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上海市における対日オフショア開発企業の活動

発行日 2005年1月7日

主任研究員 金 堅敏


2004年12月20日~21日に上海市における対日オフシェア開発を行っている企業(日系3社、香港系1社、地場系2社を合わせて6社)を訪問した。その活動状況をまとめると以下のとおりである。

対日オフシェア開発の歴史は浅い

  • 10年以上経過したA社を除いて、B社を含む他の5社の対日オフシェア開発経験は5年に満たない。
  • 全体的に15年以上の対日オフシェア開発の歴史を有する大連市と比べ、上海市企業の取組みは5年前ごろからである。実際、過日のヒアリングで対応してくれた会社経営者や開発担当者の日本語能力も、大連と比べ劣っていることが実感した。
  • ソフト開発成熟能力認定CMM5を取得した4社を有する大連市と比べ、上海市にはCMM5を取得した企業は1社もなかったが、中国全体のソフト輸出額に占める割合では、上海の13.3%に対して大連は5.7%でしかない。上海市の対外オフシェア開発のすそ野は広いと言える。

中国市場や欧米企業開拓を兼ねたオフシェア開発

  • ヒアリングを通じて、中国最大の経済都市である上海に立地するソフト開発企業は、大連のソフト企業と違って、日系企業を含め対日オフシェア開発に特化することなく、中国国内市場開拓或いは欧米市場進出も兼ねている。
  • 例えば、A社、C社は、日本からのオフシェア開発受注を行いながら、中国国内市場開拓(ソフト開発と情報サービスを含む)をも手掛けている。地場企業SUNYARDや香港系企業上海ePROも、中国国内市場開拓や欧米・台湾、東南アジア市場進出を展開している。
  • 大連市の対日オフシェア開発企業では、COBOL言語の教育を行っているほど日本ユーザーへの対応に専念しているが、上海の企業では開発人員にCOBOL言語を教育している企業は見られず、世界の流行であるJAVAやC++等の教育に徹している。ちなみに、上海のソフト企業の離職率(10%以上)も大連企業(5%前後)より高い。
  • 上海を通じた世界市場への将来性を見込んで、大連の名門ソフト企業から上海への転職者が数多く見られるが、上海から大連への人材流動はまれである。上海の将来性にかける理由の一つは、もっぱら下流工程(労働集約工程)の受注を余儀なくされる対日オフシェア作業に安住せず、上流工程まで入り込める地場や欧米企業等(これらの企業からは一括発注が多い)からの発注プロジェクトに携わりたいことにある。
  • もちろん、上海市の給与レベルが高いのも理由の一つと言えよう。例えば、ヒアリングによると、大連市の給与水準(月給)は、2,000元(一年目)、3,000元~4,000元(2年目)、4,000元(3年目)、8,000元(PM)であるに対して、上海市は、それぞれ3,000元、4,000元、5,000元、10,000元である。給与水準と関連して、大連市企業の受注単価は、25万円/人・月であるのに対し、上海市では28~30万円/人・月(B社、A社では32万元/人・月と地場企業より高い単価)である。
  • 大連市企業の開発人員は、新規採用が多いのに対して、上海市企業では中途採用と新卒採用が半々である。ちなみに、新卒採用を好む日系企業(例:A社、B社)から中国系や欧米系企業への人材流出が多く見られる。新人教育に力を注ぐ日系企業と企業の利益追求に徹する地場や欧米企業の経営スタイルの違いが見られる。

対日オフシェア開発企業の新たな動き

  • 経営者の現地化が進んでいる。訪問した日系企業(A社、B社、C社など)の総経理(COO)はすべて、現地中国人か中国系であった。ただし、現地化した企業に対するガバナンスが課題となっている。
  • これに対して、中国企業には、対日営業担当の責任者や開発責任者(納期や品質管理など)が日本人であるところが多い。つまり、中国企業も日本人営業マンや開発担当者を雇用し始めている。中には、若いSEもいれば50代の元日本ソフトハウス経営者もいる。日本人営業マンや開発責任者の収入は、月給1~1.2万元(約13万円)と成果給からなる。
  • 日本企業の中国進出(特に上海地域)に伴い、現地日系企業からのアウトソーシング開発を含むITサービスが増えている中、ソフト開発企業と日系エンドユーザー企業との間に「ラボ契約」を結ぶことによって、ソフト開発企業に自社専用のソフト開発部隊を一定期間レンタルする日系企業が増えている。ソフト企業は、プロジェクトごとの契約ではなく年間契約なので経営の安定化が図られる一方、日系ユーザー企業は、自社開発拠点設立の投資リスクを回避しながら、自社専用の開発部隊を獲得できるメリットがある。