対中オフショア開発成功事例:日系A社
発行日 2005年5月20日
主任研究員 金 堅敏
2005年4月25日北京にある「日系A社」を訪問し、その日系本社の対中オフショア開発実態について、A社総経理、にヒアリングした。その内容を纏めると以下のとおりである。
A社の概要
- 1994年6月、日系本社は、中国科学技術研究の名門である中国科学院軟件研究所とソフトオフショア開発を目的とする合弁会社A社(出資比率:日系90%、中国科学院10%)を設立した。「中国科学院」の有するブランド力と豊富な人材を活用したい日系本社の戦略と、国立研究所の民営化を図る中国科学院の思惑とが一致した結果である。
- A社は、北京本社(340名)に続き、開発センターとして01年に西安支社(101名)、03年に上海支社(56名)をそれぞれ設立して、三拠点を合わせ500名体制で、基盤ソフト・ミドルウエア(業務の90%)、業務パッケージ・応用ソフト(同10%)を受注開発している。将来は、(1)基盤ソフト・ミドルウエア、(2)業種パッケージ、(3)組込みソフトの3本柱による受託領域の拡大と、ソフトウエア販売、サポート事業の拡大を計画している。
- 現在、A社の主要な受注先は、本社コンピューターソフトウエア事業本部(基盤ソフト)とシステムソフトウエア事業本部(ミドルウエア)となっているが、本社関連企業や関係企業への拡大を図っている。
- 2004年の実績は、17.6億円で10年間に60倍以上の事業規模拡大を達成した。2008年までには、1,000名~1,500名までに増員し、オフショア発注率(オフショア工数対本社開発工数)を現在の10%前後から25%前後に拡大していく計画である。
- 本社からの派遣は、北京本社4名(総経理、開発本部長、経営企画部長、財務部長)と西安2名(総経理、開発部長)の6名である。
- 2005年3月に、A社(北京本社、西安・上海開発センターを含む)はCMMI5レベルに達しその認定を受けた(認定受けるための予算は3,000万円を計上したが、実際は2,000万円前後であった。また、北京市政府から約600万円の補助金を受けた)。本体では、システムソフトウエア事業本部が03年3月に、コンピューターソフトウエア事業本部が05年1月にそれぞれCMMI5に達成したので、CMM5レベルに基づくソフト開発の基盤ができた。
- 本社は、A社の開発能力を評価し、現在インド(Wipro社)に発注しているミドルウエア開発業務を中国(A社)へシフトしはじめている。インドでは、開発人員の離職率が高いので、品質はよいが納期が守らないという。
- A社とは別に、本社系の本社ソリューションズも北京、上海、大連に拠点を持ち、合計300名体制で受注ソフトのオフショア開発を行っている。
A社の経営活動状況
- 受注内容は、基本設計、PG、テスト、システムテストであるが、上流作業は、日本へ出張して行っている。ブリッジSEはいない。本社からは、口頭で仕様変更を指示するが、現地では仕様変更書を作成して、発注元に確認している。仕様変更に伴う予算追加はケースバイケースである。
- 受注開発業務は、ほとんど社内で行っており、中国国内企業への再発注はあまりしていないが、合弁パートナーである中国科学院ソフト開発センターから約30名のオンサイト開発者を迎え入れている。
- 受注は、プロジェクトごとに契約するが、単価は固定である。現在の受注単価は、2,500ドル/人月である。望月総経理就任以前は28万円/人月であったが、現地拠点が為替リスクを負うべきではないと判断し、本社に働きかけドルベースに改めたという。現在は、人民元の切上げを睨みながら単価改定を提案しようとしている。長期派遣者の費用は現地拠点負担になっているので、本社との条件闘争が毎日のように行われているという。
- A社は、2年目から黒字を計上しており、現在4億円の累積利益が社内に残っている。NEC本社サイトのオフショアによるコストダウンは50%前後あり、オフショア開発の効果は大きい。
- 新人教育については、経済産業省の所管団体であるAOTS(海外技術者研修協会)の助成で6ヵ月間の本社における研修を実施している。
- 今後の課題は、(1)離職率(現在は7%前後)を低下させること、(2)教育を徹底すること(現在新卒採用80%、中途採用20%)である。
