「見える化」による空容器の管理精度の向上
主任研究員 木村 達也
2008年12月2日(火曜日)
A社では、製品輸配送の容器を約515万個用いています。容器は反復使用され、製品輸配送後の空容器の管理精度向上による効率性アップが課題でした。まずRFID(*)導入が検討されましたが、高いソフト費用・RFID単価 、長いシステム構築期間、読み取り精度、耐水性、アクティブ型RFIDの短寿命、が問題でした。また容器は再生利用しますが、RFIDを付けるとこれが難しくなります。さらに現場作業を機械的にしてモチベーションを低下させ、それによって誤配が増加するなど物流品質が低下することが懸念されたため、RFID導入は見送られました。
実際の課題解決には、拠点毎に予め設定した空容器の適正在庫数を記載した社内LAN上のシートに各拠点で毎日在庫数を入力する手法が使われました。しかし当初は、入力拠点がまばらで実用性はありませんでした。そこで、状況改善のため、「入力確認星取り表」(入力拠点に○が記入される各拠点の入力状況一覧表)を作成し、2年間毎日メールでフィードバックしました。また、未入力の原因を電話で確認し、現場と共に解決を図りました。例えば、夜勤で1人の時に入力する業務体制が未入力の原因ならば、本社の物流部が拠点の上司に業務方法変更を交渉しました。こうした努力から現場は本社に親近感を持つようになり、着実な入力が実現し、全社的に空容器の余剰の所在の見える化が実現しました。
こうした見える化の定量的効果として、容器投入数が15~30%減少しました(種類で相違)。空容器の引き取り配車台数も30%減少し、CO2の排出も減少しています。また見える化により、日々在庫に関心を持つことで、現場に意識改革が生じ、現場で水や空気のような存在であった容器が大事な資産と見られるようになりました。その結果、業務へのモチベーションが向上し、誤配減少など物流品質の向上にもつながりました。さらに見える化は、本社と拠点間、拠点同士の連携を強くしました。ここで注目すべきことは、こうした見える化が、先進的技術のRFID導入ではなく、社内LAN上のシートという一般的ツールを用いて現場とのコミュニケーションを継続するという地道な努力で達成されたことです。
この事例は、企業の多くの問題解決には問題の直接の解決を図るのではなく、現場で働く人々のモチベーション向上を第一に考えた対処が、間接的であっても問題を根本的に解決することを示唆しています。これは高度なICTを導入した問題解決でも同様であり、ICT導入とともに現場のモチベーションアップを第一に考えた対処をすることが不可欠と考えます。
注釈
* RFID : Radio Frequency IDentification
電磁波を使って、物品や人物などの個体識別(アイデンティフィケーション)を自動的に行う技術の総称。
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