第13回 経済研究フォーラム
富士通総研経済研究所では、4月8日(火曜日)経団連会館において第13回フォーラム「変革、内外の始動II」を開催した。聴衆は390を越え、盛況のうちに幕を閉じた。今回のフォーラムでは、7つのテーマによる研究報告と、中国社会科学院の王洛林副院長による特別講演を実施した。
午前のセッションで、新堂は、消費への資産と負債の影響につき、アンケート調査を中心に分析した結論を報告した。その結果によれば、1.資産効果と逆資産効果は対称的でなく、比例的でもない、2.住宅価値の変化が消費に影響を及ぼすとした人の割合は高くない、3.負債を持つ世帯の方が資産の変化に対しより敏感に消費を変化させる、4.負債残高が大きい家計は、所得の低下と所得見通しの悪化で消費を減少させている、ことが判明したと報告した。
続いて長島は、新堂の報告を受け、巨大な購買力を持つ「団塊の世代」に焦点を当てて、消費における供給要因と心理要因を探った。それによれば、1.団塊世代に関しては、教養・娯楽分野での供給要因が重要、2.?将来不安の内容は年齢階層別に特徴が異なる、3.将来不安と消費の関係は複線的、4.消費浮揚にはデフレ予想の払拭が必要??といった分析結果が得られると報告した。
米山は、政府債務の累増に歯止めがかからないが、これがどのような形で解消されるかについて、先進諸国の歴史的事例を検討することによって考察した。その結果、現在の日本は、過去において政府債務累増に歯止めをかけた三つの条件(市場の圧力、制度的制約、政治的対抗勢力)のいずれも機能しておらず、その克服には政府・国民一体となった危機感の共有しかないことを明らかにした。
午後のセッションにおいて、安部は、90年代後半から急増した企業研究開発の社外資源活用の実態と増加要因を産業別に分析した。その結果、社外活用の主目的は製品上市スピードの獲得と新たな技術獲得であり、その背景には、急変する顧客ニーズに素早く対応すること、特許保護された技術で製品差別化を行うことがあり、この要請が強い電機や機械産業でとくに活発化しているとした。
松山は、新しい医療統合事業体創造についての発表を行った。約7千億円の医療機器・医薬品の貿易赤字に象徴されるように、日本の医療産業の国際競争力は弱体であること、患者のアジア諸国への流出も始まっており、医療情報のデジタル化では韓国にも追い抜かれていることを指摘した。医療改革を日本経済再生のエンジンにするためには、網羅的な臨床プロトコル構築、混合診療解禁、共同事業による効率化等が不可欠であると提言した。
渡辺は、「デフレは供給サイドの要因で生じているか」という問いに答えるため、日本を含む6ヶ国の消費者物価データを吟味した。その結果、1990年代半ば以降、負の供給ショックが多くの国で生じており、これが日本を含む東アジア諸国のデフレの一因となっていること、また、各国の供給ショックは共通の要因により生じている可能性が高いことが確認できるとした。
柯は、中国の家計所得と消費構造について分析し、中国の所得格差は従来マクロ経済統計で捉えたものよりもさらに拡大しており、社会構造の多層化も急速に進み、下層と最下層の人数が増えていると報告した。これからの経済発展と社会安定を考えた場合、中間層の形成が必要であり、財政・税制改革を行い、所得格差拡大を是正する必要があると提言した。さらに、日系企業を中心とする外資系企業の対中直接投資について、マーケットターゲットを明確にすることが重要であると結論付けた。
最後に、特別講演において、中国社会科学院副院長の王洛林氏は、「中国のマクロ経済の動向と今後の展望」と題し、中国の成長を促す要因を詳細に分析し、今後の中国経済について、独自の見解も織り込みつつ、詳細かつ大局的視点から講演を行った。
(編集:吉田倫子)
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「変革、内外の始動?」

「消費における資産・逆資産効果」
上級研究員 新堂 精士
消費への資産と負債の影響について、アンケート調査を中心に分析した。その結果、1.資産効果と逆資産効果は対称的でなく、比例的でもない、2.住宅価値の変化が消費に影響を及ぼすとした人の割合は高くない、3.負債を持つ世帯の方が資産の変化に対しより敏感に消費を変化させる、4.負債残高が大きい家計は、所得の低下と所得見通しの悪化で消費を減少させている、ということが判明した。
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「団塊世代と個人消費」
主任研究員 長島 直樹
巨大な購買力を持つ「団塊の世代」に焦点を当てて、消費における供給要因と心理要因を探った。その結果、1.団塊世代に関しては、教養・娯楽分野での供給要因が重要、2.将来不安の内容は年齢階層別に特徴が異なる、3.将来不安と消費の関係は複線的、4.消費浮揚にはデフレ予想の払拭が必要??といった分析結果が得られた。
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「政府債務累増の帰結?歴史的考察」
主任研究員 米山 秀隆
政府債務の累増に歯止めがかからないが、これがどのような形で解消されるのか。先進諸国の歴史的事例を検討することによって考察する。現在の日本は、過去において政府債務累増に歯止めをかけた三つの条件(市場の圧力、制度的制約、政治的対抗勢力)のいずれも機能しておらず、その克服には政府・国民一体となった危機感の共有しかない。
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「企業研究開発の社外資源活用」
主席研究員 安部 忠彦
企業研究開発の社外資源活用は90年代後半から急増した。その実態と増加要因を産業別に分析する。社外活用の主目的は製品上市スピードの獲得と新たな技術獲得である。その背景には、急変する顧客ニーズに素早く対応すること、特許保護された技術で製品差別化を行うことがある。この要請が強い電機や機械産業でとくに活発化している。
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新しい医療統合事業体創造の課題
主席研究員 松山 幸弘
新しい医療統合事業体創造について、約7千億円の医療機器・医薬品の貿易赤字に象徴されるように、日本の医療産業の国際競争力は弱体である。患者のアジア諸国への流出も始まっており、医療情報のデジタル化では韓国にも追い抜かれている。医療改革を日本経済再生のエンジンにするためには、網羅的な臨床プロトコル構築、混合診療解禁、共同事業による効率化等が不可欠である。
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東アジアのデフレーション
客員研究員 渡辺 努
「デフレは供給サイドの要因で生じているか」。日本を含む6ヶ国の消費者物価データを吟味した結果、1990年代半ば以降、負の供給ショックが多くの国で生じており、これが日本を含む東アジア諸国のデフレの一因となっている。また、各国の供給ショックは共通の要因により生じている可能性が高い。
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中国の家計所得と消費構造
主任研究員 柯 隆
中国の所得格差は従来マクロ経済統計で捉えたものよりもさらに拡大している。社会構造の多層化も急速に進み、下層と最下層の人数が増えている。これからの経済発展と社会安定を考えた場合、中間層の形成が必要であり、財政・税制改革を行い、所得格差拡大を是正する必要がある。さらに、日系企業を中心とする外資系企業の対中直接投資については、マーケットターゲットを明確にすることが重要である。
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中国のマクロ経済の動向と今後の展望
中国社会科学院 副院長 王 洛林
中国経済は、高い成長率を維持しているが、その成長過程では大きな変動に見舞われている。今後、世界経済がますますグローバル化していく状況下で、持続可能な経済成長を実現するために、市場経済型の制度作りと経済構造の調整を早急に行うことが必要である。
