日本の最近の政治経済状況
2007年12月18日(火曜日)
前回この欄で民主党の小沢一郎代表が代表を辞めるという意思を表明したことを紹介した。福田総理大臣と小沢代表との党首会談で大連立構想が提起され、それを小沢代表が民主党の幹部会にかけたところ、賛同を得られなかったために、小沢代表が民主党の代表を辞めると言明したということである。
その後、民主党の幹部会が小沢代表の慰留に努めたところ、小沢代表は辞意を撤回した。その結果、「ねじれ国会」の状況は依然として今でも続いており、国会の審議は停滞もしくは空転して、主な法律はほとんど通らない状況が続いている。
政府与党の最大の狙いは、11月1日に失効したインド洋における友好国艦船に対する燃料供給の特措法に代わって、自衛隊の通常の国際貢献活動として燃料供給を可能にする新法を制定することにあるように見える。このほど政府与党は、国会の大幅な会期延長を行い、参議院での同新法の否決から60日を経た1月中旬に憲法の規定に則って、衆議院で再度新法を可決し、法案の成立を目指す方針を固めたと伝えられている。
このように、日本の政治状況は混迷と停滞に陥っているが、最近特に懸念されるのは、小泉政権下で大きく進められた経済改革への動きが頓挫し、もしくは後退を始めたように見えることである。福田内閣の支持率は、最近急速に落ち込んでいる。その直接の背景には年金問題があるとされる。
社会保険庁の長年に亘るずさんな年金管理の結果、約5千万件にものぼる年金受給資格者の記録が確定できないという問題が、1年以上前から脚光を浴びるところとなり、安倍内閣は、この問題の解決に奮闘したが、国民には評価されなかった。安倍首相は、最後の一人まで面倒をみると公約をしたが、最近になって基礎的な記録が消却されているなどの原因で、2千万件近い人々の確定は困難との見方が政府当局から明らかにされ、それが国民の福田内閣への大きな失望の原因になったとされる。さらに、薬害で20万人以上の人々がC型肝炎を患うことになった問題の訴訟に対する裁判所の決定に関して、患者全員を一律救済する方針を福田総理が示せないのは指導力の不足だとの印象が世間に広まったことも一因かもしれない。
しかし、私見ではそれより重要なことは、道路財源問題や公務員改革について福田政権が明確な改革のシグナルを発信できないこと、また予算編成が各省庁のポークバレル(ばらまき型ポピュリスト政治)を抑えきれないこと、また法人税や消費税の改革ができないことなど経済改革全体が停滞もしくは後退しつつある印象を内外に与え始めていることである。
日本の道路は、揮発油税に臨時の高率な特別税率が長年に亘ってかけられており、それが専ら道路財源として使われてきた。このために無駄な道路が作られるとの批判があり、安倍首相はこの財源を一般財源化する方向で努力をしたが、結局福田政権では、その方針はあいまいとなった。公務員改革も主な動きはなく、公共部門の隠れ蓑とされる独立行政法人の整理についても、渡辺喜美行政改革担当大臣の孤軍奮闘を内閣全体として支える気配が見られない。グローバル競争が激化する中で、法人税率の引き下げが叫ばれながら、今回の税制改正でも見過ごされた。消費税率の引き上げが必要と長年言われながら、今回も取り上げられなかった。この欄でも数回に亘って触れた私が座長として関わった「ふるさと納税制度」は、与党税調が採択するところとなったが、他に大きな改革は行われていない。こうした動きは世界的な激しい構造変化が進む中で、一層の効率化と革新が求められる経済競争の中で、日本が相対的に大きく立ち遅れていく印象を内外に与えることが危惧される。
福田総理は、多くの情報を集め、的確な判断を下す思慮深い政治家というのが定評だが、日本経済が新たな時代に向けて必要な改革を逞しく実現していく経済であるとの実態と印象を、世界に向けてしっかりとアピールしてもらいたいものである。
