大連市のソフト産業と対日オフショア開発
発行日 2005年1月7日
主任研究員 金 堅敏
大連市のソフト産業及び輸出概況
- ソフト産業を含むIT産業は、造船業、石油産業、機械製造業とともに大連市の4大主要産業を形成している。また、大連市は、上海、深せん、天津、西安とともに中国政府が設置した「国家ソフトウエア製品輸出基地」の一つでもある。
- 2003年の大連のソフト産業規模は46.7億元(約650億円)で金額ではまだ小さいが、1998年以来、年平均50%以上の成長を達成し、2003年は99.6%の高い伸びを見せている。
- 中国の「バンガロール」を目指す大連市のソフト産業の輸出額は、1.13億ドルとまだ小さい。ソフト産業の輸出市場向けはまだ2割でしかない。これは、中国全体の輸出シェア10%より高いが、70%が海外市場向けのインドとは比較にならない。
- また、大連市のソフト輸出額は、全国のソフト輸出額(20億ドル)の5.7%で、深せん市の29.5%、上海市の13.3%、北京市の7%より少なく天津市と同レベルである。
- さらに、大連市の製品輸出総額(95.3億ドル:2003年)に占めるソフト輸出の割合は1.2%しかなく、インドのソフト輸出シェア22.3%に遥かに及ばない。ただし、そのシェアは急速に高まってきている。
- 大連市ソフト輸出のもう一つの特徴は、組込みソフトの輸出が、総輸出の48%以上を占めている点である。実際、組込みソフト売上高の36%が輸出向けで、製品輸出と一体化したソフト輸出の実態が伺える。
- 大連市ソフト業輸出の成長は、大連に進出した多国籍企業の対日ソフト開発やサービス業務の全面展開及び組込みソフトの輸出拡大によるところが大きい。日立造船、松下電器、ソニー、東芝、NEC、リコー、オムロンなどの大手日本企業だけでなくGE、デル、IBM、HP、アクセンチュア、エリクソン、ノキア、シーメンス等の欧米企業も、大連における対外ソフト開発やサービス業務を展開している。
- 中国全体のソフト輸出における日本向け輸出シェアは約60%だが、大連市は90%以上が日本向け(約110億円、うち組込みソフト約55億円:2003年)である。日本側から見ると、2003年のユーザー企業向け開発ソフトの輸入額のうち、中国からの輸入額は102億円である(JISA調査)ので、その半分の約55億円は大連市からであると推定される。したがって、日本市場は、大連市のソフト産業にとっての主要市場であり、大連市は日本にとってオフショア開発の重要な拠点である。
大連市対日ソフトオフシェア開発輸出企業
- 大連市の対日ソフトオフシェア開発輸出企業は、日系企業、中国系企業、欧米系企業の3本柱からなる。
- 日系企業には、日立、NECのようなITベンダーや系列ソフト企業が設立した開発拠点と、松下やオムロンのようなエンド製品企業が設立した開発拠点がある。中には、単独資本の拠点もあれば、中国資本との合弁開発もある。過日、訪問した「大連遠東計算機系統有限公司」は、富士通系の東和システムが60%の出資で設立したソフト開発子会社であるが、実際のソフト開発活動においては、これらの日系開発拠点から地場ソフトハウスに作業を再委託するとか、地場ソフトハウスから開発人員支援を受けているケースも多く見られる。これらの日系拠点は、日本本社の開発拠点として位置つけられる。
- 中国系企業には、「東軟」、「海輝」、「華信」、「現代」等ローカルISV大手(CMM5の認定を受けた企業など)や「遠東デジタル」、「博涵」等の国家重点ソフト企業等の純ローカル企業と、在日華人(留学生など)が設立した開発拠点がある。過日、訪問した「東軟」は従業員6,000名、売上高300億円(2003年度)の中国最大のソフト関連会社である。また、「遠東デジタル」は、従業員200名、売上高3億円で、対日ソフトオフショア開発に特化した有力地場ソフトハウスである。これらの企業は、日本企業からソフトオフショア開発を直接受注するのが特徴である。
また、「通華科技」、「大連日光」は、従業員58名と86名を有し、在日元中国人留学生が設立した対日ソフトオフショア開発に特化した中堅ソフトハウスである。かれらは、日本に営業拠点を設けているのが特徴である。 - 欧米系企業には、これらの日本子会社かアジア・パシフィック地域本部が大連で設立した対日オフショア業務拠点がほとんどである。例えば、IBM、アクセンチュアは日本子会社、GE、HPはアジア・パシフィック本部の主導で設立された拠点である。これらの拠点は、ソフトオフシェア開発、バックオフィス業務などのBPO、コールセンター等の機能をも備えているのが特徴である。例えば、HP大連拠点は、現在のところバックオフィスとコールセンターの機能を備えている。
