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フランスの公会計改革と公会計システム近代化の動向

2008年10月10日(金曜日)

1. はじめに

わが国では財政の健全化に向けて公会計改革が行われているが、外に目を向けてみると、財政の健全化については、欧米諸外国でも1990年代の財政難からこれまで、さまざまな取り組みがなされてきている。

フランスは、2001年の予算組織法(LOLF : la loi organique relative aux lois de finances)の改正に伴い公会計改革を行っている。この改革は、会計制度改革、予算改革と行政評価改革の3つの柱から成り立っていることが特徴である。フランスとわが国の違いは、わが国では会計制度改革や予算改革もしくは行政評価などを個別に捉えて推進している傾向が強いが、フランスは1つの改革と捉え、同時に進めていることである。筆者は以前から、予算に始まり決算を経て行政評価までを改革する必要性を主張してきたが、フランスではそれを実現化しようとしており、わが国でも参考となると考えるため、調査を試みた。

また、この改革を実現するには、ITが不可欠であるが、フランスではChorusというシステムの構築を急いでいる。公会計システム近代化についても動向を紹介する。

2. 2001年予算組織法による公会計改革の概要

予算組織法LOLFは2001年8月1日に制定され、国の予算と会計の基準が抜本的に改正された。

LOLFによる公会計改革(以下LOLF改革)は、マーストリヒト条約による財政改革の強制力と地方分権の促進、国を圧迫し続けてきた公務員人件費の削減、国内議会の統制強化が期待された財政改革である。

LOLF改革は、2002年から2005年までの4年の準備期間を経て、2006年度予算法(同年1月1日開始)から施行された。

表1. LOLF法改革の導入過程(出所:木村(2004)にFRI加筆)

LOLF改革の目玉は、(1)会計制度に発生主義を導入(予算は従来の現金主義)、(2)予算編成単位(ミッション-プログラム-アクション)の変更、(3)それに伴う業績評価の導入と、これら業績評価と会計報告を予算編成(事前・事後)に反映することである。

以下の図は、LOLF改革全体を示した図になるが、予算から決算、監査までPDCAのフローを実現させるべく、業績評価を行いやすい予算単位に変更し、会計は発生主義を導入し、透明性を高め、業績評価と連動し、その会計報告と業績評価を議会に反映させ、次年度以降の予算編成に反映させるという流れを作ろうとしている。

図1. LOLF後の予算・公会計制度の全体像イメージ

(1)会計制度改革:発生主義会計導入

公会計は透明で分かりやすいものであるべきというLOLFの基準に従い、国会や一般の債権者、当事者達が理解し、判断する予算書と決算書を提示するため、発生主義による会計基準に変更された。

《主な会計の変更点》

1) 「新しい一般予算」は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の要素が全て含まれる。関わり合う業務間の関係を明確にする(貸付勘定)。

2)「併合(追加)予算」は、財を生産したり、有料サービスを提供したりする個々の公共サービス機関の活動を組み込む。

3)「特別会計」は、一般会計と区別するもので、国の歳出と歳入の関連性を明らかにする。

(2)予算改革:予算編成単位(ミッション-プログラム-アクション)の変更

予算編成は、従来の款-項-目-節からミッション-プログラム-アクションの予算体系に変更し、約850の項から約150のプログラムまで予算項目数を削減した。また、従来は各省庁に閉じた予算であったが、改革後は省庁横断的なミッションも作成可能となった。

各プログラムには、プログラム責任者がいて、その出先機関にそれぞれBOP責任者(BOPはBudget Operationnel de Programmeの略。特定の活動や地域の責任者が自由に出来る予算を示す)が存在している。この責任者が政策面の担当者であり、会計の責任者は財務統制官と出納官となり、政策と会計の責任が分担された。

図2. LOLF後の予算編成の仕組み

(3)行政評価改革:業績評価の導入と業績評価と会計報告を予算編成(事前・事後)へ反映

LOLFは、会計監査員が予算法と決算をチェックして、予算年度ごとに業績報告書(Rapport de Performance Annuel)を提出することを義務づけている。そしてその結果を予算編成に反映することになった。

3. 公会計システム近代化の概要と変遷

LOLF改革を実現するには、ITを近代化しなくてはならない。フランスが最初に行ったのは、情報データの共有化と、ノウハウ蓄積のためのITプラットフォームの構築である。

まずは、部分的なプラットフォームとして、Accord(Accord1とAccord1bis)を作成した。Accordとは「支出の会計・発生・決済に対応するアプリケーション」の略(Application coordonnée de comptabilisation, d'ordonnancement et de règlement de la dépense)である。その後、パリエ2006プロジェクト(Palier 2006)を掲げて、LOLFの基準を満たすAccord LOLFというアプリケーション・プラットフォームの構築を進めた。支出管理アプリケーションAccord LOLF はAccord 1 と Accord 1 bisの次世代バージョンで、2006年から中央省庁の管理職と会計係(利用者数は7000人)が利用している。

そして、現在は最終形態のアプリケーション・プラットフォームであるChorusを構築中である。Chorusは支出・税以外の収入・国の会計を管理する情報システムで、2008年に稼動予定である。これまで、予算編成はFarandole、収入・支払は、Accord 、NDLなど、財務会計はNDC、CGL、TCCというように、個別システムとして存在してきた。LOLFに沿った、透明性の高い、効率的な公会計を可能にするために、予算システムを除くシステムを統合化することとした。2009年末までには、このアプリケーションが全ての中央行政機関と地方機関で展開される予定になっている。

管理ビジネスソフトと関連するツールは、NetweawerというSAPが開発したプラットフォームがベースになる予定である。共通基盤システムは、Sopra Groupとその子会社Axwayが選ばれた。このシステムは200以上の会計関連アプリケーションを互いに対応させながら、情報データを全て管理する。

図3. ITシステムの変更イメージ図(出所:フランス政府ホームページ

4. 会計検査院による現在の評価

2006年から施行されたLOLF改革だが、まだ課題は残されているものの着実に進んでいることが、2008年2月に会計検査院が発表した所見一覧の「会計に関する所見」から分かる。2004年から2006年に改善を求めた懸案167件のうちの90%近くが解決された、という評価である。改善点は以下の通りである。

  • 財務省と各省の内部監査システムの定義とその段階的な導入が見直された
  • 会計官の役割と会計官の組織編成が見直された
  • 会計プロセスや会計スキームが整理された
  • 帳簿上の間違いや記録漏れが直された
  • ITシステムが改良された

その結果、実際に財務省が提出した収支が3400万ユーロも下方修正された。提言に対する素早い対応と結果については高く評価されているが、課題はいまだ残っている。

  • 会計官の役割、システムは機能しているが、最も大事な存在である省内の管理官gestionnaireの動員が省庁によってばらついている。
  • ITシステムのレベルはLOLF改革を満たすレベルにまだ達していない。(Chorusはテストラン期間中)

「Chorusに関する調査報告2006」では、各省や地方出先機関は業務のリエンジニアリングをもっと行うか、SAPのERPをもっとカスタマイズさせないと、Chorusの最適な結果は得られないという内容であった。

5. おわりに

本稿では、フランスの公会計改革と公会計システム近代化の動向について概観した。フランスの改革は予算改革、会計制度改革、行政評価改革を一度に行うものであり、それを実現させるITシステムも同時に近代化するプロジェクトである。制度設計が終わり、実現のために組織・業務とITシステムを構築中であるが、システムのスムーズな構築はわが国だけでなく、諸外国でも大きな課題となっている。大規模システムであればあるほど、スケジュールの遅延が起きている。フランスのこの大掛かりな改革の実現をITが果たしてどこまで可能とするか。これは各国の注目の的であり、どの国でも課題となっている大規模システム開発の成功要因をフランスが示すことができれば、多くの国が手本とするであろう。

今後も制度の実行とITシステムの近代化についての観察を続ける必要がある。

【参考文献】
木村琢麿(2004)「フランスにおける予算会計改革の動向―日本法への示唆を求めて」
財団法人行政管理研究センター『季刊行政管理研究』No.106。

印刷用原稿はこちら→ PDF 【フランスの公会計改革と公会計システム近代化の動向】 [319KB]

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【公会計改革】


柏木 恵 (かしわぎ めぐみ)
(株)富士通総研 公共コンサルティング事業部マネジングコンサルタント。税理士。
国内外の税や会計の研究および国・地方自治体に対するコンサルティングを行っている。
専門分野は財政再建、公会計、行政経営、官民連携、公益法人改革など。