中国における多国籍企業のR&D活動
発行日 2005年10月14日
上席主任研究員 金 堅敏
研究開発投資が対中投資の重要な特徴となった
- 9月29日にUNCTADが発表した"World Investment Report 2005"によると、多国籍企業によるR&D活動は益々グローバル化され、R&D支出額の大きい企業を対象にした調査では、外国で実行されたR&Dの平均シェアは28%となった。今後5年間、海外で行うR&D活動のシェアは69%にも達するとしている。
- 今後における立地選択の魅力地域は、第一が中国61.8%で、続いて米国41.2%、インド29.4%、日本14.7%の順となっている。R&D活動の工程分解(モジュール化)やIT技術の普及により、研究開発活動は、水平分業だけでなく垂直分業も可能となったため、途上国への投資が増えてきている。
- 近年、研究開発機関の設立が、多国籍企業による対中投資の重要な特徴となってきている。中国商務省の統計によると、05年7月現在、外資企業によって設立されたR&Dセンター或いは研究開発拠点は、750ヵ所に達した。うち400社以上は2004年1月以降に設立されたものである。
- 中国における多国籍企業の研究開発活動は、中国の研究開発に大きく貢献している。03年にビジネス分野のR&D支出における外資子会社の寄与率は23.7%になった。ちなみにインドは3.4%である。
- 多国籍企業による対中R&D投資を加速している力としては、(1)拡大する市場と生産拠点、(2)理工系卒業者や研究開発要員の多さ(現在、中国の理工系大卒者は約100万人/年、R&D要員は日本より多い110万人いる)、(3)人件費の安さ、(4)政府の優遇政策、(5)WTO加盟で改善される知的財産権保護の方向性、等が上げられる。
中国における多国籍企業のR&D活動の実態
- 中国に対するR&D関連投資の多い国・地域は、米国(全体の約40%)、日本(同30%)、欧州(同23%)、その他(7%)である。分野では、情報通信、バイオ/製薬、化学原料/化学製品、交通輸送、食品・化粧品などに集中している。最近では、移動通信3G関連(例:ノキア、エリクソン、アルカテール、ルーセント、シーメンス、NEC等)、自動車関連(例:GE、日産、現代等)のR&Dセンターや医薬品関連(例:ファイザー、GSK、ロシュ等)の研究開発活動が注目されている。
- これまでは、現地市場開拓或いは現地資源利用を目的とする研究開発の拠点が多かった。しかし、近年では、グローバル研究開発機能を持つコーポレートレベル研究開発拠点の設置が増えてきている。例えば、GE(上海)R&Dセンター、デュポン(上海)R&Dセンター、マイクロソフトアジア研究院(上海)はコーポレートレベルの研究開発拠点であり、基礎研究を含めグローバル市場を満たす応用研究も行われている。韓国のサムソングループも中国を世界的なR&Dセンターとする戦略を明らかにしている。現在四つのR&Dセンター(北京通信研究所、蘇州半導体研究所、南京デジタル研究所、上海設計研究所)に、2000名のR&D要員が従事している。
- 外資企業のR&D施設の大部分は、人材の集中する北京や上海に立地しているが、最近では、生産拠点との一体性、人材の安定性や低コストなどの要因で天津、杭州、広州などの沿岸都市や、成都、重慶、西安などの内陸部にも展開されるようになっている。特に、内陸部の成都市には、モトローラ、アルカテール、ノキア、IBM、インテル等欧米通信大手のR&D拠点が集積しはじめている。
- 中国におけるR&D活動の方法としては、既存R&Dセンターへの研究開発費用の追加投資、R&D拠点の追加設立、新しいR&Dセンターの創設などのアプローチ方法がある。例えば、エリクソンでは過去5年間に平均30%増の研究開発費用を投入した。05年の予算は50%増である。ルーセントは、05年4月に南京にある3G研究所に8,000万ドルを追加投資し、投資額は2億ドルに達した。ノキアでは、これまで5ヵ所の研究開発センターを有しているが、中国の3Gサービスがまもなく開始されることを見込んで、05年8月に成都市に6ヵ所目の3G関連(IPM関連)の研究所を立ち上げた。アルカテールもノキアと同様成都市に新たにR&Dセンターを立ち上げた。NECは05年初に北京で3G研究開発センターを立ち上げた。また、NTTドコモやフランステレコンのように中国でサービス業務は展開されていないが、中国で研究活動を展開している企業もある。
- 知的財産権管理を強化するため、多国籍企業は100%自己資本のR&D投資を優先している。例えば、モトローラ中国研究院(投資額1.55億ドル)、ルーセント中国研究院(同2億ドル)、MS中国研究院(同8,000万ドル)、IBM中国研究院などは、100%自己資本のR&Dセンターである。ただし、研究プロジェクトベースでは、地場大学や国立研究所との共同研究を盛んに推進している。サムソン電子のように、中国科学院と4つのジョイントR&Dセンターを設立しているケースもある。
- 現地フィールド調査では、R&D関連における知的財産権侵害問題は確認されていない。