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日本政治の直面する現実

2007年9月19日(水曜日)

安倍総理大臣が所信表明演説をした2日後に突然の辞任表明を行い、日本の政治は混乱し、一時機能を停止した。

安倍総理の率いた自民党は、先の参議院選挙で大敗を帰したが、安倍総理は早々と続投を宣言し、内閣を改造し、秋の国会で所信表明演説も行って政権続行に強い意欲を示していたと思われていただけに、関係者の驚きと落胆は大きいものだった。

安倍総理は、総理官邸での辞任表明記者会見後、体調不良を訴えて直ちに慶應大学病院に入院したため、国会が開会中であるにもかかわらず政策討論は停止し、政治空白の期間が続いている。

安倍総理の突然の辞任表明は、日本国内ばかりでなく世界各国の関係者にとっても大きな驚きであったに違いない。とりわけ安倍総理は、所信表明の直前にオーストラリアで開かれたAPECの会議に出席し、この11月に期限が切れるテロ特措法の延長に首相の職を賭けるというまでの強い表現で、この法律に基づいて行われているインド洋でのテロ防止活動に従事する各国艦船への燃料補給の継続に強い意欲を示していただけに、各国の首脳や関係者の間には驚きと大きな失望が広がったと思われる。

首相不在の中で自民党の総裁選が急遽行われることになった。選挙は9月23日に行われるが、多くの派閥の支持を集めつつある元官房長官の福田康夫氏が総裁に選出されることはほぼ間違いないと思われる。

日本を巡る内外の状況は、政治の空白や政策の停滞を許容できる状態にはない。国内では、景気は緩やかな回復基調にあるとはいえ、財政赤字の累積は深刻であり、年金をはじめ社会保障制度は構造的に事実上の破綻状態にある。景気は回復しているとはいっても、人口の少ない地方では経済は停滞し、国内の経済社会ではさまざまな格差が広がっている。

一方世界では、諸国が協力して目に見えないテロの脅威と戦っている中で、軍事協力に憲法上の制約がある日本では、インド洋上での燃料補給という極めて限られた貢献で高く評価されている状況を、テロ特措法を延長して今後も続けられるかどうかに、日本が国際社会で信頼を得続けられるかどうかという国家の命運がかかっている。

参議院選挙で大勝した民主党は、改革路線を唱えた安倍政権に揺さぶりをかけるために、国内では格差問題を捉えて農家に個別所得保障するといった典型的なばらまき政策を唱え、地方への補助金の流れを合理化することで年金財政を維持できるといった根拠の乏しい夢物語をアピールし、インド洋での燃料補給は国連の正式の決議に基づいた行動ではないので停止するといった無責任な方針を打ち出した。

今回の選挙の結果は、民主党の勝利というよりは、安倍政権のスキャンダルによる自滅というのが実態だが、その帰結として衆参両院のねじれ現象が定着したことは、今後3年間はどう転んでも変えようがない事実である。その中で内外の情勢は緊迫しており、政治の空白も混乱も政策の停滞も許される状態ではない。

新しい自民党政権には、目前の政治的困難さを直視しつつも、経済改革や国際協力で本来進めるべき方向を力強く貫いて国民にリーダーシップを示してもらいたいし、民主党は、選挙に勝つためだけの戦術はこの際白紙に戻して、政権を執りうる政党としてのまともな戦略と政権構想を作り直し、まじめに国民に何を実現したいのかを訴えてもらいたいと思う。