上級研究員 神尾 健一
昨今、サブプライム問題の影響により、企業倒産の件数が増え、貸し倒れが増大し、銀行の業績が悪化しています。貸し倒れが起きると、銀行は不動産などの担保を処分して貸したお金の一部を回収します。回収できず損失となった部分のことを LGD(Loss Given Default)といいます。LGDは、倒産確率(PD: Probability Of Default)とともに、損失の大きさを把握するための重要な指標です。例えば、倒産確率が同じ貸出先に対して、低いLGDが予想される方に重点的に貸すことで損失を抑えることができます。従って、貸出先のLGDを事前に定量的に評価することは重要な課題です。
多くの銀行で貸出の判断や貸出条件の査定にスコアリングモデルを使っていますが、このモデルは倒産確率を評価するものです。倒産後の損失、すなわちLGDについては、ほとんど考慮されていないのが実情です。
(スコアリングモデルに関しては、関連記事「融資スコアリングモデルの構築支援コンサルティング」も併せてご参照下さい。)
これまで、倒産後の回収には実態が不透明な部分が多く、倒産企業の回収に関する回収額や担保の状況などはデータベース化がされていませんでした。
A銀行様では、回収に関して強い問題意識を持っており、このようなデータを蓄積し始めていました。富士通総研は、このデータから統計的手法を用いてLGDを予測するモデルを構築することを提案しました。
このモデルは、担保の様々な特性から、担保がいくらで売れるかを予測した上で、貸出先ごとのビジネスの特性を考慮してLGDを予測するものです。そして、
などの特長をもち、A銀行様からはこのような点で高い評価を頂いています。
A銀行様は、回収が見込めない、すなわちLGDが高い貸出先には限度額を下げて倒産による損失を抑えたり、金利を上げてリスクに見合った利益を狙う、などの施策により、収益性の向上へ、本モデルの活用を考えておられます。
貸出先のLGDを定量的に予測することは、すべての銀行に共通の課題であり、経営の健全性向上、ひいては、金融システムの安定につながります。富士通総研では、このモデルを活用してお客様の融資業務の改善に貢献したいと考えておりますので、お気軽にお声掛け下さい。
フィナンシャルエンジニアリング分野では、金融機関における各種リスク管理、企業の財務リスク管理および金融資産の価値評価について研究しております。いずれも、ファイナンス(金融工学・財務理論)に関連する経営上の課題解決に貢献するものです。