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大連市オフショア業務の事業環境

発行日 2005年1月14日

主任研究員 金 堅敏


政策環境

  • 大連市政府は、国のソフト産業優遇政策のほかに独自の政策支援を行っている。これらのサポート政策は、内外資企業を問わず適用される。ソフト産業における政府の役割について、大連市情報産業局の政策担当者は、「中国では、米国等の先進国ほどベンチャーキャピタル等の民間サポートシステムが形成されておらず、大連市がその代わりの役割を果たしている。特に、ソフト企業のセットアップ段階ではこのような政府支援は重要である」と説明している。
  • 2003年に市政府は、1,500万元を拠出して「ソフト産業特定プロジェクト発展基金」を設立した。ソフト製品の開発、市場開拓、輸出拡大、人材の育成と人材の獲得等のために、03年中に60社合計約70のプロジェクトに資金助成を行った。支援の方式には補助金、利子の補助、奨励などがある。
  • グローバルスタンダードを導入してソフト企業のレベルアップを図るため、ISO9000やオフショア業務に重要なCMM(能力成熟モデル)の取得を奨励する。CMM認証取得に必要な費用の40%~50%を補助する。また、市情報産業局は、多数の市内ソフト企業を組織してCMM認証取得のためのコンサルティング、人材トレーニング、評価作業等の集団サポートもしている。現在、大連市にはCMM5の認証を取得した企業4社、CMM3企業14社がある。また、市レベルのシステムインテグレーション資格認定をもサポート・奨励している。
  • ソフト開発人材を引き付けるために、開発要因に対する個人向けの所得税補填をも行っている。この補填政策は、大連市に勤めている外国のソフト開発者も適用される。
  • 政府主導の「国際ソフトウエア・情報サービス製品交易会」の第一回が、2003年9月に開催された。

企業の経営環境

  • 2003年末現在、大連市のソフト関連企業は358社あり、うち外資系企業は90社が進出している。ソフト輸出を行っている企業は、100社あまり、そのほとんどは、対日オフショアを行っている。しかし、大連市における対日ソフト輸出の総額のうち、上位10社が約85%を占めており、その他は小さい規模に止まっている。
  • ソフト開発要員は新卒採用者が多く、会社と3年~5年の労働契約を結ぶ。対日オフショア開発企業は日本の企業文化や開発習慣を必要とするので、中途採用は一般に行わない。
  • 労働契約のほかに機密保持契約も結ぶのが一般的である。過日訪問した企業は、機密管理を徹底しており、入社・退社のときも指紋識別等の対策をとっている。
  • 給与体系にバラツキがある。一般的に、新卒1年目2,000元/月、2年目3,000元~4,000元/月、3年目は4,000~6,000元、SEは5,000元以上である。大連では、日本語ができる対日オフショア開発SEが不足しているので、給料の水準は人材を引き付ける重要な手段になっている。企業によっては擬似ストックオプションを実施しているところもある。
  • コールセンターの給料体系は、新規設立時4,000元~8,000元/月、その後はだんだん安くなる。例えば、デルでは最初は7,000元/月、現在は3,000元/月となった。開業を控えるHPは8,000元/月である。スタッフの半分ぐらいは日本人である。GE、デル、HP等の米系企業による対日コールセンターが多数設立されており、オペレーターの奪い合いが問題になっている。
  • 対日オフショア開発企業では、従業員の離職率は5%前後で必ずしも高くはない。契約には、違約金設定やデポジット等の手法により、従業員ジョブホッピング対策を取っている。ただし、会社を辞めて日本に行く人がほとんどであるので、違約金制度の効果はあまりない。

ソフト人材インフラ

  • 大連市のソフト産業従業員は1.54万人程度であるが、うち、ソフトウエア技術者は1.23万人(大学卒以上が70%以上)で全体の80%を占める。大連市だけで毎年8,000人のソフト人材が不足すると推定されている。実際、GE、IBM、ソニー、松下等の多国籍企業や、華信、海輝、中軟等の地場大手のように、対日オフショア開発を行っている企業では、日本語に精通するIT人材が不足している。
  • 大連市の各種IT教育・トレーニング機関は240余ある。内訳を見ると、学術・研究向けの計算機学部(例えば大連理工大学計算機学部、在校生600人)、ソフトエンジニアリング向けのソフト学院(例えば、理工大学ソフト学院、在校生2,500人)、民間ソフト教育専門学校(例えば、東軟情報技術学院、在校生7,000人)、各種の民間トレーニングセンターがある。2003年は、各種IT教育機関で約3万人に対して教育を行った。
  • 2003年に東芝と東軟、日立と華信は、それぞれIT技術教育拠点を設立した。「大連理工大学ソフト学院」も日米欧のIT教育機関と提携の交渉を行っている。