日系企業自身の投資戦略の誤りに対する反省は十分に行われてこなかった。すなわち、中国での法律の未整備や政府による突然な政策変更などについて多くの指摘がなされているが、日系企業がどのように対応してきたかについては十分に検討されていない。

高品質への過信は経営の失敗をもたらす

  • 長い間、日本企業は、中国を含むアジア投資について、高い品質を誇る日本製品を信じて、営業活動の強化を十分に行ってこなかった。ここでの問題は、高い品質への過信がむしろ投資を失敗させていることにある。供給過剰の経済において良いものは必ずしも売れない。
  • 欧米系企業、華人系企業、韓国系企業と比較して、日系企業には弱点がある。確かに、日本製品の品質はよく、中国でのブランドイメージも優れている。しかし、携帯電話など多くの製品をみると、必ずしも最大のマーケットシェアを取れていない。一流の品質を誇る製品が最大のマーケットシェアを取れないというのは、明らかにマーケッティン グ戦略の失敗といえる。
  • 中国経済は年平均10%近い成長を続けている。単純に考えれば、中国市場も毎年10%ずつ拡大していると考えられる。その中で、日本企業のマーケットシェアはむしろ相対的に縮小している。最近行った調査では、日本企業が市場を開拓する努力を怠っていることが明らかになった。たとえば、製薬会社の多くは現地のパートナー会社(国有企業)に薬を下ろすだけで、それ以外の営業活動はほとんど行なっていない。
  • 同じ投資環境のなかで、欧米系企業と韓国系企業がマーケットシェアを伸ばしているのに対して、日系企業だけが下り坂を辿っている現実を考えれば、それは単なる投資環境の問題だけでなく、投資戦略そのものを見直して再構築しなければならない段階に来ているといえる。

中国投資が成功しない原因

  • 例えば、広告戦略や営業戦略などセールスに十分に力を入れてこなかったことが指摘できる。また、販売チャネルの開拓も不十分である。もっともよく指摘される点として経営の現地化戦略が実施されていないという点がある。どこに問題があるのかを根本的に解明しなければならない。
  • 第1に、日本企業にとって中国ビジネスの重要度が低かったため、社内の最優秀の人材は欧米に配置し、一流の人材は中国ビジネスに配置してこなかった経緯がある。2001年以降、中国市場を狙う投資が増えるにつれ、ようやく中国市場の重要度が認識されるようになった。
  • 第2に、ことばができるかどうかを条件に人材の選別が行われているが、重要なのは、経営ができるかどうかである。いわば、中国ビジネスの人事管理面における勘違いがあった。
  • 第3に、やる気も能力もない「人材」を配置するケースが多い。競争相手の諸外国企業に比べ、日本人の現地法人社長は経営よりも、本社幹部の来訪を接待するのが主な仕事になっている。
  • 総じていえば、日系企業の中国ビジネスが成功しないのは、中国の投資環境ではない。これは諸外国企業にとって同じ所与の条件であり、むしろ、自らの競争力をいかに強化するかを考えなければならない。そうでなければ、単なる経営失敗の口実にしかならない。
  • では、どのような人材が中国現法の社長に適するのだろうか。
  • 結論を先取りすれば、平凡なサラリーマンタイプの人間は適任ではない。野性的でファイトある性格の持ち主でないと戦えない。往々にして平凡なサラリーマンタイプの人間は本社のイエスマンであり、本社からみて可愛いかもしれないが、業績を上げることはできない。実は、適任かどうかのもっとも簡単な検証方法は、料理にうるさいかどうかをみればよい。面倒くさがりやで出された料理を、まずくても文句も言わずに食べるのは、現地法人の社長にまず向かないだろう。要するに、面倒くさがりやは中国人社員を「料理」できず、ビジネスは成功しないということである。