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中国の反日デモと日系企業の対応

発行日 2005年4月22日

上席主任研究員 朱 炎


中国では、3月末以降、日本の国連常任理事国入りに対する反対、日本の歴史認識に対する抗議のデモが中国の主要都市で広がっている。デモにより、一部の日系小売店と日本料理店が投石などの破壊活動で被害を受けた。また、日本商品への不買運動を呼び掛ける動きもある。

4月下旬現在、反日デモはすでに沈静化の方向に向かっている。今後、散発的なデモが発生したとしても、破壊活動については中国政府によって厳しく抑えられるであろう。ただ、デモと反日感情による経済、在中国日系企業への影響が懸念されている。

日系企業への影響

  • デモによる破壊活動からの被害は、一部の都市における一部の小売店と日本料理店に限り、地方政府によるある程度の補償が見込まれる。日系企業の事務所と生産工場は影響をほとんど受けていない。
  • 不買運動による影響については、日本製品(現地生産も含む)のなかの最終消費財、消費者を相手とするサービス業に集中している。デモが収束しても、反日感情が簡単に収まらないため、日系企業の売上げの伸び悩むが数週間続く可能性がある。
  • 一方、日本の対中輸出、中国での現地生産と現地販売の大部分は、部品、中間財および素材であり、しかも中国で生産できないものが多く、中国企業との差別化が図られている。企業を顧客とするため、不買運動による影響は軽微であろう。
  • 日中間の経済関係は、相互依存が深まり分業関係も進んでいる。例えば、中国製のパソコンと携帯電話には日本製の半導体チップを使っており、中国製の自動車も日本のエンジンを搭載している。日本商品が中国の人々の生活に浸透している。加えて、中国はすでにWTOに加盟し、経済のグローバル化も進んでいる。反日デモと不買運動が日中経済関係にダメージを与えれば、中国経済自身も損害を被ることになる。中国政府と中国企業も動き出し、反日デモによる経済への被害を最小限に防ぐよう働きかけるであろう。したがって、全体でみれば、日中経済関係、そして日系企業の中国での経営に与える影響は限定的であるといえよう。

日系企業の対策

  • 日中関係の改善は、両国政府双方の努力に依存するが、中国における日系企業としては、嵐の過ぎ去りをじっと待つだけではなく、反日デモをきっかけに、こうした突発事件への対応策や自己防衛策を講じる必要がある。
  • 第1に、正しい情報を発信することが必要である。例えば、今回の不買運動の発端の一つは、中国で流れた「一部の日本企業は中国が批判する歴史教科書の作成に財政支援をした」という情報である。日系企業はこうした事実がないと確認したうえ、誤った情報に対しては、直ちに説明し、正し情報を中国国内で発信する必要がある。
  • 第2に、中国の経済発展に対する日本企業の貢献を宣伝することである。中国の経済発展に寄与できるという経済面の活動だけではなく、中国での社会貢献もアピールすべきである。
  • 第3に、抱えている問題点を直ちに解決することである。例えば、従業員との賃金交渉、作業環境の改善など、火種になりかねない問題を直ちに処理し、紛争を未然に防がなければならない。実際、最近日系企業の生産工場で起きた紛争は、反日運動というよりも、いずれも未解決の労使紛争が起因となり、デモによって増幅されたものである。
  • 第4に、中国の人々に親しみのある企業イメージを作ることである。現地化を進展させ、経営幹部に中国人スタッフを積極的に登用し、中国の企業とのアライアンスを強化し、それを宣伝することが重要である。
  • 第5に、インターネットの中国語サイトを活用することである。反日デモや不買運動の参加者は、おもにインターネット世代といわれる若年層であり、反日運動の呼びかけもネット上で伝わった。日系企業は中国語サイトを作成し、情報発信に活用すべきである。

日中経済関係は今後も発展する

  • 一方、中国経済は日本の経済成長の促進要因にもなっている。反日運動が発生しても、中国経済の高成長、市場の拡大、安い生産コストなどの条件は変らない。実際、今年の第1四半期、中国の経済成長は9.5%にも達した。日本にとっては、巨大な中国市場は依然として重要であり、日本企業は中国市場を簡単に放棄するわけにはいかない。一方、中国にとっても日本の技術、資金を引き続き必要とする。今度の事件が沈静化すれば、日中間の経済関係は引き続き発展できるし、相互依存関係はさらに深まることになろう。