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富士通総研

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景気回復の展望と富士通総研の役割

2008年3月17日(月曜日)

世界経済の収縮傾向が日ごとに強まっている。サブプライムローン問題に端を発した金融市場における信用収縮が、アメリカを中心に世界経済に波及しつつある。アメリカでは、カーライルグループが深刻な危機に陥り、証券界の名門企業ベアー・スターンズ証券が破綻してJPモルガンに買収された。

アメリカ経済は、どうやら今年の第1四半期から景気後退局面に入ったことが濃厚になってきた。サブプライム問題が引き起こした世界不況は、金融市場のみならず、実体経済の収縮を引き起こし、それがアメリカから世界各地に波及しつつある。アメリカの政府当局は、依然として公的資金を金融機関の救済に投入することは考えていないとしているが、景気後退と信用収縮が続くならば、近い将来、かつての日本のように政府が金融機関の救済に直接乗り出さなくてはならない時がくる可能性が少なくない。

日本経済は、サブプライム問題の影響はこれまでのところアメリカやヨーロッパに比べ少ないが、日本のこれまでの景気回復を支えてきた外需が世界の景気後退の中で収縮を始めており、日本経済もこのままの状況で推移すれば、景気後退に陥る恐れも否定できない。

日本経済についてとりわけ懸念されるのは、政治不況ならびに政策不況ともいえる現象である。いわゆる「ねじれ国会」で予算関連法案が成立せず、日銀総裁の人事が決着できないなど、政治が経済の足を引っ張っている。また、建築基準法の改定が過去半年にわたって住宅着工量を激減させ、貸金業法の改定がノンバンク部門を収縮させるなど、政策が経済活動を著しく収縮させており、日本がこうした独自のマイナス要因で停滞してしまっていることが、世界の投資家の日本離れを促進する一因ともなっている。

今年に入ってにわかに顕著になった信用の収縮、景気の後退、物価上昇などの悪循環が、これからどれほど深まるのか、続くのか、回復はありうるのか、また回復するとすればいつごろどのような形で回復が始まるのか、といった問題は、人々や企業あるいは政府など関係機関の共通かつ最大の関心事であり、富士通総研のようなシンクタンクはそうした問題について知的な手がかりを提供する役割を負っている。

信用収縮の問題については、ここしばらく市場の底値が見えないことから、ある種の恐怖感が市場を支配しており、それが信用収縮の連鎖を生むという悪循環を助長している。言い換えれば、振り子がかつての楽観から悲観に揺れ、極端な悲観の方向へ振れている状況といえる。そうした振り子には、やがて振り戻す力が働く。すなわち、底値を見つけたと判断した投資家が買いに入り、それがバンドワゴン現象を引き起こして、市場が反転するというメカニズムが働く。それがいつどこで起きるのか、シンクタンクは戦略的な研究を進めて手がかりを提示すべきである。

世界の景気後退については、アメリカ発の景気後退が、やがて中国、インド、ロシアなど新興国にも及ぶかどうかに注目が集まっている。新興国も輸出や投資を通じてアメリカ経済と深く関わっているため、アメリカの不況の影響から免れることはできない。しかし、逞しい新興国の発展のダイナミズムにはそれぞれ固有の要素があり、また、世界経済のダイナミズムの中心が、アメリカやヨーロッパからこれらの新興国に着実に移りつつあることは否定できず、新しい世界経済の循環の中で、やがて新しい回復、あるいは発展のダイナミズムが新興国の中から現れてくる可能性は大きい。それがどこでどのような形で顕在化するのか、その手がかりを提供することもシンクタンクの役割である。

最後に、日本経済の課題に触れたい。日本経済は、小泉政権時代の目覚しい改革の動きが、その後急速に頓挫したと世界の観察者から見られている。そうした現象の背後には、政治的な問題があるが、成熟化し、人口の長期的減少が見込まれる新しい歴史的段階を迎えた日本にとって今最も求められていることは、新しい時代に我々が取り組むべき基本的な戦略課題は何かを明らかにし、政治指導者のみならず、国民全体が新たな目標を認識するための手がかりを提示することが富士通総研のようなシンクタンクには求められていると思う。

日本経済は、1986年に世界全体のGDPの14%を占めたが、2006年には9%に収縮している。今から20年後には人口も収縮するので、おそらくその比重は5%程度になるだろう。そうした「小国化」の現実を踏まえ、日本が豊かで暮らしやすく国際社会で信頼と信用を勝ち得ていくためにすべきことは何か、かつて戦後の焼け野原の中から世界第二の工業国を作り上げた歴史的成果に勝るとも劣らない重要な課題が我々の目の前にあるはずである。その課題を分析し、明確かつ具体的な形で提示することが富士通総研に課せられた重要な使命であると思う。