シニアマネジングコンサルタント 岡 宏
近年、地域金融機関における業績回復が進んできましたが、この1~2年は、一部で業績伸長に翳りが見え始めています。本論文では、3回にわたり地域金融機関が抱える構造的な課題について整理しつつ、さらなる成長に向けたビジネスモデル変革の必要性について提言します。
近年の地域金融機関における業績回復を支えてきたのが、リテールビジネスの成長です。特に住宅ローンと預り資産ビジネスがその中心となっています。しかしながら、こうしたビジネスが本当に儲かるのか?ということになると、議論の余地が大きいと言えます。
まず住宅ローンについてですが、A地方銀行の決算説明資料に貸出金の収益構造に関する項目がありました。この資料によると、A行ではおよそ2.1兆円の住宅ローン残高があり、資本コスト控除後利益率は0.62%で、中小企業向け貸出の0.71%を下回っています。詳しい情報はありませんが、この2.1兆円の残高の中には、いわゆるアパートローンと自己居住用住宅ローンが含まれており、一般的に前者は利回りが高くなっています。一方、自己居住用住宅ローンは近年の金利競争で利回りが大きく低下しているのが実態です。10年国債利回りが1.7~1.9%程度で推移している中で、10年固定住宅ローン金利が1.85%などという金融機関もあります。
預り資産ビジネスでは、投資信託と個人年金保険の窓口販売が中心となっています。こうしたビジネスを拡大するため、地域金融機関においても専門員の確保・育成やコンサルティング店舗の設置などが進んでいます。大手地方銀行のB行では、投資信託および個人年金保険の預り資産残高は各々数千億円に達しています。しかしながら、このビジネスから生じる収益は、全粗利益の各々2~3%に過ぎません。安定的に稼げるビジネスであるという言い方もできますが、これに対し多くの経費がかかっているのも事実です。
リテールビジネスの規模は確かに大きいものの、収益的には非常に厳しいものになっています。住宅ローンや投信などの個人向け商品というのは、どこの金融機関に行っても商品性は殆ど変わらず、結果的に貸出金利や手数料が安いことが競争力となってしまいます。リテールビジネスの収益性低下という構造的な問題が、地域金融機関の経営にとって非常に大きな問題となっています。
次回はリレーションシップバンキングについてご説明します。
ファイナンシャルサービスに関して、銀行・証券・保険といった金融機関を中心に一般企業までも対象に、ビジネスおよびITの両面から、戦略立案から組織・業務プロセス改革、システム導入支援など総合的なサービスを提供します。