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地域金融機関を中心とした自助・共助のまちづくりとは?

2012年2月7日(火曜日)

はじめに

富士通総研では、自助、共助のまちづくりを実現するために、様々な団体様をご支援して参りました。これまでは、地方公共団体が中心に取り組まれてきましたが、今後は地域金融機関を巻き込んだまちづくりが不可欠であると考えています。

1. 自助・共助のまちづくりにおいて地域金融機関に寄せられる期待

人口減少や、少子高齢化、景気後退による税収減、福祉コストの増加など、地域での地方公共団体の負担が大きくなるなか、住民やNPO、教育機関、企業など地域の主体が地域課題に自ら、そして協力して取り組む、自助・共助のまちづくりが注目されています。地域金融機関は金融サービスという準公的とも言えるサービスを提供していることから、地域からの信頼も大きく、自助・共助のまちづくりにおいて主体的に取り組むことが地域から期待されています。また、地域での存在価値を高めるという点において、地域金融機関自身も取り組み意欲が高くなりつつあるものと考えます。

2. 富士通総研が取り組んできた自助・共助のまちづくり

富士通総研では、地域活性化と地域情報化の豊富な実績を活かし、自助・共助のまちづくりの実現に向け、様々な地域で取り組みを行ってきました。

  • 【事例1】独り暮らしのお年寄りを携帯電話で見守るサービスで安心・安全に暮らせる地域づくり(北海道白老町)
    当地域の高齢化率は2010年度に2030年の全国平均の推測値を超えており、年々上昇傾向にあります。
    また、家族からの支援が困難な65歳以上の一人暮らしの在宅高齢者も多く、安否確認等を含めた生活支援が強く求められていました。
    そこで、地域全体で高齢者を見守り、支援できるよう、高齢者に携帯電話(富士通製、らくらくホン)を配付し、高齢者の安否を常時確認する「見守り」と、買い物などをはじめとした「生活支援」を行う、地域のコンタクトセンターシステムを構築し、運用を開始しました。
  • 【事例2】地域観光まちづくり(群馬県安中市)
    当地域の産業の中心である観光では、地域外からの観光客が大半となっており、地域外住民に経済を頼っている状況にありました。
    全国的に観光が衰退しつつある中、観光の衰退は地域の賑わいを失う結果になりかねません。
    そこで、地域の住民にも地域の観光に目を向けていただくために、地域住民が興味の高い健康づくりに絡めたまちづくりに取り組みました。
    地域の観光スポットを回ったり観光活動を行う毎に健康ポイントを付与し、活動意欲を掻き立て、地域で活動してもらう仕組みを構築しました。

【図1】地域金融機関に対する富士通グループの役割の変化地域金融機関に対する富士通グループの役割の変化

3. 自助・共助のまちづくりの共通課題とは?

こうした取り組みに共通して発生する課題に、運営資金の捻出が挙げられます。

上記の事例では、運営資金の大半は地方公共団体や商工会など各種団体が捻出しており、現在も継続的に取り組まれています。しかし、公助ではなく自助・共助のまちづくりを実現していくためには、資金面において地方公共団体に依存するのではなく、地域でまちづくりの資金を生み出し、流通させて、安定的な運営基盤を構築することが期待されます。

日本においては「まちづくり」≒「行政サービスの仕事」と捉える風潮があり、「まちづくり」という目的に対して投資する住民や起業はまだまだ少ないのが現状です。そこで、地域主体によるまちづくりを盛り上げるために、地域通貨や地域ポイントの導入が各地域で行われています。平成23年12月現在、少なくとも650種類以上の取り組みが行われています。しかし、そうした地域通貨や地域ポイントも実証実験にとどまり、定着化に結びつかない事例が多く見受けられます。その原因として、NPOや自治会などの活動母体では十分な初期資金が確保できず、また金銭を扱うという点において、地域企業からの信頼や理解が十分に得られにくいことが挙げられます。

こうしたまちづくりの資金作りの課題解決に、地域金融機関が大きな役割を果たすことができると富士通総研では考えています。地域金融機関では、地域内の地方公共団体、企業、住民やNPOなど既に多くの業種との人的ネットワークが形成されており、地域通貨・ポイントをはじめ、地域内の活動主体を巻き込んだ役割の中心的なプレイヤーになり得るからです。

まちづくりに取り組むことにより、地域金融機関は地域へ貢献できることは当然ながら、地域通貨・ポイントでは地域金融機関の資金量や顧客数を増加させることが期待できるなど、地域金融機関のビジネスにおいても有益なものになり得ると考えています。

【図2】地域金融機関を巻き込んだ自助・共助のまちづくりイメージ地域金融機関を巻き込んだ自助・共助のまちづくりイメージ

4. 地域金融機関のまちづくり貢献と地域単位の資金運用モデル確立を目指して

地域金融機関にとって地域のまちづくりに取り組むことは、単なる地域貢献活動、ボランティア活動にとどまらず、地域金融機関のビジネス貢献にも資することが期待できます。

富士通総研では、平成23年4月より金融・地域事業部が誕生しました。従来は、地域金融機関、地方公共団体とそれぞれに顕在化したニーズに基づいた1対1のビジネスを展開してきましたが、それらのビジネスのレベルアップを図るとともに、地域の課題解決等、目的に応じて地域金融機関と地方公共団体、企業、住民等を結びつけ、地域における地域金融機関の役割を高め、相互作用によって新しい価値を作る仕組みづくりやビジネス展開を行うことが可能です。

日本銀行が2010年6月15日より地域の経済成長、産業振興を促すための資金供給を行うにあたり、成長基盤として環境・エネルギー事業、医療・介護・健康関連事業、観光事業等が重点テーマとして掲げられています。上述した【事例2】では、医療・介護・健康関連と観光事業を融合したものとして地域観光ポイントの事例をご紹介しましたが、東日本大震災を契機にますます関心が高まっている環境・エネルギー事業では、以下のような地域ポイント導入が想定できます。

  • 環境・エネルギー分野
    明治安田生命様が毎年実施している「震災に関するアンケート調査」では、東日本大震災前後で変化した生活行動として「省エネ・環境性能商品を意識するようになった」と答えた人の割合が4割を超えており、環境・エネルギー問題への出資・取り組み意欲が高いことがわかります。
    こうした流れを背景に、省エネ製品の購入や省エネ活動など、地域内での環境・エネルギー問題への活動実績を蓄積し、活動に応じて環境ポイントを発行し、住民へ還元するビジネスに取り組む地域も出始めています。

5. おわりに

これまで地域金融機関では、顧客単位に資金運用などの金融サービスを提供することが主体であったと思います。これからは、地域が抱える課題を紐解くことで、地域通貨や地域ポイントを活用した新たな金融サービス基盤を提供する、などの可能性があります。

富士通総研では、地域金融機関での自助・共助のまちづくりへの取り組みを、単なるボランティアや地域貢献ではなく、新たな金融サービスビジネスにするべく、ご支援をいたします。是非、ご相談下さい。

【図3】まちづくりにおけるコンサルティング&コーディネートサービスまちづくりにおけるコンサルティング&コーディネートサービス

関連サービス

【持続可能な地域社会の構築支援】
これからの地域活性化には、これまで以上に地域が主体となって、自地域の産・学・公・民がそれぞれの役割と可能性を協力・連携し、有する資源を再発見・評価し、魅力と活気に満ちた地域づくりを目指して、企画・実行していくことが必要です。

【金融】
金融機関を取り巻く経営環境は、グローバル化、自由化の中で激しく変化しています。金融業にとって最も重要な経営課題である、経営・リスクマネジメント、顧客チャネル改革およびIT戦略策定を支援します。


山尾 一人

山尾 一人(やまお かずと)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアコンサルタント
2001年富士通株式会社入社、地方公共団体の基幹システムの開発、管理に従事。2006年株式会社富士通総研入社。
これまでの経験を生かし、行政向けの情報システム最適化、運用改善(ITIL)に従事しながら、近年はICTを活用して地域を元気にする地域ICT分野を主軸に活動。