【連載】内閣官房「ITによる改革の達成度に関する調査」の概要
第6回 電子私書箱
コンサルタント 藤岡玲子
2008年10月1日(水曜日)
皆さんは、自らの健康情報や保険情報、年金情報、金融情報など、国・自治体、民間企業それぞれが保有する情報を、システムによって勤務先や自宅などから一元的に入手・管理することができたら便利だと考えたことはないでしょうか。
平成19年7月26日に内閣総理大臣を本部長とするIT戦略本部が策定した「重点計画-2007」において、「国民視点の社会保障サービスの実現に向けての電子私書箱(仮称)の創設」として、「医療機関や保険者等に個別管理されている情報を、希望する国民が自ら入手・管理できる『電子私書箱(仮称)』を検討し、2010年頃のサービス開始を目指す。」ことが盛り込まれました。この施策の実現に向けて、内閣官房IT担当室では「電子私書箱(仮称)による社会保障サービス等のIT化に関する検討会」を設置し、平成19年10月から平成20年3月までの間、5回にわたり、主に「情報保有機関による情報の提供」、「情報へのアクセスの適切な管理」、「情報の自由な活用」及び「電子私書箱サービス成立に向けた諸条件」について検討を行いました。
この流れを受け、富士通総研も、これまでコンサルティングNEWSで5回にわたりご紹介してきた「ITによる改革の達成度に関する調査」の1分野として、電子私書箱に関する調査を行いました。この調査では、ITを活用した「電子私書箱による社会保障サービス等」に該当する海外事例を中心に、国内外の現状把握と課題の提言を行いました。
以下に、調査概要及び結果について紹介します。
電子私書箱が提供するサービスについて、重要な論点となる下記の4つの点を中心に調査を行いました。
- サービス提供範囲
- サービスに出資する組織(運営母体)
- サービスを運営する組織(運営組織)
- 個人情報を保有する組織と個人情報の取り扱い方法
これらの論点に基づき、海外事例を中心として22の事例を抽出しました。更に、より具体的な情報を入手する為にインタビューも実施した結果、以下の特徴があることがわかりました。
(1)電子私書箱の想定する、「医療機関や保険者等に個別管理されている情報 を、希望する国民が自ら入手・管理できる」サービスは、諸外国においても 現時点では見受けられず、電子私書箱としては手本となるものがありません。
(2)事例の大半は行政が主体となって提供しているサービスで、民間が主体とな っているものはごく僅かです。
(3)行政手続きやサービスで取り扱われる個人情報に関する調査では、情報を保 有する組織はサービス(年金、保険など)毎に異なる点が明らかになり、こ の点は日本と共通しています。
以上の調査結果より、下記5点を課題として提言しました。
(1)サービス提供範囲と全体統制
電子私書箱のような一元的なサービスには、サービスレベルを一定に保つ為 のルール化と明確な役割分担、そして全体を統制する組織が必要となります。
(2)事業継続性
公的な個人情報を取り扱う為、サービスを中断することがあってはならず、 民間との連携を行う場合には、事業継続性を考慮する必要があります。
(3)サービス提供の役割分担
サービス提供に当たって、サービスを構成する機能・役割を明確化した上で、 行政と民間の役割を明確化する必要があります。更に、個人情報を保有する 組織の責任の所在(提供先との責任分界点)を明確化することが特に重要と なります。
(4)個人情報の取り扱いにおける安全性の確保
個人情報を取り扱う以上は厳重なセキュリティ対策が必要となります。特に、 利用者に対する情報の提供について、検討、整備した上で安全性を確保する 必要があります。
(5)利用者の利便性の向上
情報の提供手段について、インターネットによるものだけではなく、事例の 一部に見られましたが、電話やキヨスク端末等、利便性の高い複数の手段を 考慮する必要があります。
今後は、今回の調査結果及び前述の「電子私書箱(仮称)による社会保障サービス等のIT化に関する検討会」での検討結果を踏まえ、関係府省の連携のもと、電子私書箱が早期に実現されることが望まれています。内閣官房IT担当室では、次のステップとして「電子私書箱(仮称)構想の実現に向けた基盤整備に関する検討会」を設置し、検討が開始されています。また、電子私書箱の実現に当たり、富士通でも社会保障カードとあわせてビジネス推進について検討されています。富士通総研では、今後もこの分野において富士通グループと情報を共有し、ビジネス化に向けて貢献して参ります。
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