【連載】内閣官房「ITによる改革の達成度に関する調査」の概要
第4回 テレワーク分野の調査の状況
シニアコンサルタント 麻生陽一郎
2008年8月4日(月曜日)
内閣官房では、2006年より、IT戦略本部の下にIT新改革戦略評価専門調査会(以下、調査会)を設置し、IT新改革戦略で掲げた施策の進捗状況の評価を行っています。
本稿では、調査会の「ITによる改革の達成度に関する調査」のテーマの1つである「テレワーク分野」における調査の内容と結果、提言について紹介します。今回の調査会では、この他に「医療分野」、「電子政府分野」、「教育・人材分野」および、今後調査会での評価が想定される「電子私書箱分野」が調査対象であり、特に「テレワーク分野」は準重点分野の位置づけとなっているものです。
今回の調査目的は、テレワーク人口倍増アクションプラン(テレワーク導入促進に向けた政府施策)における想定課題を、テレワーク実施状況調査により確認し、その解決策を抽出することでした。
富士通総研は、調査にあたり、テレワーク利用者(企業側/従業員側)の期待度や満足度などの実感指標から課題を抽出し、解決策の検討を行うことが最良であると考え、実感指標の状況を広く定量的に捉えるべく、アンケート調査方式を採用することとしました。さらに、課題の深掘りに向けて実感指標を様々な角度から分析する必要があると考え、実感に関する調査項目だけでなく、企業の基本情報(規模・業種・成果主義の状況等)、業務改革の取り組み状況、情報化推進度(IT化・ITインフラの状況)も調査項目に含めることとしました。そして、今回、分析ポイントを明確化し、効率的な分析を可能とするために、調査前に課題の仮説を考え、課題(仮説)抽出のための分析シナリオを作成して実施しています。
なお、調査対象は、企業(テレワーク導入済/未導入)と、導入企業の従業員とし、調査企業のテレワーク導入有無に関わらず、かつ企業規模・業種の偏りを少なくするため大小5,000社を対象としました。回収は、企業分786社(回収率15%)、従業員分137名(導入企業25社の従業員回答の計)の回答を得ることができました。
以下に、本調査結果から得られた知見と導き出した解決策(案)について、紹介致します。
1.テレワークに対する導入効果実感度差(テレワーク導入企業と導入企業の従業員)
(1)調査結果
・導入企業では、業務効率化やコスト削減、従業員のワークライフバランス 充実という効果に対する実感度が高いものでしたが、有能な人材の確保や危機管理、CSR(*)の観点ではあまり効果を実感できていないという結果で あった。
・業務効率化とワークライフバランス充実という効果に対する実感度を、従業員と企業という単位で比較すると、従業員の実感数値は、企業側の実感数値より高くなっている。
(2)解決策として、以下の2点が重要であると考えられた。
・今後、効果的なテレワーク導入により、有能な人材の確保や危機管理、CSR等の経営面メリットにつながることが認識できるモデルケースを検討し、企業へ普及すること。
・従業員のテレワーク効果の実感を企業にも共有化させる必要があるため、 現状の一般的なセミナーでの情報提供ではなく、企業トップ(経営層)へのテレワーク効果の普及、啓蒙を強化するセミナーを行っていくこと。
2.テレワーク導入に対する阻害要因(テレワーク未導入企業)
(1)調査結果
・テレワークの定量的可視化が難しいことを、阻害要因と感じている企業が半数を超えているという結果であった。
・企業規模で比較を行うと、中小企業は、コスト/ツールに対する情報の不足や労働関連制度の未整備を阻害要因と感じている。
(2)解決策として、以下の2点が重要であると考えられた。
・単なるテレワーク先行事例を企業へ普及、啓蒙させるだけでは不十分であり、テレワークの経営面のメリットを可視化する取り組みを実施すること。
・特に中小企業に対して、サポート・相談体制の強化(相談センターの認知度向上や、相談結果の効果検証)に取り組み、テレワーク導入を後押しする施策を打ち出していくこと。
3.テレワーク導入企業の状況
(1)調査結果
・導入企業では、成果主義の展開や、IT面の整備、定型業務のマニュアル化や個々の業務改善活動が未導入企業に比べて進んでいるとともに、ITのセキュリティ面も積極的に取り組んでいるという結果であった。
(2)解決策として、以下の点が重要であると考えられた。
・テレワーク成功型企業の特徴を踏まえ、未導入企業は、人事面・IT面・業 務面について、従来のやり方を大胆に見直し、テレワーク効果を最大限に享受可能な状態を整える取り組み(例:成果主義の導入/非効率な業務の見直し/セキュリティ整備)を拡充していくこと。
これらの解決策(案)を受けて、次に実施したのが、関連4省庁に課題解決策に向けた方策のインタビューを行い、課題を再整理することでした。その結果、関係省庁に対して、経営者自身がテレワークへ高い意識を持つための意識改革の促進、成功企業を類型化し成功企業の業務・IT面での特徴や経営面でのメリット可視化、導入コスト低減に向けた共同インフラやセキュリティ等の共通基盤の整備という提言を行っております。
現在、各省庁では、本調査結果と提言を踏まえて、テレワーク普及拡大に向けたガイドブックの作成・導入支援の施策に取り組まれています。
富士通総研は、今回、本「テレワーク分野」調査において、お客様の狙いを整理し、調査シナリオを策定した上で調査シートの設計・調査分析・課題抽出・解決策検討のコンサルティングを行った訳ですが、引き続き、関係省庁に対してテレワーク施策定着に向けた支援活動を積極的に行って参ります。
注釈
*CSR : Corporate Social Responsibility
関連サービス
少子高齢化対策や地域活性化など行政に対する住民の期待が高まる中、行政経営の健全化、効率化、透明化が求められています。民間手法導入や行政サービスの民営化など新たな発想・手法が求められています。
