【連載】地域金融機関における経営戦略
第3回 ビジネスモデルの変革
シニアマネジングコンサルタント 岡 宏
2008年12 月5日(金曜日)
第1回ではリテールビジネスの採算性低下という構造的な課題について、第2 回では地域金融機関における差別化による優位性の発揮について述べました。
個人向け金融ビジネスは、長年にわたる顧客との取引関係以上に“価格”が重視されるトランザクション・バンキングと言えます。長年の取引があるからといって、その顧客がその金融機関で住宅ローンを借りてくれるとは限りません。こうしたビジネスにおいては競争力のある価格を維持するため、ITの活用によりコスト競争力を強化することが重要です。人手を介していた業務を極力ITで代替し、さらに正行員(職員)でなくても取り扱いができるようにITがサポートする仕組みが必要となります。
法人向けのビジネスは、地域金融機関にとってまだまだ差別化が可能な分野です。差別化のポイントは、企業の事業実態や信用力を評価するための情報をいかに効率よく把握するかということです。企業信用情報機関から把握できるデータでは、差別化ができません。例えば、第2回で紹介した信用金庫のキャッシュフロー・レンディングにおける売掛債権情報は、金融機関の担当者が中小企業の経営者との交渉によって入手するものです。こうした情報を継続的に蓄積すれば借入企業の事業が上向きなのか下降気味なのか、取引先の構成にどのような変化があるのか、商品・サービスに競争力があるのかどうか、など極めて有益な情報(付加価値情報)が形成されます。
地域金融機関では、従来から取引(貸出)先企業の情報を積極的に把握し、融資審査に活用されてきました。しかしながら、それが属人的なスキルに依存していたり、情報の連続性がなかったりするため、更なる有効利用が進まなかったのではないかと思われます。こうした地域金融機関にとっての“独占的”情報こそが優位性を獲得する唯一の要素であり、有効活用こそが法人向けビジネスにおける生命線であると言えます。
近年における地域金融機関の業績回復は、主に経費削減に依存するところが大きかったと考えられます。今後、持続的成長を実現するには、更なるコストダウンだけでなく、事業そのものの成長(粗利益の増加)が不可欠となります。事業そのものの成長を実現するには、従来からのビジネススタイルを抜本的に見直し、新しい仕組みを自金融機関の中に作り出すことが必要です。
リテールバンキングにおけるコスト競争力強化、およびホールセールバンキングにおける付加価値情報の活用に向け、今こそ地域金融機関はビジネスモデル変革に取り組むことが求められています。
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