富士通購買本部の取引先向けサプライチェーン継続性評価
シニアコンサルタント 吉田哲也
2008年10 月9日(木曜日)
背景
2007年7月の新潟中越沖地震による自動車部品メーカーの被災は、国内の全自動車メーカーの操業停止を招きました。この事件は、企業におけるサプライチェーンを取り巻くリスク環境の厳しさの再認識へとつながり、自然災害や事故などの不測の事態が発生した場合においても事業を早期に復旧させるためのBCP(*1)策定の動きを加速しています。
しかし、各企業が策定しているBCPは、現段階では事業継続のための対策が自社内部の経営資源に対する範囲に留まっており、サプライチェーンまで意識していないのが現状です。
富士通購買本部へのアプローチ
富士通では、富士通総研の全面的な支援のもと、2005年よりBCP策定を進めています。しかしながら、各事業におけるBCP策定は進んだものの、取引先を含めたサプライチェーン全体でのBCM(*2)強化に向けた具体的なアクションまでには至っていない状況でした。
富士通総研はこの課題を解決するため、富士通の購買本部と共に、取引先を対象にしたサプライチェーン全体でのBCM強化の共同プロジェクトを2007年5月より立ち上げ、継続的な活動として現在も推進中です。
サプライチェーンのBCM強化とは
サプライチェーンのBCM強化は、単に取引先に要求するだけでは無く、まず最初に取引先の事業継続能力を客観的に評価し、その結果に応じた適切なBCM強化対策を実施することが必要です。
取引先の事業継続能力の評価は、アンケートによる評価手法を導入しています。アンケートで得られた情報は単純に集計するだけでは無く、取引先に対する最適なBCM強化対策を検討するため、評価結果を取引先全体で総合的に可視化し評価する必要があります。
そのためには、事業継続能力の評価をマネジメントと復旧能力の両面で行い、総合的な対応状況を可視化します。会社全体の取り組み姿勢をマネジメント面で評価し、さらに部品・部材の製造拠点単位での復旧能力を分析します。調達部品・部材は、1社から複数種類を調達しているケースが多いため、会社としての取り組みと個々の部品・部材の復旧能力を組み合わせた分析結果を評価することが重要になります。この結果を踏まえて、自らのサプライチェーンに潜むリスクを可視化し、取引先への指導や、自らの調達戦略の見直しを実施することになります。
プロジェクトによる成果
2007年度は、重要な取引先約300社に対して事業継続能力の評価を実施しました。評価結果の1つとして、300社の中でBCP策定に取り組んでいる企業の割合は、内閣府、日本政策投資銀行等の調査した国全体の平均値と比較して、かなり多いということが分かりました。ただし、300社の中の3割程度であり、サプライチェーン全体での強化にはまだ程遠い状況と言えます。
その他にも、会社業態からの比較結果を見ると、電子部品メーカーの復旧能力が高いのに対して、組み立て・加工中心のメーカーは低い傾向があります。これは、電子部品メーカーと比較して、組み立て・加工メーカーは、会社規模が小さいため製造拠点が少なく、結果として、被災時においては代替生産が効きにくいという点が理由としてあると思われます。
今後はこのような分析結果を、調達戦略策定における取引先評価基準に取り入れるのみでは無く、積極的に設計部門にフィードバックすることにより、設計段階における継続能力を製品に取り入れた部品仕様や調達先の決定につなげて行きたいと考えています。このように、製品開発から提供・サポートまでトータルにサプライチェーンのリスク管理を強化する活動を、富士通総研では継続的に支援して行きます。
リファレンスモデルのサービス展開
今回は、富士通購買本部に対する支援を事例にして、サプライチェーン全体でのBCM強化の仕組みを紹介しました。なお、富士通総研では、富士通購買本部向けに実施したプログラムをリファレンスとし、お客様向けにもサービスを展開しています。
自社のBCP策定/BCM推進の過程で、サプライチェーン全体での強化を検討されているお客様がおられましたら、是非ご支援させて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
注釈
*1 BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
*2 BCM:Business Continuity Management(事業継続マネジメント)

