第2回 経済研究フォーラム

1997年10月17日(金曜日)9時30分~17時10分、経団連会館におきまして、第2回FRI経済研究所フォーラム『産業経済社会のメガトレンド-情報化社会を展望して』が開催されました。
詳細

特別講演「情報化社会論と情報の経済学」
林 紘一郎 研究顧問(慶応義塾大学教授)
要旨:
現在は1970年頃および80年代中葉につぐ情報化社会論の3番目の高まりの時期だと言える。インターネットという新しい情報ネットワークを核として、現実の社会が情報社会へと変わっていることが実感できる。しかし、社会の動きを分析するツールである経済学の分野では、情報やネットワークというものの扱い方についてはまだコンセンサスができていない。情報というものはさまざまな局面で二面性を持っており、多くの現象と情報化との相関関係は比較的容易に観察できるが、その因果関係を説明するのは難しい。制度分析や複雑性の経済学などの新しい分析手法も活用しながら、情報の経済学という新しい分野を確立していく必要がある。(文責:富士通総研)

「情報化投資の生産性と組織アーキテクチャ」
浜屋 敏/松平ジョーダン 研究員
要旨:
「電子メールなどの新しい情報技術は企業の生産性向上に本当に貢献しているのか」。アメリカでは「ソローのパラドクス」として議論されてきたこの問題も、最近の研究では、アメリカ企業における「組織アーキテクチャ」の変更が鍵となってパラドクスは解決したという結論が多い。ところが、日本企業では、特にホワイトカラーの職場で情報化と組織アーキテクチャの調和がとれていない。日本におけるソローのパラドクスを解決するためには、積極的な情報技術の活用とともに、能力主義などの新しい組織アーキテクチャを採用することを検討しなければならない。
(注) 組織アーキテクチャに関する詳しい議論については浜屋研究員の研究レポートをご覧ください。

「日本製造業の国際ネットワーク再考」
栗原 潤 主任研究員
要旨:
「地球規模での大競争」即ちGlobalMega-competition時代を迎えている世界経済の中で、工業立国・貿易立国日本の製造業は、現状に満足することなく積極的に21世紀に向けた新たな「強み」即ちCorecompetenceを絶えず創出してゆく必要がある。日本の製造業は、生産拠点網こそアジアを中心に確立したといえる。が、「明日の競争力」を創出する研究開発分野に関しては、このままでは遅れを取りかねない。己を強みと相手の強みを活かしてポジティブ・サムの経済ゲームを発展させるには、日本の国際研究開発ネットワークの創出・再編が重要である。

「海外四カ国の公的セクター改革と日本への視点」
岸 道雄 研究員
要旨:
日本の橋本行革は、大きく分けると、(1)省庁再編、(2)内閣機能の強化、(3)独立行政法人の創設、の3点に集約されつつある。問題意識は、果たして、効率的で開かれた、質の高い行政サービスの実現に向けて望ましい方向へ進みつつあるのかである。そこで報告において、行革先進4カ国の行革の実態を紹介・分析するとともに、日本に欠けている視点、日本において有効であり、かつ参考にすべき「結果志向の行政管理システム」を提言した。

三好 俊夫 顧問(松下電工会長)
特別講演「情報社会の企業経営」
要旨:
情報・通信や金融部門を中心にアメリカがリードする形でいわゆる国際スタンダードへの収斂が進みつつあるなかで、日本ではとりわけ非貿易財部門においてこうした潮流に耐えうる経営システムの確立が求められている。企業経営はその国に固有な文化、風土に大きく規定されるため経営システムの再構築は容易ではないものの、今後、労働・資本市場の規制緩和に伴う経営環境の変化がIT技術を駆使した合理的な経営を促すと期待される。(文責:富士通総研)

「東南アジアの通貨危機と成長神話の終焉」
中山 真一 主席研究員
要旨:
東南アジアの経済成長神話は終った。技術・資本を外資のみに依存する成長は国際収支面で限界に達している。その一つの象徴が今回の通貨危機の発生である。今後は投資リスクの増大、投資環境の不安定化、労働供給の質及び量から低成長に移行しよう。時間は要するが教育の充実による労働力の質の向上、経済開放による国内産業の効率向上による生産性向上が持続的成長に不可欠である。タイの通貨危機は為替切下げが更に進む可能性があり、不良債権、対外ドル債務に対する救済が必要である。

「華人企業ネットワークの新展開」
朱 炎 主任研究員
要旨:
90年代に入って華人企業のパワーが増大、また華人企業ネットワークは大きく発展した。華人企業を取り巻く経営環境の変化や、華人企業の経営方法、ネットワークの拡大と機能強化などの要因が、その背景にある。日本はアジアにおける企業展開、また日本経済の活性化を図るために、華人企業と協力し、華人企業ネットワークを積極的に活用すべきである。

特別講演「ネットワークとニューエコノミー」
田中 直毅 氏(評論家)
要旨:
大転換の時代、日本には先行きの不安感ばかり先行している。日本経済には、ハイテク技術を始めとして蓄積されたノウハウが豊富にある。これらのノウハウを、十分に活用できるシステム作りが進めば、不安感は払拭される。例えば、ネットワークが広がれば、何でもできるという単純な発想からは脱却し、かえって個々の経営における絞り込みを進めなければならない。このような視角の移動が、日本においては現在のところ不十分である.(文責:富士通総研)
