第5回 経済研究フォーラム
富士通総研経済研究所では、1999年4月21日(水曜日)経団連会館において、第5回フォーラム「昏迷からの脱却-金融・産業の新たなダイナミズム」を開催した。聴衆は279名を数え、盛況のうちに幕を閉じた。
まず当研究所福井理事長より、企業や金融機関がグローバル化、ストック経済、情報革命、少子・高齢化といった大きな潮流変化に乗り遅れたため、日本経済が昏迷を極めているのではないかという問題提起があった。これを受けて、長島、大石、田邊の3人は、危機の本質を過剰設備・過剰雇用ととらえ、企業が甘えを捨て自助努力するよう強調した。そして、自助努力を支援するために、雇用の流動化や新規創出、セーフティ・ネット、設備廃棄による欠損金の繰延べ期間延長や土地用途規制の緩和、企業の分割・再編を促す法制度の整備や収益性の高い事業に限定した債務株式化などを提言した。しかし、経済再生には後向きの発想だけでは不十分である。米山は、日本企業に組織構造(柔軟な企業間関係・雇用関係)および技術基盤(ものづくり技術のシステム化、自社技術の国際標準化)の両面から、戦略の再構築を求めた。とりわけ、日本経済では成長と研究開発の好循環が破綻の危機に瀕している。渡辺教授(東京工業大学)は、スピルオーバーした技術を同化する能力の再強化を通じて、R&D投資の収益率を改善するよう訴えた。研究開発支援も産業の特徴を踏まえて実施する必要があり、例えば湯川が取り上げたコンテンツ産業は、集積として発展する性質上、条件の整った都市を集中的に支援しなければならない。
効率性を求められているのは、民間企業だけではない。政府や自治体にも必要だ。岸によれば、発生主義会計をActivity-Based Costing、活動別予算、キャピタル・チャージとセットで導入すれば、効率的かつ効果的な行政運営実現に大きく貢献するという。
最後に、アジア経済の回復について、分析結果および対応策を提示した。危機が長期化した最大の原因は、日本と同じように企業の構造改革が遅れたことであり、このところ見られる底入れの兆候にもかかわらず、度を超した楽観論は禁物である(杉浦)。中山は過剰資本ストックの問題を掘下げ、過剰設備処理では自己責任を原則としつつ、対象企業を厳選して企業債務を救済するよう主張した。経済回復を支える要因として、中国人民元相場の安定が不可欠との認識に対し、金は現行為替管理制度の限界を指摘して、市場の外貨需給関係に基づく変動相場制への移行を提言した。
詳細
「昏迷からの脱却-金融・産業の新たなダイナミズム」
9時 受付開始
9時30分~9時35分 開会挨拶 社長 佐藤 至弘
9時35分~12時30分 午前のセッション
9時35分~10時20分 講演「昏迷からの脱却-金融・産業の新たなダイナミズム」 理事長 福井 俊彦
10時20分~12時30分 「日本経済再生へ課題」
10時20分~10時25分 (1)研究の枠組み 主任研究員 米山 秀隆
10時25分~10時50分 (2)過剰雇用・設備とリストラ効果 主任研究員 長島 直樹
10時50分~11時10分 (3)過剰設備調整の政策課題 研究員 大石 邦弘
11時10分~11時20分 休憩
11時20分~11時40分 (4)新たな競争力基盤の構築 主任研究員 米山 秀隆
11時40分~12時 (5)わが国の企業・銀行のバランスシートと「企業価値」創造経営 主席研究員 田邉 敏憲
12時~12時30分 質疑応答
12時30分~13時20分 昼食休憩
13時20分~17時 午後のセッション
13時20分~14時 講演 「技術メタボリズムの視点に立った技術経営戦略の構築」 東京工業大学教授 渡辺 千仭
14時~14時35分 「コンテンツ産業のクラスター型発展と政策対応」 研究員 湯川 抗
14時35分~15時10分 「公会計制度改革の方向性」 研究員 岸 道雄
15時10分~15時25分 休憩
15時25分~15時45分 「アジア経済の回復基調」 主任研究員 杉浦 恵志
15時45分~16時5分 「人民元相場のソフトランディング」 研究員 金 堅敏
16時5分~16時25分 「今後の東アジア」 主席研究員 中山 真一
16時25分~17時 質疑応答
17時~17時10分 閉会挨拶 会長 村岡 茂生
