【連載】内閣官房「ITによる改革の達成度に関する調査」の概要
第5回 教育・人材分野の状況
篠原彰考
2008年9月16日(火曜日)
内閣官房では、2006年より、IT戦略本部の下にIT新改革戦略評価専門調査会(以下、調査会)を設置し、IT新改革戦略で掲げた施策の進捗状況の評価を行っています。
本稿では、2007年度の調査会の「ITによる改革の達成度に関する調査」のテーマの1つである「教育・人材分野」における調査の結果を中心に紹介します。今回の調査会では、この他に「医療分野」、「電子政府分野」、「テレワーク分野」等が調査対象であり、特に「教育・人材分野」は準重点分野の位置づけとなっているものです。
教育・人材分野においては、初等中等教育関連とこれに連なる高等教育での高度IT人材の育成の2つの領域を対象として、関係機関へのインタビューや教育現場等へのアンケートの結果に基づき、現状把握と課題抽出を行い、今後の改善の方向性を検討しました。
アンケートでは、初等中等教育関連に関しては、教育委員会・学校長・教員、高度IT人材育成に関しては、関連する大学院の研究科長・学生・情報サービス業の企業へ、計10種類の調査票を計12,120部依頼し、6,172部の回答を得ました。(回答率50.9%)
以下に、本調査結果から得られた知見と改善の方向性について、紹介致します。
<初等中等教育>
初等中等教育関連については、次の視点で調査を行いました。まず、IT基盤と学習コンテンツが整備、活用されているのか、そのための教員研修やCIO(*)育成等サポート体制CIOはどうなのか、教員のIT活用指導力向上はどうなのか、モラル教育を含む情報活用能力の向上への取り組みはどうなのか、さらに、これらへの動機付けとして、IT基盤整備が学力向上につながることが共通認識として広まっているのか、という視点です。これらについての課題と改善の方向性のうち、特にIT基盤の整備と活用について次に述べます。
アンケートによると、小中学校の授業におけるITの利用頻度が月に1回未満の教員は、67.7%です。授業でITを活用するために46.7%の教員がPCが不足していると回答しています。一方、授業でほぼ毎日ITを利用している教員の100%が、IT活用による学力向上の実感があると回答しています。
この背景として、地方自治体によって差がありますが、IT基盤整備が進まないことから、教員の授業でのIT活用頻度が低くなり、学力向上への効果を実感する教員が少なく、この結果、IT基盤整備の優先度が高くならず予算額が伸びず、IT基盤整備が進まないという循環がおきていると考えられます。
このため、初等中等教育では、IT基盤整備の加速化とIT活用環境充実の早急な促進が必要となっています。
<高度IT人材の育成>
高度IT人材の育成については、次の視点で調査を行いました。まず、高等教育につながる初等中等教育でのIT能力育成は十分か、次に、高等教育での取り組みは十分か、さらに、IT業界の魅力向上策の状況はどうなのか、という視点です。これらのうち、高等教育での課題と改善の方向性を次に述べます。
文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」による筑波大学や富士通が支援している九州大学等の拠点大学院の取り組みは、日本経団連による人材や教材の提供も得て、順調に進んできてはいるものの、各大学院は本プログラム終了後のコース継続に不安を感じており、安定的かつ持続的に運営する新たな仕組みが必要となっています。また、現状の拠点大学院以外への取り組みの展開も必要です。
人材像の面から見ると、これまでのような開発側の人材の育成だけでなく、利用する側の高度IT人材の育成の検討も必要となっています。
注釈
* CIO : Chief Information Officer (最高情報責任者)
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